【 2005年02月28日-05:39 のつぶやき 】
■ 小さな咳ひとつ。優しかった手の記憶。
最近ダーツとプロレスの事しか書いていない気がします。
いや「気がする」ではなくて、本当にそんなのばっかりですな。ちょっとびっくり。そこまでダーツにハマっているのか僕は!ハマってます!!(ちからいっぱいの笑顔で)
えーと、そういうわけでして今日はちょっとダーツだのプロレスだのから離れたところのお話を。
春一番も吹き荒れて、雪が舞ったり春本番のような日差しを感じたりと、なかなかに変化に富んだこの春先のシーズン。一歩表に出れば花粉症で鼻と目がイカれてしまうのは毎年の事ですが、マスクをつけて街を歩く人達の中には、花粉症よりもっとヒドイ状態の人が多くいるようです。そう、季節の変わり目に大流行する例のアレ、インフルエンザです。
かつては流感(流行性感冒の略)と呼ばれたインフルエンザですが、今年も大流行。既に僕の周りだけでも十人以上が感染し、ヒドイ目にあっています。
インフルエンザは主に接触感染・飛沫感染・空気感染という経路で感染する、とんでもないウイルス野郎です。簡単に解説すると、ウイルスのついた手で目を擦ったり鼻をほじったりしたら感染、感染者が放った咳やくしゃみでの飛沫を吸い込んでの感染、そしてくしゃみや咳で空気中に広く拡がった粒子状飛沫を吸い込んで感染というわけです。
これらの感染を防ぐ為には、手洗いとうがいの徹底、そして流行時に外に出たり人混みに入るような時はマスクで呼吸器を覆うことです。感染している人はマスクで鼻と口を覆って、飛沫を出さないようにするということも同時に大切になるわけですね。
そのインフルエンザも予防接種で感染しないようにしたり、感染したとしても発症から36ないし48時間以内に専門の治療薬を投与すれば、そんなに重症にはならずに済むといいます。
ちなみに普通の総合感冒薬(いわゆる風邪薬)では治りにくいので要注意です。諸症状は少しは楽になるかもしれませんが、インフルエンザと風邪は根本的に違うので、しっかりと対策してください。
具合悪いなーと思ったら、迷わず熱を測って下さい。そして熱がぐあっと一気に38度を超えたりしたら、迷わず救急診療を受けて下さい。インフルエンザの場合、自分だけの問題ではありません。
「こんな熱気のせい気のせい」とかの勘違いした丈夫さをアピールする場合ではありません。周囲の人間が迷惑しますので、本当にさっさと病院に行って、出歩く時は周囲に感染者を出さないようにマスクをつけるようにしましょう。
さて、いつもはいち早くインフルエンザでぶっ倒れているのがセオリーなはずの僕が、こんなに目くじらを立てているのには実は理由がありまして。簡単に言えば身内がインフルエンザに感染して苦しんだからなんです。
先日、上の姉に次男が誕生した事は記事にもしましたが、退院して落ち着くまでの間、長男である3歳の甥っ子を我が家で預かっていたわけです。ついた当日はジイジとバアバと遊んでいたのですが、翌日から途端にぐったり。
小児科に連れて行ったところ普通の風邪薬を処方されたのですが、翌日の夕方過ぎには熱が急上昇。大至急再度連れて行ったところインフルエンザだとわかりました。
流行シーズンだというのにインフルエンザかもしれないから検査してくれと強く言わなかったジイジとバアバにも問題はあるのですが「症状が出たら救急に連れて行って下さい」という医者も医者です。
診察料の二重取りじゃねーかとか、怠慢じゃねーかとも正直思いますが、症状が出て確定してからでないと、可能性の段階で出してしまっていては、大流行シーズンには治療薬や検査キットも不足するという事もあるわけで、仕方ないと言えば仕方ないのだということもわかってはいます。
ですが、わかってはいても小さい命を預かっている身としてはなんとも云えない、いてもたってもいられないような気持ちになってしまうわけです。自分の子どもだったりしたら医者に怒鳴り込みかねませんな。
3歳の甥っ子は、見るだにぐったりしており、食欲もない状態でした。まだ幼い発音で「くどぅちいようくどぅちいよう(苦しいよう)」と訴え、時折耐えかねたように切なく泣き声をあげては、小さく咳き込む姿は、あまりにも辛いものでした。胸が締め付けられる思いとは、まさにこのことかと思うほどです。
思い起こせば身体の弱いガキんちょ(いまでも弱いですが)だった僕も、このくらいの時期には、本当によくよく熱を出したものでした。二十数年前の記憶ですから、相当薄くなってはいるのですが、それでも幼い身体を蝕まれる苦しさは、非常によく覚えています。
熱を出して寝込むと、決まってみる夢がありました。狭い部屋で手足をばたつかせて暴れる自分。それと共に壁や地面が崩れる映像――。
なんでそんなイメージの夢を見たのかはわかりませんが、その夢は本当に恐怖で、その夢を見ることによって「いまぼくは、すごくぐあいがわるいんだ」ということを認識したものです。
今でこそウイルスやらなんやらというものによって病気になるということはわかっていますから、文章表現的にも「病魔と戦う」なんていう言葉を理解しえますし、治るということがわかっているわけですが、子どもにとっては病気というモノは理解しがたいモノです。
ただ身体が思うように動かず、見るモノはゆがみ、息が苦しくなり、全身が痛む。好きなモノを見たいとも食べたいとも思わず、食べ物を口にすれば吐いてしまう。
しかも誰かや何かのせいにできるわけでもなく、一方的にひたすら苦痛を受け入れるしかないという極めて理不尽な状況です。その恐怖感や絶望感は大人になってしまった身からは想像もつかないものがあるのでしょう。
だからこそ、親や周りの大人達が優しく「えらいね」と誉める、「元気になったら**しようね」と励ます。苦痛や苦労を耐えしのいで何かを達成し、その報酬や褒賞として自分が喜ぶ何かが与えられたりするという、人間の目標行動の原体験は、ひょっとしたらこのあたりにあるのかもしれません。
話がちょっと逸れてしまいましたが、とにかく甥っ子が辛そうで大変だったわけです。数日前、回復してきたところで自宅へと帰ったのですが、今度はおふくろがぶっ倒れる始末。僕は倒れるわけにはいかない状況にいるので、自室に自主的に隔離という状況なわけなんですけどね。
さて、甥っ子や同い年くらいの子どもの云う「くどぅちい(苦しい)」は大人の云う広義な意味で全身状況を訴えるモノではなく、ストレートに呼吸の事を指しています。
「だるい」だの「節々が痛い」だのの表現を知らない以上、一番辛いところをして「苦しい」と症状をそのまま悲嘆と助けを求める言葉にかえて口にしているわけですが、呼吸が楽になってくれば、他の症状もよくなってくるというのが実際であったりもします。語彙が経験・知識が少ないだけに、逆に一番悪いところを認識しやすいのかも知れません。
そんなわけで、子どもが風邪を引いて熱を出し、咳などで苦しんでいる時に使われるのが、お馴染みのコレなわけです。
![ヴィックスヴェポラップ50g[医薬品]・ヴイックス](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/piyopiyo/img64/img10581293531.jpeg)
コレ。
その名は「ヴィックスヴェポラップ」。僕と同世代の人は、子どもの頃からこの医薬品のお世話になった人がものすごく多いと思います。ヴィックスドロップというのど飴もあり、こちらは「エヘン虫」のCMでお馴染みですね。
このヴェポラップは簡単に言えば塗布湿布剤。これを胸に塗ることで胸部筋肉への湿布作用で痛みと呼吸が楽になり、塗った胸からハッカ系の臭いや作用が鼻のや喉の粘膜を刺激がすることで、呼吸も楽になるというモノ。
軽く調べてみたところ、正確なデータは出てこなかったのですが、昭和30年代には既にテレビCMを放送していたとのこと。随分歴史があるものなんですねえ。
軟膏なので、ぬとぬとしたオイル?ワックス?的なヌットリベトベトとした感触は、それがイヤな人は溜まらなくイヤなものなのでしょうが、僕は幼少時に随分お世話になったこともあり、コレには思い入れがあるのです。
TVCMもそんな感じの映像だったのですが、子ども時代、夜中じゅう咳き込んで苦しさ絶頂にいる時に、おふくろさんなりおやじさんなりがベッドにやってきては、コレを胸に塗ってくれるわけです。すると不思議なことに、そうやって塗ってもらうだけで随分と楽になれたんですよね。
もちろん実際に効用もでていたのだと思いますが、そこまでの即効性はないでしょう。ですから、いわゆるプラシーボ効果なのでしょうが、それでもヴィックスヴェポラップは僕にとっては風邪の苦しさを取り除いてくれる「魔法の塗り薬」だったんです。
風邪を引いたときに、おとうさんとおかあさんが塗ってくれる魔法の塗り薬ヴィックスヴェポラップ。これを優しく塗ってもらえば治るんだ――。
そんなイメージさえもあったわけですが、親が優しく塗ってくれるたのは本当に小さかった子どものうちだけで、その頃の記憶は最早うすぼんやりとしてしまっています。逆に鮮烈に覚えているのは、わりと物心ついて来た小学校低学年ぐらいの頃の事です。
もとより気管支が弱く、風邪を引いて熱が出れば、咳が出て止まらなくなり、嗚咽するまで咳がでて呼吸困難になるような状態だった僕は、やっぱりヴェポラップのお世話になっていました。
もちろんそんな歳にもなれば自分で塗りたかったのですが、ヴェポラップは子どもが扱うには割と危険だったので(目を擦ったりしたら地獄どころの騒ぎではない)、普段はどこぞか目の届かないところにしまわれていました。つまり親の管理下にあったわけです。
ぐったりとした僕は母に頼んでヴェポラップを持ってきてもらうわけですが「自分で塗るから」という僕の手をはねのけて、母上は僕のパジャマをはだけてヴェポラップを塗ってくれました。
愛情、そうなのかもしれません。子どもに触らせるのはまだ危険だから、そうなのかもしれません。ですが、「はいはい、そんじゃ塗るわよー」と割と乱雑にベタベタっと胸に塗ったくった母上は、その直後に「さっさと治して学校いきなさいよー」と、指に残ったヴェポラップを、意識朦朧として抵抗出来ない僕の「鼻の下と両頬」になすりつけたりしたのです。
これはこう、なんとも凄まじい拷問でした。確かに鼻は通るのですが、通り過ぎて鼻水はダラダラ出てくるわ、頬からの刺激で涙はダラダラ出てくるわ、もうそりゃあ凄い騒ぎなわけです。なんというか鼻水&涙の顔面洪水祭りです。英語でいえばウエッティフェイスフェスティバル。略してWFFですよ。
しかもそんな状態になると何故か口も半開きになってしまい「あー…ああーー…」と声を漏らし、ともすればヨダレもこぼれてしまったりと、最早完全にパニック状態。
ですが迂闊に指で拭ったりしてヴェポラップの範囲が拡がったてしまったら被害も拡大しますから、どうするわけにもいかず、ひたすらダラダラと涙と鼻水を流しながらティッシュで少しずつ拭い取るのが精一杯なんですよね。
ぼーっとしていた意識も、このパニックに対応することで一気にシャッキリとして、気がつけば咳も鼻づまりも随分良くなっていたような気がするのですが、荒療治にも程があるというか、絶対に単なるイタズラ心で母上に遊ばれたとしか思えません。
こうして「魔法の塗り薬」は「悪魔の劇薬」に変わり、「子ども時代の優しかった母の想い出」は「顔面大洪水祭り略してWFFのトラウマ」へと変わりました。
それがきっかけなのかどうかは定かではありませんが、やがて僕はヴェポラップを卒業してしまい、末っ子だった僕が卒業したことで、自然と我が家の救急箱(薬箱ですね)からヴェポラップも姿を消してしまいました。
ですが、今回甥っ子がインフルエンザで苦しんでいる中、親父殿か母上かがヴェポラップを買ってきたらしく、ケホケホと小さく咳をする甥っ子の頭を撫でてやると、あの懐かしい樟脳とメンソールの臭いが少し僕の嗅覚に伝わってきて、こんなガキの頃の記憶を、ふと思い出したわけです。
TVCMで子どもの胸に塗っていたイメージが強いからか、別に小児用というわけでもないのに、子ども時代の終わりと共に卒業してしまった「ヴィックスヴェポラップ」ですが、その効果は大人になった今も変わらないはず。
うつされない・感染しないが当たり前の基本ではありますが、もしこのシーズンに僕もぶっ倒れて咳と鼻づまりに悩まされるようになったならば、久しぶりにヴェポラップを塗ってみようかと思っています。
鼻の下と頬に。
(WFFのトラウマを今こそ克服)
いや「気がする」ではなくて、本当にそんなのばっかりですな。ちょっとびっくり。そこまでダーツにハマっているのか僕は!ハマってます!!(ちからいっぱいの笑顔で)
えーと、そういうわけでして今日はちょっとダーツだのプロレスだのから離れたところのお話を。
春一番も吹き荒れて、雪が舞ったり春本番のような日差しを感じたりと、なかなかに変化に富んだこの春先のシーズン。一歩表に出れば花粉症で鼻と目がイカれてしまうのは毎年の事ですが、マスクをつけて街を歩く人達の中には、花粉症よりもっとヒドイ状態の人が多くいるようです。そう、季節の変わり目に大流行する例のアレ、インフルエンザです。
かつては流感(流行性感冒の略)と呼ばれたインフルエンザですが、今年も大流行。既に僕の周りだけでも十人以上が感染し、ヒドイ目にあっています。
インフルエンザは主に接触感染・飛沫感染・空気感染という経路で感染する、とんでもないウイルス野郎です。簡単に解説すると、ウイルスのついた手で目を擦ったり鼻をほじったりしたら感染、感染者が放った咳やくしゃみでの飛沫を吸い込んでの感染、そしてくしゃみや咳で空気中に広く拡がった粒子状飛沫を吸い込んで感染というわけです。
これらの感染を防ぐ為には、手洗いとうがいの徹底、そして流行時に外に出たり人混みに入るような時はマスクで呼吸器を覆うことです。感染している人はマスクで鼻と口を覆って、飛沫を出さないようにするということも同時に大切になるわけですね。
そのインフルエンザも予防接種で感染しないようにしたり、感染したとしても発症から36ないし48時間以内に専門の治療薬を投与すれば、そんなに重症にはならずに済むといいます。
ちなみに普通の総合感冒薬(いわゆる風邪薬)では治りにくいので要注意です。諸症状は少しは楽になるかもしれませんが、インフルエンザと風邪は根本的に違うので、しっかりと対策してください。
具合悪いなーと思ったら、迷わず熱を測って下さい。そして熱がぐあっと一気に38度を超えたりしたら、迷わず救急診療を受けて下さい。インフルエンザの場合、自分だけの問題ではありません。
「こんな熱気のせい気のせい」とかの勘違いした丈夫さをアピールする場合ではありません。周囲の人間が迷惑しますので、本当にさっさと病院に行って、出歩く時は周囲に感染者を出さないようにマスクをつけるようにしましょう。
さて、いつもはいち早くインフルエンザでぶっ倒れているのがセオリーなはずの僕が、こんなに目くじらを立てているのには実は理由がありまして。簡単に言えば身内がインフルエンザに感染して苦しんだからなんです。
先日、上の姉に次男が誕生した事は記事にもしましたが、退院して落ち着くまでの間、長男である3歳の甥っ子を我が家で預かっていたわけです。ついた当日はジイジとバアバと遊んでいたのですが、翌日から途端にぐったり。
小児科に連れて行ったところ普通の風邪薬を処方されたのですが、翌日の夕方過ぎには熱が急上昇。大至急再度連れて行ったところインフルエンザだとわかりました。
流行シーズンだというのにインフルエンザかもしれないから検査してくれと強く言わなかったジイジとバアバにも問題はあるのですが「症状が出たら救急に連れて行って下さい」という医者も医者です。
診察料の二重取りじゃねーかとか、怠慢じゃねーかとも正直思いますが、症状が出て確定してからでないと、可能性の段階で出してしまっていては、大流行シーズンには治療薬や検査キットも不足するという事もあるわけで、仕方ないと言えば仕方ないのだということもわかってはいます。
ですが、わかってはいても小さい命を預かっている身としてはなんとも云えない、いてもたってもいられないような気持ちになってしまうわけです。自分の子どもだったりしたら医者に怒鳴り込みかねませんな。
3歳の甥っ子は、見るだにぐったりしており、食欲もない状態でした。まだ幼い発音で「くどぅちいようくどぅちいよう(苦しいよう)」と訴え、時折耐えかねたように切なく泣き声をあげては、小さく咳き込む姿は、あまりにも辛いものでした。胸が締め付けられる思いとは、まさにこのことかと思うほどです。
思い起こせば身体の弱いガキんちょ(いまでも弱いですが)だった僕も、このくらいの時期には、本当によくよく熱を出したものでした。二十数年前の記憶ですから、相当薄くなってはいるのですが、それでも幼い身体を蝕まれる苦しさは、非常によく覚えています。
熱を出して寝込むと、決まってみる夢がありました。狭い部屋で手足をばたつかせて暴れる自分。それと共に壁や地面が崩れる映像――。
なんでそんなイメージの夢を見たのかはわかりませんが、その夢は本当に恐怖で、その夢を見ることによって「いまぼくは、すごくぐあいがわるいんだ」ということを認識したものです。
今でこそウイルスやらなんやらというものによって病気になるということはわかっていますから、文章表現的にも「病魔と戦う」なんていう言葉を理解しえますし、治るということがわかっているわけですが、子どもにとっては病気というモノは理解しがたいモノです。
ただ身体が思うように動かず、見るモノはゆがみ、息が苦しくなり、全身が痛む。好きなモノを見たいとも食べたいとも思わず、食べ物を口にすれば吐いてしまう。
しかも誰かや何かのせいにできるわけでもなく、一方的にひたすら苦痛を受け入れるしかないという極めて理不尽な状況です。その恐怖感や絶望感は大人になってしまった身からは想像もつかないものがあるのでしょう。
だからこそ、親や周りの大人達が優しく「えらいね」と誉める、「元気になったら**しようね」と励ます。苦痛や苦労を耐えしのいで何かを達成し、その報酬や褒賞として自分が喜ぶ何かが与えられたりするという、人間の目標行動の原体験は、ひょっとしたらこのあたりにあるのかもしれません。
話がちょっと逸れてしまいましたが、とにかく甥っ子が辛そうで大変だったわけです。数日前、回復してきたところで自宅へと帰ったのですが、今度はおふくろがぶっ倒れる始末。僕は倒れるわけにはいかない状況にいるので、自室に自主的に隔離という状況なわけなんですけどね。
さて、甥っ子や同い年くらいの子どもの云う「くどぅちい(苦しい)」は大人の云う広義な意味で全身状況を訴えるモノではなく、ストレートに呼吸の事を指しています。
「だるい」だの「節々が痛い」だのの表現を知らない以上、一番辛いところをして「苦しい」と症状をそのまま悲嘆と助けを求める言葉にかえて口にしているわけですが、呼吸が楽になってくれば、他の症状もよくなってくるというのが実際であったりもします。語彙が経験・知識が少ないだけに、逆に一番悪いところを認識しやすいのかも知れません。
そんなわけで、子どもが風邪を引いて熱を出し、咳などで苦しんでいる時に使われるのが、お馴染みのコレなわけです。
![ヴィックスヴェポラップ50g[医薬品]・ヴイックス](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/piyopiyo/img64/img10581293531.jpeg)
コレ。
その名は「ヴィックスヴェポラップ」。僕と同世代の人は、子どもの頃からこの医薬品のお世話になった人がものすごく多いと思います。ヴィックスドロップというのど飴もあり、こちらは「エヘン虫」のCMでお馴染みですね。
このヴェポラップは簡単に言えば塗布湿布剤。これを胸に塗ることで胸部筋肉への湿布作用で痛みと呼吸が楽になり、塗った胸からハッカ系の臭いや作用が鼻のや喉の粘膜を刺激がすることで、呼吸も楽になるというモノ。
軽く調べてみたところ、正確なデータは出てこなかったのですが、昭和30年代には既にテレビCMを放送していたとのこと。随分歴史があるものなんですねえ。
軟膏なので、ぬとぬとしたオイル?ワックス?的なヌットリベトベトとした感触は、それがイヤな人は溜まらなくイヤなものなのでしょうが、僕は幼少時に随分お世話になったこともあり、コレには思い入れがあるのです。
TVCMもそんな感じの映像だったのですが、子ども時代、夜中じゅう咳き込んで苦しさ絶頂にいる時に、おふくろさんなりおやじさんなりがベッドにやってきては、コレを胸に塗ってくれるわけです。すると不思議なことに、そうやって塗ってもらうだけで随分と楽になれたんですよね。
もちろん実際に効用もでていたのだと思いますが、そこまでの即効性はないでしょう。ですから、いわゆるプラシーボ効果なのでしょうが、それでもヴィックスヴェポラップは僕にとっては風邪の苦しさを取り除いてくれる「魔法の塗り薬」だったんです。
風邪を引いたときに、おとうさんとおかあさんが塗ってくれる魔法の塗り薬ヴィックスヴェポラップ。これを優しく塗ってもらえば治るんだ――。
そんなイメージさえもあったわけですが、親が優しく塗ってくれるたのは本当に小さかった子どものうちだけで、その頃の記憶は最早うすぼんやりとしてしまっています。逆に鮮烈に覚えているのは、わりと物心ついて来た小学校低学年ぐらいの頃の事です。
もとより気管支が弱く、風邪を引いて熱が出れば、咳が出て止まらなくなり、嗚咽するまで咳がでて呼吸困難になるような状態だった僕は、やっぱりヴェポラップのお世話になっていました。
もちろんそんな歳にもなれば自分で塗りたかったのですが、ヴェポラップは子どもが扱うには割と危険だったので(目を擦ったりしたら地獄どころの騒ぎではない)、普段はどこぞか目の届かないところにしまわれていました。つまり親の管理下にあったわけです。
ぐったりとした僕は母に頼んでヴェポラップを持ってきてもらうわけですが「自分で塗るから」という僕の手をはねのけて、母上は僕のパジャマをはだけてヴェポラップを塗ってくれました。
愛情、そうなのかもしれません。子どもに触らせるのはまだ危険だから、そうなのかもしれません。ですが、「はいはい、そんじゃ塗るわよー」と割と乱雑にベタベタっと胸に塗ったくった母上は、その直後に「さっさと治して学校いきなさいよー」と、指に残ったヴェポラップを、意識朦朧として抵抗出来ない僕の「鼻の下と両頬」になすりつけたりしたのです。
これはこう、なんとも凄まじい拷問でした。確かに鼻は通るのですが、通り過ぎて鼻水はダラダラ出てくるわ、頬からの刺激で涙はダラダラ出てくるわ、もうそりゃあ凄い騒ぎなわけです。なんというか鼻水&涙の顔面洪水祭りです。英語でいえばウエッティフェイスフェスティバル。略してWFFですよ。
しかもそんな状態になると何故か口も半開きになってしまい「あー…ああーー…」と声を漏らし、ともすればヨダレもこぼれてしまったりと、最早完全にパニック状態。
ですが迂闊に指で拭ったりしてヴェポラップの範囲が拡がったてしまったら被害も拡大しますから、どうするわけにもいかず、ひたすらダラダラと涙と鼻水を流しながらティッシュで少しずつ拭い取るのが精一杯なんですよね。
ぼーっとしていた意識も、このパニックに対応することで一気にシャッキリとして、気がつけば咳も鼻づまりも随分良くなっていたような気がするのですが、荒療治にも程があるというか、絶対に単なるイタズラ心で母上に遊ばれたとしか思えません。
こうして「魔法の塗り薬」は「悪魔の劇薬」に変わり、「子ども時代の優しかった母の想い出」は「顔面大洪水祭り略してWFFのトラウマ」へと変わりました。
それがきっかけなのかどうかは定かではありませんが、やがて僕はヴェポラップを卒業してしまい、末っ子だった僕が卒業したことで、自然と我が家の救急箱(薬箱ですね)からヴェポラップも姿を消してしまいました。
ですが、今回甥っ子がインフルエンザで苦しんでいる中、親父殿か母上かがヴェポラップを買ってきたらしく、ケホケホと小さく咳をする甥っ子の頭を撫でてやると、あの懐かしい樟脳とメンソールの臭いが少し僕の嗅覚に伝わってきて、こんなガキの頃の記憶を、ふと思い出したわけです。
TVCMで子どもの胸に塗っていたイメージが強いからか、別に小児用というわけでもないのに、子ども時代の終わりと共に卒業してしまった「ヴィックスヴェポラップ」ですが、その効果は大人になった今も変わらないはず。
うつされない・感染しないが当たり前の基本ではありますが、もしこのシーズンに僕もぶっ倒れて咳と鼻づまりに悩まされるようになったならば、久しぶりにヴェポラップを塗ってみようかと思っています。
(WFFのトラウマを今こそ克服)