前回までのあらすじ
銭の花は白い、けどその根は血のように赤いんや!というくらい、デブはウザい。でもデブの長髪はもっとウザいんや!(細腕繁盛記のフシで)。その信念を貫き通し、短髪をキープし続ける春九堂。しかし同じヘアスタイルにも飽きが来始めた彼は、短髪にバリエーションを求め、インターネットで検索を開始した。
――キーワードは「短髪 ヘアカタログ」
どういうわけか目の前に繰り広げられたのは目眩くゲイ・ワールド。イッツアレインボーワールド。イヤッフー!ハッハー!(壊)
短髪を求めて調べれば調べるほど、ソッチに染まり往く春九堂。そして「たんぱつ」と入力するだけで、漢字変換ソフトの入力省略変換候補に「短髪野郎祭」という文字が躍る頃、彼は決意する。
――それならソッチ系のお店で切ってもらえばいいんじゃん。
好奇心と自分(のヘアスタイル)を変えたいという意思が導いた、間違った決意。ていうか、そもそも最初は「ソッチ側の方に間違えられるようなヘアスタイルは避けたいなぁ」という考えのハズだったのに。
どうしてどうして僕たちは出会ってしまったのだろう〜♪とリフレインが叫んでしまったりするくらいの、間違いっぷりである。初志貫徹ならぬ初志忘却横転側転急転回だ。そう、これは事故。英語で云うならばハプっ……ハププっ?……ハ、ハプニング?――とにかく、そういうヤツだ。
やはりBGMにカルチャークラブの「カマカメレオン」をかけていたのが間違いだったのだろうか。
――カーマカマカマカマカマがミーリーオーン♪ (本来は Karma karma karma karma karma chameleon である)
ぬぅ。空耳かも知れないが(明らかにそうだ)、100万もカマがあったら、そりゃ事故もおこるというものではないか。諦めるしかない。そうだ、仕方ないんだ。彼は間違っていない。ぼくまちがってないよ。まちがってない。ほんとだよ(思考停止気味)。
とにもかくにも、第2段階として春九堂が選んだ手段は、ソレ専門の店を探し当てるということだった。しかし見つけた店に予約の問い合わせをしたところ、スケジュールがあわず断念。
そして春九堂は第3段階の手段、秘策中の秘策に遂に手をだした。それは数年前に知り合った、おゲイの方――仮に名前をヒロ君としておく――にメールを出すことだった。
「どこか短髪が得意な、おゲイな理容店しらない?もしくは、そういうお友達いない?」
と。
ためらいがちに送信ボタンを押した春九堂。だが、まだメールアドレスが機能しているのかも、そもそも生死はどうなのかとかすらもわからない状況なのだ。
しかし春九堂は、メールの不達を告げるメーラーデーモンによって「そんなアドレスねーヨ」と云われることを、どこかで期待していたのだった……。
だが数時間の後、春九堂が受信したメールは、冒頭の挨拶が「おひさしぶりこー(はぁと)」で始まる、超絶ハイテンションなメールであった。文面を読み進めていく内に、春九堂のの中には「メーラーデーモンの方がよかったんじゃないか」という想いが湧く。それも結構な勢いで。
しかし下り坂を転がり始めた「運命の輪」は、結構いい感じで加速しはじめていた。しかも進行方向は、当初の予定からは、かなりあさって気味だ。
既に止まる術を喪失してしまった「運命の輪」は、春九堂を乗せて一体どこへと向かうのであろうか……。 |