前回までのあらすじ
デブはウザい。デブの長髪はもっとウザい。ドブは臭いし、ダブは洗顔料、リブはあばら骨で、アブは虫、コブは長州の目の上にあって、サブは廃刊、ラブは愛、そしてもうギブアップ。というわけで、短髪をキープし続ける春九堂。しかし同じヘアスタイルに飽きた彼は、短髪にバリエーションを求め、インターネットで検索を開始した。
――キーワードは「短髪 ヘアカタログ」
どういうわけか目の前に繰り広げられたのは目眩くゲイ・ワールド。イッツアレインボーワールド。イヤッフー!ハッハー!(壊) 空が落ちてくるよママーン(母さん)!ハマーン(カーン)!ラマーン(愛人)!そんなこんなで、短髪を求めて調べれば調べるほど、ソッチに染まり往く春九堂。そして「たんぱつ」と入力するだけで、漢字変換ソフトの入力省略変換候補に「短髪野郎祭」という文字が躍る頃、彼は決意する。
――それならソッチ系のお店で切ってもらえばいいんじゃん。
好奇心と自分(のヘアスタイル)を変えたいという意思が導いた、間違った決意。ていうか、そもそも最初は「ソッチ側の方に間違えられるようなヘアスタイルは避けたいなぁ」という考えだったハズなのに。Ah、あの時、受話器の向こうの声が いつもとは 違ってた 事に気づいてたなら遠い街 一人で暮らす貴方の中の 寂しさを 少しでも取り除くことだって出来たのにと、貴方に逢いに行かなくちゃというくらいの間違いっぷり。
初志貫徹ならぬ初志忘却横転側転急転回だ。そう、これは事故。英語で云うならばアクシデント。アクシデンタル、いわばアクシ歯科だ。っていうか引用した歌詞は「ドラキュラがねらってる」という番組のエンディングに使われていた曲なんだけれども、誰も知らないだろうね。
ちなみにその時のBGMは、カルチャークラブだったり、クイーンだったり、ペットショップボーイズだったり、プリンスだったり、マイコーだったり、マッキーだったりしたわけですが、もうなにがなにやら。いいじゃんもうどれが理由でも、とか思ったり思わなかったり。で、結局どうしたかといえば、昔の友人(オネエ系のおゲイ、現役でお店出てます)に「短髪の上手い店しらない?」とメールを出した次第。そのメールアドレスがまだ使用されているかどうかすらわからなかったのだが、妙にハイテンション&サービス満点な返事が来てしまった。
ところで、このヒロ君について「兄貴ではありませんか?」と素っ頓狂な質問のメールが何通か来たりした。んなわきゃない。っつーか、兄貴氏のアレはあくまでもキャラクターです。ファンタジーですよファンタジー。ホモゲー程度で奥歯ガタガタ云わせているようなギミック野郎と、ヒロ君を一緒にしてはいけません。ヒロ君はカミングアウトやゲイフォビアという壁を乗り越えたシューターなのだから。というわけで違います。
そういうわけで、久しぶりに再会した友人・通称「ヒロ君」に誘われて、彼オススメの店である「バーバー バーバラ(仮名)」に向かった春九堂。しかし風邪をひいていた彼は意識朦朧であり、待ち合わせの駅前という超初期段階にあっても、ヒロ君に「いいようにされてしまう(※一方的に好き放題されてしまうこと)」ような状態。
「バーバー バーバラ(仮名)」に向かうタクシーの中、「アタシ、これからどうなっちゃうんだろう?どぉなっちゃってんだろう?どどどどぉなっちゃってんだろう?アハハン」と、靖幸ちゃんな不安に陥るも、ベランダ立って胸を張るわけにも行かず、タクシーはまんまと「バーバーバーバラ(仮名)」に着いてしまう。
瀟洒な住宅街の一角にある、白い一軒家。パイプアーチをくぐるとそこにはまごう事なき「バーバー バーバラ(仮名)」の看板。そしてヒロ君の手入れの行き届いた指先で、押されるチャイム。インタフォン越しに応えるのは紫色の声――店主のバーバラさん(仮名)だ。そこで春九堂はハタと気がついた「この状況って、1対2ってこと?――え……これ、ホントに俺の膝?!(ガクガク笑い続ける自分の膝を見ながら)」。
しかし気づいたときにはもう遅いのだ。後戻りなんかもう出来ないのだ。ダイヤル回して手を止めたりも出来ないのだ。あいじゃすたうーまーあああん ふぉーりんらーう゛なのだ。いや、誰がウーマンだ。俺は男だ。アイアムメーン!(複数形?)
というわけで、もはやノンストップ。既に止まる術を喪失してしまった「運命の輪」は、春九堂を乗せて一体どこへと向かうのであろうか……。 |