■ 暮れゆく夏に

現実逃避をする為に、仲間達と山に行って帰ってくると、頼んでいたDVDやらCDやらが届いていた。

前から欲しかった映画「UNCHAIN」のDVDと、同タイトルのレイチャールズの名曲をカバーしたキューバンサウンドアーティスト「コパ・サルーヴォ」のミニアルバム。あとスーパーバタードッグの永積タカシのソロユニット「ハナレグミ」のアルバム。

映画「UNCHAIN」を見終わって、DVD特典のボーナストラックまであまさず目を通して、しばらく呆けてしまった。4人の拳を用いた格闘家達の、青春と呼ぶには少しトウがたった、泥臭い泥臭い実話の物語。

一勝も出来ず引退し、なんでも屋になって殺し以外はなんでもし、そして発狂したボクサー、アンチェイン梶。彼に弟のように可愛がられていたシュートボクサー、西林誠一郎、在日朝鮮人二世として生まれ、梶とは数奇な縁を辿ったボクサー、永石磨、そして友情で結ばれ、自身を投影するかのように最後まで闘ったキックボクサー、ガルーダ・テツ。

4人は拳で結ばれ、一番最初に拳をあきらめ、やがて狂いにおちてしまった梶に振り回されたり巻き込まれたりしながら、今を見つめ過去を思い返す。当時を振り返る回想。強制入院から戻ってきた梶との邂逅――。


ただただ淡々と映像は繋がり、ナレーションが被さる。その向こうにかかる、バンド時代の下ッ手くそな梶の歌声。ごまかしの利かないリング上の真実。勝てなかった試合。ぼろぼろにされた姿。その果てのその向こう側。

UNCHAINでは「心の鎖を解き放て!」と歌われている。誰もが日常の中で心を鎖につないでいることは、人間が人間である以上当たり前のこと。4人の言葉から梶の言葉から、その当たり前のことの苦しさが伝わる。

梶は心の鎖を解き放ったのだろうか。そして辿り着いた先が狂いだったのだろうか。それは本人にしかわからない……否、本人にもわからないことなのだろう。


ただ全ての映像を見終わった後、プレイヤーのディスクを入れ替えコパ・サルーヴォによってキューバンリズムに姿をかえた同じ内容のメッセージとメロディに身を委ねていたら、黄色いペンキを被って突っ込んでいった梶の気持ちが少しだけ、そうほんの少しだけわかったような気がして。

トラックごとの無音領域に窓の外から侵入してくる蝉の鳴き声を聞きながら、僕は唯々夏を感じた――。


DVD
『UNCHAIN』
cover

CDアルバム/コパ・サルーヴォ
『fanfare for the eternal caravan』
cover

(C) G-LABO Gengi-DOJO.