じーらぼ!言戯道場 (G-LABO Gengi-DOJO) 管理人:みやもと春九堂(しゅんきゅうどう)

【 2004年02月27日-16:52 のつぶやき】

髪を切る日(by 槇原敬之) -2-


髪を切りました。

前回までのあらすじ

銭の花は白い、けどその根は血のように赤いんや!というくらい、デブはウザい。でもデブの長髪はもっとウザいんや!(細腕繁盛記のフシで)。その信念を貫き通し、短髪をキープし続ける春九堂。しかし同じヘアスタイルにも飽きが来始めた彼は、短髪にバリエーションを求め、インターネットで検索を開始した。

――キーワードは「短髪 ヘアカタログ

どういうわけか目の前に繰り広げられたのは目眩くゲイ・ワールド。イッツアレインボーワールド。イヤッフー!ハッハー!(壊)

短髪を求めて調べれば調べるほど、ソッチに染まり往く春九堂。そして「たんぱつ」と入力するだけで、漢字変換ソフトの入力省略変換候補に「短髪野郎祭」という文字が躍る頃、彼は決意する。

――それならソッチ系のお店で切ってもらえばいいんじゃん。

好奇心と自分(のヘアスタイル)を変えたいという意思が導いた、間違った決意。ていうか、そもそも最初は「ソッチ側の方に間違えられるようなヘアスタイルは避けたいなぁ」という考えのハズだったのに。

どうしてどうして僕たちは出会ってしまったのだろう〜♪とリフレインが叫んでしまったりするくらいの、間違いっぷりである。初志貫徹ならぬ初志忘却横転側転急転回だ。そう、これは事故。英語で云うならばハプっ……ハププっ?……ハ、ハプニング?――とにかく、そういうヤツだ。

やはりBGMにカルチャークラブの「カマカメレオン」をかけていたのが間違いだったのだろうか。

――カーマカマカマカマカマミーリーオーン♪
(本来は Karma karma karma karma karma chameleon である)

ぬぅ。空耳かも知れないが(明らかにそうだ)100万もカマがあったら、そりゃ事故もおこるというものではないか。諦めるしかない。そうだ、仕方ないんだ。彼は間違っていない。ぼくまちがってないよ。まちがってない。ほんとだよ(思考停止気味)


とにもかくにも、第2段階として春九堂が選んだ手段は、ソレ専門の店を探し当てるということだった。しかし見つけた店に予約の問い合わせをしたところ、スケジュールがあわず断念。

そして春九堂は第3段階の手段、秘策中の秘策に遂に手をだした。それは数年前に知り合った、おゲイの方――仮に名前をヒロ君としておく――にメールを出すことだった。

「どこか短髪が得意な、おゲイな理容店しらない?もしくは、そういうお友達いない?」

と。

ためらいがちに送信ボタンを押した春九堂。だが、まだメールアドレスが機能しているのかも、そもそも生死はどうなのかとかすらもわからない状況なのだ。

しかし春九堂は、メールの不達を告げるメーラーデーモンによって「そんなアドレスねーヨ」と云われることを、どこかで期待していたのだった……。

だが数時間の後、春九堂が受信したメールは、冒頭の挨拶が「おひさしぶりこー(はぁと)」で始まる、超絶ハイテンションなメールであった。文面を読み進めていく内に、春九堂のの中には「メーラーデーモンの方がよかったんじゃないか」という想いが湧く。それも結構な勢いで。

しかし下り坂を転がり始めた「運命の輪」は、結構いい感じで加速しはじめていた。しかも進行方向は、当初の予定からは、かなりあさって気味だ。

既に止まる術を喪失してしまった「運命の輪」は、春九堂を乗せて一体どこへと向かうのであろうか……。



……彼女?、通称「ヒロ君」とは僕が彼……彼女?を呼ぶときだけのあだ名なんです。ウイッグをつけ、化粧をして煌びやかに接客するときの「彼女」の名前が「ヒロコ」というわけですね。

でも僕と「彼」は「客とスタッフ」という関係ではなく、ごく普通の友人関係、というかお互いに「プロレス」という趣味で意気投合し、店がはねた後に飲み歩くという「男同士」の関係だったんですよ。だから僕は彼の望むままに「ヒロ君」と呼んでいたんです。で、彼は僕のことを「春(しゅん)ちゃん」と呼ぶんですな(笑)。(※コレは勿論サイト上で公開する為の便宜的処置であって、実際はお互いの名をモジっている呼び方ですぞ)

ヒロ君は僕のことをいたく気に入ってくれていまして、それがその、まぁアレだ、うん、ほら男同士の友情だけではなく、その向こうの「彼のエリア」の琴線にふれてしまったこともあったらしく、何度かお誘いを受けたりしたこともあったが、僕がノンケであるという理由から、涙ながらに自分で、その心を閉ざしたりということもあったりしたとかしないとか。げふごふ。結構仲が好かったりしたんですよ。


さて、それ故なのか、久しぶりに連絡したにも関わらず、ヒロ君からのメールは至って好意的でして、お店を紹介してくれる上に、「あたしも立ち会うから一緒に行きましょっ!」という、実に彼らしい無意味にサービス満点なヤル気をみなぎらせたものでした。

で、彼……彼女?の紹介してくれる店というのは、一般的なお店ではなく、気に入った客の予約しか受け付けない個人経営のヘアサロンとのこと。腕の方はもうお墨付きで、何人も常連客がいて、彼……彼女?も、その一人だというんです。

そういうわけで週末の約束を取り交わした彼らは、都内某所駅前で待ち合わせをすることになったんです。しかしここで問題が発生。実は彼……彼女?と最後に会ってから、春九堂は随分と太ってしまって……いや巨大化してしまっていましてね。印象も随分変わったであろうから、お互いにすぐにわかるかどうかは微妙だったんですよね。

でもヒロ君……ヒロコちゃん?は、すぐにわかったようでした。改札から手を振りながら近づいてくる彼を見て、僕も「あんまりかわってないなー」と、久しぶりの再会にちょっと嬉しくなったりしましたね。

ヒロ君は、黒のスラックスに、サテンかシルクのような白の開襟シャツ。赤のカーディガンを羽織り、黒のショールをかけていまして、当たり前のことではありますが、お店に出ているときとは全く違う男らしい格好です。一見、長身痩躯ですが、中は趣味のウエイトトレーニングとボクササイズで鍛え上げられているんですよ、これが。まぁ普通に「いい男」でして……まぁ、女の子が放っておかないと思える外見です。

で、対して僕はといえば、風邪気味だったもんですから着ぶくれ状態。自分で作った太々君パーカーに下はカーキのペインターパンツ。カーキ色のコットン地のN3Bという出で立ち。フードについているファーがテディベアの毛みたいな色なので、余計にクマっぽいんですよね。おまけに鼻づまりでハァハァしちゃってるもんだから、余計にアレな感じでして……。まぁ、公安関係の方とか、猟友会の方が放っておかないと思える外見です。


しかしまぁそんな外見の彼が嬉しそうに笑顔で近づいてきて第一声が、やっぱり「春ちゃーん!おひさしぶりこー!」ですからね。ホントかわってねぇ。まぁいいんですが(笑)。ですが、その後が、もうエンジンフル回転

「んもーすっかり丸くなっちゃって!ますますボク好みじゃないのー!どうしちゃったのどうしちゃったのよもー!このモコモコ(フードのファーね)かわいいー!くまたん?ね、くまたんイメージしてるの?もーかーわーいーいー!(フードをかぶせたり脱がせたり)あらやだ髪の毛相変わらずぴょんぴょんねー(髪の毛つままれたり)。あらもう、おなか相変わらずかたいわねー!んもーさわっていい?ね、さわっていい?(既にさわってる)でもボクも負けてないわよ?みる?みとく?脱いでいい?ね、脱いでいい?


誰か彼を止めて。



風邪で朦朧としているものですから、抵抗も出来ずとりあえず相づちを打ちながら、されるがままだったわけですが、一通り旧交を一方的にあたためられた後、近況なんかを話しつつも、なんとか話題を切り替えて、お店の話になったんです。

なんでも、その理髪店「バーバー バーバラ(仮名です)は、要予約な本格的な専門店。基本的にはスタイリストとしての仕事の方が多いらしく、紹介を受けて自分のお店でやることもある、という程度。場所なんかは基本的に一切非公開。でも腕は確かだし、勿論ご本人もおゲイな方。そして、なによりもSG系がお好みとのこと(※SG系=スーパーガッチリの略。筋肉質で体の大きなガッチリ体系に脂肪が蓄積するとSGになる。デブとは違う。デブはムチポチャないしポチャという)

あーそれじゃただのデブの僕じゃ、やってもらえないかもねーなどと云ったのですが、「春ちゃんなら絶対気に入られるわよ!大丈夫!自信あるの!任せて!!」と無闇に自信たっぷりなヒロ君。意識朦朧としている中でも思いましたね。「なんだろう、この嵌り込んでいく感覚って」と。

そしてとりあえずタクシーを拾うと、僕らは早速「バーバー バーバラ(仮名です)」に向かったんです。

都内某所の、やや入り組んだ瀟洒な住宅街の一角に、その店はありました。白い小さなアトリエのような空間。一見するとお洒落な民家なのですが、藤か蔓薔薇だかのからんだ白いパイプアーチを抜けると、しっかりとそこには「カット・ヘアメイク バーバー バーバラ(仮名です)の看板が。

そしてヒロ君がチャイムを押すと、インターフォンからややハイトーンな男性の声が返事をしました。「あー待ってたよー。今あけるねー★」


そして僕は、ようやくココまで来て気づいたのです。ノンケの僕。お店にまで出てるプロフェッショナルなオネエ系おゲイなヒロ君。そして今扉を開けた向こうから現れるであろう、スタイリストでSG系好きなおゲイのバーバラさん(仮名です)


vs



あはは。なーんだ。



もう後戻り出来ないんだね。



<以下次回>


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