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■ 寝ぼけ野郎の憂鬱。
誤嚥性肺炎という疾病がある。
さて、人間の口腔から先の器官というのは、気道と食道に別れている。食道はそのまま消化器に、気道は呼吸器に繋がるルートだ。
当然ながら、咀嚼した食料は、嚥下すると食道に入り、胃に到達する。呼気した空気は気管を通じて肺に至る。食道に空気が入ってもさほど問題にはならないが(空えづきやゲップで排出される)、食料などが気道の方に入ってしまうと、ちょっとというか、かなり大変なことになる。
よく、咽せかえった人が、「気管にはいった」と目に涙をためて訴えることがあるが、その状態が、それなのである。大変なのである。
ちなみに咽せかえるのは、気管に異物が入った為、身体が本能的に、呼吸を妨げるであろう、それを排除しようとする作用だったりする。つまり、意識的に止めようとしても、少々難しいのだ。
そして、その咳が続いて、気管が荒れたり、さらに肺が炎症を起こしたりすると、件の誤嚥性肺炎になってしまうのだ。ちなみにこれは、摂食機能の衰えてしまった、お年寄りに多い疾病である。
さて。ここに一人の馬鹿がいる。
云うまでもなく、僕のことだ。
先日、僕は久しぶりの熟睡の、その温みがかった泥濘から抜け出すように、目覚ましのスイッチを切った。
それから、意識朦朧としながら時間を確認し、意識朦朧としながら起きあがり、意識朦朧としながら尿意を感じて、意識朦朧としながらトイレに向かった。
トイレで小用を済ませると、台所に向かう。すると母上がいたので、意識朦朧としたまま挨拶をすると、母上は「ナニ寝ぼけてるんだか、もうお昼よ?」とお応えになった。そう目覚ましに叩き起こされたものの、僕が起きたのは昼過ぎのことだったのである。
まぁ寝たのが午前何時とかだから――とかなんとかいいながら、鼻をヒクつかせる。食卓から、なじみ深いいい匂いがしているのだ。見れば、そこにはマクドナルドの袋が。
無論のこと飛びついて袋を開ける僕。そしてむさぼる様に喰いつかんとする僕。その前に深呼吸しようとする僕。しかし身体はその命令に反して、テリヤキハンバーガーに喰いつく。同時に深呼吸。同時に咀嚼。アンド嚥下。
当たり前のように咽せる僕。
食卓に飛び散る、かつてテリヤキハンバーガーであったナニか。
「なにやってんのあんた」と冷静なツッコミを入れる母。
涙も鼻水も出まくりで咽せかえり続ける僕。
気管から出てこない一部の肉片かなんか。
パニックに陥る僕。
心配するよりも呆れて、しかも飽きて放置する母。
一人で地獄を見続ける僕。
吸水すれば治まるだろうとペットボトルのダイエットコークに手を伸ばして煽る僕。
炭酸に刺激されて、さらに悪化する僕。
大噴出するダイエットペプシツイスト(最後の一本)。
地獄絵図のような食卓の上。
地獄の3丁目の曲がり角のポストあたりに到達している僕(白目)。
BGMは母上が見ている『徹子の部屋』のオープニングテーマ。
まるでクエンティン・タランティーノの描きそうな、クレイジーに穏やかな午後――。 (多分、僕がかぶりついたあたりからスローモーション)
というわけで、昨晩のラジオをお聞きになった方は御存知かもしれませんが、未だに咳が続いています。気管に入ったモノが出てきた気配はありません。
とはいうものの、ピークだったのは、その日一日と翌日一日。その翌日には咳は納まって来たものの、胸と背中が、激しい痛みに襲われっぱなしで、さらに地獄を見ておりました。あのまま納まらなければ、危うく病院のご厄介になっていたかもしれません。
そして、厄介になった病院では先生にきっといわれるのでしょう。「そんなにお腹空いてたの?」とか、「慌てて食べると太るんだよねぇー」とか。そしてきっと僕は何も言い返せず、ひとりせきをするだけ、なのでしょう。ガッデム。
まぁそういう事態には陥らなかったので、ヨシとしているわけですが、現状、今度は喉が荒れたせいで、咳が続いております。いい加減にしてくれい、ゲフゴフガフ。
教訓:ものを食べる時に深呼吸をしてはいけない。
多分、ウチの甥っ子(2歳)でも知っている 真実に、28歳にして辿り着きました。 (いや…わかってたけど…バカだな…)
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この記事の直前の記事です。
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