じーらぼ!言戯道場 (G-LABO Gengi-DOJO) 管理人:みやもと春九堂(しゅんきゅうどう)

【 2005年05月03日-10:29 のつぶやき】

頭から離れない。


ユビキタス 【ubiquitous】

同時に,どこにでもあること。
〔コンピューターを意識することなく現実生活のいたるところで利用できるような環境という意味でユビキタス-コンピューティングなどが注目されている〕


ユビキタスコンピューティング 【ubiquitous computing】

いつでもどこでも,利用者が意識せずとも,情報通信技術を活用できる環境のこと。情報通信機器が現実生活の至る所に埋め込まれ,複雑な操作がなくともそれらが有機的に活用できる環境をいう。「買いたい商品を持って店を出ると,自動的に代金が引き落とされる」など。
〔1988 年,ゼロックス・パロアルト研究所のマーク=ワイザー(Mark Weiser)が提唱した概念〕


テレビメディアなどの音声や雑誌や新聞、またはWebなどで見る文字による「耳慣れない言葉/知らない言葉」と、身近なところから入ってくる文字や声による言葉では随分と印象が変わるモノです。

というよりも、前者による言葉は、意味がわからないタームが入ってきても流してしまえるのですが、後者は意味がわからないタームが入ってくると自動的に想像力を駆使して、自分なりに言葉の意味を解釈しようと努力し、さらにそうすることによって、そのタームを挟んだ前後の文章の意味を構築して受け取ろうとする――そんな違いです。

ひょっとしたらそれは、洗練されたアナウンサーやナレーターによるものではない故の微妙なイントネーションやアクセントの違いによるものなのかも知れませんし、フォントに依存しているわけではない手書きの妙たる文字への印象かもしれません。

また、聞き慣れた友人・知人の声や文字によって入ってくる言葉と、誌面やテレビ・ラジオ音声によるものでは、会話という双方向性のある場面と、視聴という一方的受信という場面の差もあるわけですので、どれが理由なのかは定かではありません。ですが、妙に気になってしまうんですよね。


で、先日のこと。編集さんと打ち合わせをしていた時に出てきた言葉が上記の「ユビキタス」でした。この言葉はコンピューター業界の新語らしいのですが、ラテン語の形容詞が基になっているだけあって、ちょっと特殊な語感があります。

CPU
ハードディスク
ネットワーク
ユビキタス
インターネット

コンピューター業界関係の話をしていて、ぽろっと出てくると「ん?」となるような違和感があります。そもそも「ス」と抜ける発音で終わるのにも違和感があったりするんです。

というのもコンピューター業界用語は基本的に英語がメインですので、「ス」で終わる言葉というのは非常に少ない。英語表記ならば一般的に複数形の「s」があるわけですが、そもそも複数形表記するものが少ない。

固有名詞としては、「x」さらには「th」で終わるモノが多く、他を頑張って探してみても「ce」「se」で終わる単語が多いわけです。で、それらを並べてみると、Case・Office・x-box・Bluetoothといったところ。

これらを見てみると発音では「ス」の前が「ー」であったり「ァィゥェォ」であったり「ッ」であったりというパターンが多く、「ユビキタス」という発音の並びにはやはり違和感があります。


逆に、この「ユビキタス」の語源となっているラテン語をよく使うのは心理学やら医学やら哲学やらの方向になるわけなのですが、そちらの方面でよく見かける言葉の中においてみると、こんな感じになります。

エロス
パトス
ユビキタス
タナトス
グノーシス

ね?いやまぁこれはギリシャ語やラテン語を語源に持つ、そっち方面の言葉で「ス」で終わってるのを集めたからということもあるのですが、英単語の方での「ス」に繋がる文字・発音の並びの原則は全く適用されず(言語形態がそうなのだから当たり前ですが)、それによって「ユビキタス」という単語が極普通に馴染んでいます。いやまぁそちらの言葉なのだから当たり前なんですけどね。


とにかく「ユビキタス」という言葉は、こんな風にして「コンピューター用語なのに、コンピューター業界の話題の中で出てくると妙に違和感を感じる言葉」として僕に認識されていたわけなのですが、前述した通り受信一方通行のメディアから読み取っている時は意味がわからずともわからないまま流していたのに、編集さんとの会話で出てきた瞬間から、もう気になって気になって仕方ないわけです。

さりとて正しい意味合いをその場で調べるわけにも行かず、頭の中はちょっとしたパニックです。


ゆびきたす?何語?前後の流れからしてコンピューター用語っぽいな。羅列の中で出てきたから微妙にわからないぞ。いやまてよ、この人独特の言語センスで使っているのかもしれない。ゆびきたす…ゆびきたす…古語か?古語なのか?『いとゆびきたす』、とかそんな感じなのか?

いやなんかそれはさすがに違うっぽい。あ、そういえばユビキタスって仮名文字表記でどっかで見たことあるような気がするな。うんIT系のジャンルだったと思うぞ。いや待てよ。ニュースかなんかで聞いた時の云い方とはちょっとイントネーションが違ったような気がするな。

となると僕が知らないだけで、別の意味なのかもしれない。もしくはダブルミーニングでシャレなのかも!うわどうしよう!本人エスプリが効いて、なおかつウイットに富んだジョークのつもりだったとしたら!やっべえ!超スルーしちゃったよ!

あれか、シャレとかだとしたら漢字変換で日本語の音としての意味でいったのかもしれないな。さっき最先端とかいってたし。先端…先端…指?!指か!
『指来たー!』とかか!!先端に来たのか!あれか、つまりタッチパネルとか、ボタン操作でピッポッパとかSuicaみたいにタッチアンドゴーとか、そんな指に来るような最先端なハードウエア環境かなんかの、そんな感じのものなのか?

いや、『指来た!』とかいって2ちゃんねらーじゃないんだからそんな表現はねーだろ。そもそもスはどこいったんだスは。指来たス…体育会系か…?いやーだとしたら指来たッスだよなあ。そもそもナニが指に来るんだよ。

しかも『来た』って過去形になってるし…あーでも『頭に来た』ってのは『あったま来た!』とかいうよな…『先輩!もう自分我慢できないッスよ!あいつらきたねえことばっかしやがって…
自分もう指来たス!!』…違う、絶対違うわ。

やっべーよ。マジわかんないよ。え?ユビキタスってスゴイの?最先端で、その上スゴイの?うーわもうマジ勘弁。ホントわかんないって。相づち打つのも億劫なんですけど…って、なに?!もうなんなの?!指来たス?湯美来ス?
あ、これ?!ジャノメの湯名人みたいなもん??エステとか健康系!?『コンピューターで適温+清潔なお湯をいつでも満たして、貴方の肌に美を来します』みたいな?!泡のお風呂はバブルスター?!

まぁもうどうでもいいや!今日のところはそれ方面でいいや!なんとなく話通じてるし!帰ったらググル先生にお伺いを立ててみよう!!うんうん、湯美来すで、いとゆびきたすになって、俺もう指来たッスね!はいはい、それで?!」



とまぁこんな感じ。微妙に途中で正解に近いところに着地しそうになっているのがポイントなのですが、いくらなんでも「俺もう指来たッス!」はありません。なんだそれ。なにが指に来たんだ。そもそも指に来てから何が起こるんだ。魔貫光殺砲でも撃つ気か。それのどのあたりがIT系でコンピューター業界系なんだ。




「指来たス(ユビキタス)!!」
※ 上記は間違ったユビキタスのイメージです ※



勿論帰宅してから大至急ググル先生にお伺いを立てた結果、正しい意味を把握はしたのですが、今度は一度イメージづいてしまって、なかなかとれません。いわゆる刷り込みというやつなのでしょう。






「指来たス(ユビキタス)!!」
※ 上記は間違ったユビキタスのイメージです ※





まぁ2度も繰り返した事でそろそろおわかりの方もいらっしゃると思うのですが、せっかくですので、皆さんにも少し僕と同じ目にあってもらおうかな、と思ってまして。ええ。






「指来たス(ユビキタス)!!」
※ 上記は間違ったユビキタスのイメージです ※





そろそろ冒頭に書いた「ユビキタス」の正しい意味は、忘れたり薄れてきたりしたんじゃないでしょうか。






「指来たス(ユビキタス)!!」
※ 上記は間違ったユビキタスのイメージです ※






というわけで、3回繰り返してみましたが、いかがでしょうか。しっかり焼き付きましたか?刷り込み出来ましたか?勿論間違った方の意味で。ま、どんな形であれ、今後どこかで「ユビキタス」の文字や音を聞いて「指来たス」という変換と画像が出てくるようになった人は、僕と同じ負け組ですので、その言葉が出てくるたびに、ちょっとグッタリしたりしてください。






「指来たス(ユビキタス)!!」
(最後にもう一発)



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