じーらぼ!言戯道場 (G-LABO Gengi-DOJO) 管理人:みやもと春九堂(しゅんきゅうどう)

【 2003年10月26日-20:02 のつぶやき】

飛翔 〜空モ飛ベルハズ〜


とある酔っぱらいどもの一コマ。というか酔っぱらってなくても彼らのテンションは高い。体温に換算するなら平熱39.6度っくらいだ。

そんな彼らの中のとある人物は、疲労度や酔いがピークを迎えたりして「大丈夫かー?」などと訊かれると、しばしばこんな口癖を言い放つ。

「大丈夫大丈夫!その気になりゃあ、まだまだ空だって飛べるって!」

と。いつもなら、そこで「ばーか何いってんだか」となるのだが、その日は違った。

「お前、いつもそんなこというけど、大体どうやって飛ぶんだよ」と、つっこまれたのだ。だが、彼は動じない怯まない省みない。落ち着き払って構えると堂々と宣言した。





「こんな感じ」




確かにちょっと飛べそうである。


だが、質問者は怯まなかった。大笑いしながら反駁したのだ。

「ばっか、おめーそんなんじゃ飛べないよ?そもそも羽ばたこうってのが間違い。時代はね、もうそんなところにないの。もっとこースムーズに飛ばないと。お前のは羽の形がなってないよ」

時代ってなんのだよとか、そういう疑問やツッコミを全て置き去りにしつつ、そう云うと質問者は構えた。




「これがオーソドックスだよ」




なにが。


だが、これもまた確かに飛べそうではある。しかし彼もまた大笑いしながら反論を重ねた。

「わかってない。お前は空を飛ぶってことをまるで理解してないよ。なんだよそのやる気のないポーズは。それじゃお前アラレちゃんか小川直也の飛行機ポーズだよ。あとあれだタイタニックかよ!ったくよーなんつーかお前のは全体的に気合いが足りてない。飛んだ気になってるだけなんだよ」

「なんだよ〜。じゃあお前の云う気合いの入った飛び方ってどんなんだよ。見せてみろよー」




「こう」


うわ!速そう!

「だろ?!この腰の角度と肩のラインが重要ね。顎の上げ具合も肝心だし、なによりも手首だよ



「悔しいけどよくわかるよ。なにその意味ありげに微妙に曲がった手首に秘密が!?」

当たり前だよ。おめーまだわかってねーな?この手首の角度で高度調節すんだよ。なにしろマッハ出るからな。地表障害物とか当たっちゃうからな」

マッハでんの?!音の壁超えるのかよ。すげーなー!」

「ああ、それだけじゃねーぜ。高度調節は地上障害物を避けるだけじゃねーんだよ。なにしろマッハだから上にだって気をつけねーとな。下手したらあっとゆー間に大気圏外だぜ?

宇宙?!

「応よ。さすがのこの構えも無重力仕様じゃないからな。宇宙は宇宙でまた構えを変えないと、呼吸もできねーからな」

構えかえるだけで息出来るのかよ!

等、延々とこの会話と「構え合戦」は続いたのである。

まだ本格的な酔っぱらいの出る年末までは時間があるが、読者諸兄諸姉も、酔い覚ましをしつつ外を歩く際、時折繁華街の空を見上げると、彼らが飛行する姿が見えるかも知れない。

なぜなら彼らはかなり真剣に、その後も「如何にして空を飛ぶか」について語っていたわけであり、その一方などは「やばい。本当に飛べそうな気がしてきた!」等といいながら、マッハの構えで繁華街を疾走しはじめたりしたからである。

だが決してあざ笑う事なかれ、である。人間にはまだまだ隠された無限の能力があるという。彼らが空を飛ぶ日も決して遠くないのかも知れないのだから――。



バカでごめんなさい。
(一番問題なのは二人とももう酔いは醒めていたことです)



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