じーらぼ!言戯道場 (G-LABO Gengi-DOJO) 管理人:みやもと春九堂(しゅんきゅうどう)

【 2004年03月01日-16:25 のつぶやき】

髪を切る日(by 槇原敬之) -3-


髪を切りました。

前回までのあらすじ

デブはウザい。デブの長髪はもっとウザい。ドブは臭いし、ダブは洗顔料、リブはあばら骨で、アブは虫、コブは長州の目の上にあって、サブは廃刊、ラブは愛、そしてもうギブアップ。
というわけで、短髪をキープし続ける春九堂。しかし同じヘアスタイルに飽きた彼は、短髪にバリエーションを求め、インターネットで検索を開始した。

――キーワードは「短髪 ヘアカタログ

どういうわけか目の前に繰り広げられたのは目眩くゲイ・ワールド。イッツアレインボーワールド。イヤッフー!ハッハー!(壊) 空が落ちてくるよママーン(母さん)!ハマーン(カーン)!ラマーン(愛人)!そんなこんなで、短髪を求めて調べれば調べるほど、ソッチに染まり往く春九堂。そして「たんぱつ」と入力するだけで、漢字変換ソフトの入力省略変換候補に「短髪野郎祭」という文字が躍る頃、彼は決意する。

――それならソッチ系のお店で切ってもらえばいいんじゃん。

好奇心と自分
(のヘアスタイル)を変えたいという意思が導いた、間違った決意。ていうか、そもそも最初は「ソッチ側の方に間違えられるようなヘアスタイルは避けたいなぁ」という考えだったハズなのに。Ah、あの時、受話器の向こうの声が いつもとは 違ってた 事に気づいてたなら遠い街 一人で暮らす貴方の中の 寂しさを 少しでも取り除くことだって出来たのにと、貴方に逢いに行かなくちゃというくらいの間違いっぷり

初志貫徹ならぬ初志忘却横転側転急転回だ。そう、これは事故。英語で云うならばアクシデント。アクシデンタル、いわばアクシ歯科だ。っていうか引用した歌詞は「ドラキュラがねらってる」という番組のエンディングに使われていた曲なんだけれども、誰も知らないだろうね。

ちなみにその時のBGMは、カルチャークラブだったり、クイーンだったり、ペットショップボーイズだったり、プリンスだったり、マイコーだったり、マッキーだったりしたわけですが、もうなにがなにやら。いいじゃんもうどれが理由でも、とか思ったり思わなかったり。で、結局どうしたかといえば、昔の友人
(オネエ系のおゲイ、現役でお店出てます)「短髪の上手い店しらない?」とメールを出した次第。そのメールアドレスがまだ使用されているかどうかすらわからなかったのだが、妙にハイテンション&サービス満点な返事が来てしまった。

ところで、このヒロ君について「兄貴ではありませんか?」と素っ頓狂な質問のメールが何通か来たりした。んなわきゃない。っつーか、兄貴氏のアレはあくまでもキャラクターです。ファンタジーですよファンタジー。ホモゲー程度で奥歯ガタガタ云わせているようなギミック野郎と、ヒロ君を一緒にしてはいけません。ヒロ君はカミングアウトやゲイフォビアという壁を乗り越えたシューターなのだから。というわけで違います。

そういうわけで、久しぶりに再会した友人・通称「ヒロ君」に誘われて、彼オススメの店である「バーバー バーバラ(仮名)」に向かった春九堂。しかし風邪をひいていた彼は意識朦朧であり、待ち合わせの駅前という超初期段階にあっても、ヒロ君に「いいようにされてしまう
(※一方的に好き放題されてしまうこと)」ような状態。

「バーバー バーバラ(仮名)」に向かうタクシーの中、「アタシ、これからどうなっちゃうんだろう?どぉなっちゃってんだろう?どどどどぉなっちゃってんだろう?アハハン」と、靖幸ちゃんな不安に陥るも、ベランダ立って胸を張るわけにも行かず、タクシーはまんまと「バーバーバーバラ(仮名)」に着いてしまう。

瀟洒な住宅街の一角にある、白い一軒家。パイプアーチをくぐるとそこにはまごう事なき「バーバー バーバラ(仮名)」の看板。そしてヒロ君の手入れの行き届いた指先で、押されるチャイム。インタフォン越しに応えるのは紫色の声――店主のバーバラさん(仮名)だ。そこで春九堂はハタと気がついた「この状況って、1対2ってこと?――え……これ、ホントに俺の膝?!(ガクガク笑い続ける自分の膝を見ながら)」

しかし気づいたときにはもう遅いのだ。後戻りなんかもう出来ないのだ。ダイヤル回して手を止めたりも出来ないのだ。あいじゃすたうーまーあああん ふぉーりんらーう゛なのだ。いや、誰がウーマンだ。俺は男だ。アイアムメーン!
(複数形?)

というわけで、もはやノンストップ。既に止まる術を喪失してしまった「運命の輪」は、春九堂を乗せて一体どこへと向かうのであろうか……。



「はいどーもーいらっしゃいー」

そう云って、玄関に出てきたのは、「バーバー バーバラ(仮名)」店主のバーバラさん(仮)。

……えーと、待ってください。なんだろうこの違和感。バーバラさん、どうしてそんなに薄着なんですか?っつーか、今2月ですよね?どうしてそんなに黒いんですか?

バーバラさんは、イタリアンカラー(デカ襟ね)な白の開襟シャツのボタンを3つくらいまでオープンにしておりまして、下は黒のストレッチ素材っぽい薄い生地の黒のスラックスという出で立ち。髪の毛は……なんというのか僕は詳しくはしらんのですが、ベリーショートで、部分的に毛先とかの色が違うというヘアスタイル。

なんというか、理容師とか美容師というよりも、タンゴ教室の先生とかそんな雰囲気です。あまり誰かに喩えるのは好きではないのですが、敢えて云うならば、K−1の小比類巻貴之選手みたいな感じですかね。とにかくイイ男です。普通にカッコイイんです。でも、うっすらと残して整えている口ヒゲとアゴヒゲが、「線」の向こう側にいるということを、微妙にアッピールしている感じだったりもするのですが。

何はともあれ、簡単に挨拶を済ませると「寒いから中に入りましょうよー」と後ろからヒロ君に促され、「そうだね、こっちこっちー」と前からバーバラさんに招かれ、あっさりと店内に入ってしまう僕。そして「あ、鍵よろしくね」とバーバラさんにいわれたヒロ君が、玄関ドアをガッチリと閉めます。なんだろう、この連携。

さて、「バーバー バーバラ(仮名)」について詳細を述べることは約束上出来ないのですが、簡単に説明しますと、カットブースは普通の部屋に一つだけで、完全予約制で請け負っているという理容室なんですね。外からの見た目は本当に普通の民家なんですよ。さすがにお洒落な外観をしていますが。

で、バーバラさん曰くの「スタジオ(散髪部屋のことです)」には、玄関からスリッパに履き替えて行くという感じ。聞いてみると、こういう形態の美容室や理容室は結構あるみたいですね。ヘアデザイナーとかの副業持ってる人とかに多いとかなんとか。


というわけで、スタジオに入ってコートを脱いで掛け、そのまま改めて挨拶と自己紹介をするとともに、立ち話となったわけなのですが……以下、会話ダイジェスト。


「今日は無理きいてもらって、すみません。よろしくお願いします」
「いえいえいーえ。そんなかしこまらないでいいよお、ヒロ君とはもう古い(付き合いだ)しねー。それに今日はオフだったから」
「そうよーボクが頼めば、バーバラちゃんは断れないんだから」

「それにしても……」
「はい?」
「ヒロ君……カレいい身体してるよねーーー!
「でしょお!?でしょお?!
「え、えーと……いや、そんなただのデブですよ」

「どのくらい鍛えてる?この身体は柔道だけじゃないよねー……ウエイト(トレーニング)?他にもナニかやってた?」
「あ、はい。一応。柔道は実はまともにはやってないんですよ。あとは自主トレで」
「春ちゃんはー……(少林寺)拳法と、大学の時はなんか色々なのやってたんだっけ?」
「あ、うん(笑)。色々といえば色々だね。流派ないし」
「そっかー。色々やってるとこういう身体になるのかー(笑)」

「あ、でもねバーバラちゃん!春ちゃん、昔はもっと細かったのよ。細かったっていうかこう……一回り小さかった?(笑)」
「うん(笑)。太ったからねー」
「それだけじゃなくって、オニク(筋肉のこと)も増えたでしょ。もーやらしいんだからー
「いやいや、全然やらしくないって!関係ないじゃん」
やーらーしーいーのー(笑)!ねー?」
「そうだねぇ、この身体はちょっとやらしいかもだねぇ(笑)」
「そ、そうなんスか……」

「あーでも、バーバラちゃん。春ちゃんは、こうみえてノンケちゃんだからね?」
「えー?!そうなの?!」
「えーと……そうです」
「えー。結構意外だなあ。ふうん……そうなのかー……違うと思うんだけどなぁ……(笑)」


なんで決めつけられているんだろう。



まぁそんな感じで、太ってやらしい身体になっただの、筋肉がどうだのベンチプレスがどうだのなどと話をしながら、カットの話にようやく辿りついたわけですが……「どんな風にしようか?」と聞かれたところで、「短く……あとはお任せします。似合う感じになれば……」と、まぁ曖昧に云ってしまったんですよね。


ソレが間違いの元でした。ええ。


もう一度云います。間違いでした。


繰り返します。間違いでした。


――それからの数時間は、あんまり記憶が定かではないんです。本当に覚えてないんです。ただ、ノリノリのバーバラさんと、何故かそれ以上にノリノリなヒロ君の間に交わされる会話の合間に、次々と違うヘアスタイルになった自分自身を見たような気がします。

いや「「気がする」ではなく、実際にそうだったんです。基本的には、段々と短くはなっていくのですが、明確な目的地があるわけではなく、少なくとも元のヘアスタイルから最終的な髪型に至るまでの間に、10以上のヘアスタイルを、ブロー&スタイリングされては、好い悪いの評価を、僕がする間もなく、問答無用で洗い流されるという作業の繰り返し。

そして繰り返される間に、どんどん上がっていくバーバラさんとヒロ君のテンション。僕の意見とか基本的に無視というか、聞く・聞かない以前の勢いなんですよ。

「これをこうして……どう?(ヒロ君に)」
「んー、もちょっとあげたほうがいいんじゃないかなー(バーバラさんに)」
「そうねーそおだよねー。それじゃ春さん頭さげてねー(洗髪)」
「は、はい……」

と、こんな感じ。

つまり、OKを出すか出さないかは、ヒロ君の判断であって僕の判断ではないんです。まぁ「似合う・似合わない」の判断は第三者的視線の方がいいわけですし、そもそもが「おゲイな方達にモテモテになれそうな短髪野郎になりたい」というコンセプトでの、今回の散髪ですから、決して間違いじゃあないんです。うん、間違いじゃあないんです。

でもね!あそこまで遊ばれるとは思わなかったんですよ!ちゃんとある程度「こういうヘアスタイルに」っていうのがあればよかったんでしょうけど、お任せにしちゃったもんだから、昼に始めたはずなのに、終わってバーバラから出たら夜ですよ!太陽もう沈んでるっつーの!沈みきってるっつーの!

間に、お茶飲んだり、トイレに行ったりはしたんですけれど(無論、トイレから帰ってきたところで「ごめんねーもう少しきらせてくれる?」とヘアスタイルチェンジ)、5時間ぶっ続けで髪の毛切られたりいじられたり洗われたり整えられたりブローされたり(色を)抜かない?(色を)抜かない?」と誘われたりするとは思ってもみなかったんです。ホントね、間違ってた。間違っておりました。正直スマンかった。

なんつーか頭上や背後で、ハイテンションな2人のイケメン(でも、おゲイ)の会話を交わされながらってのはなかなかにハードなものがありますですよ。そうですね、喩えるならば、おすぎとぴーこがダブルでファッションチェックと映画評論をしながら髪を切っているというような感じでしょうか。しかもエンドレス。ホント辛い。

おまけに風邪で朦朧としているからテンションについていけないし、おされまくりだし。ブリーチだけはなんとかしのぎましたけれども、他はもうまったくなされるがままでした。顔剃りするときに背もたれを倒すじゃないですか。あの時に、そのまま押し倒されたら抗えなかったと思いますよ?そのくらいハイテンションなんですもの!もの!!

最後は何故か座っているだけの僕が一番疲れ切っているという不思議な状態で、お礼を言って解散したんですが、ヒロ君とは今度飲みに行く約束をさせられ、バーバラさんには「今度また伸びたらウチに来てね。カットモデルになってくれたら嬉しいなぁー」と、人差し指と親指で、切り立ての前髪(なんと今回の髪型は前髪があるのだ)をつままれながら云われたりと、なんつーか無意味にモテモテ。どうやら、そういう意味では当初の目的は早々に達成出来たようです。



<まとめ>

まぁなんつーか、「おゲイな方達にモテモテになれそうな短髪野郎になりたーい」なんていうのは、勿論ネタのつもりだったんですけれど、こー……なんといいますか、実際、イイもんですな、こういうのも。うむ( ̄ー ̄)。一応帰ってからデジカメで前後左右バックを撮影して、どこでも同じヘアスタイルにしてもらえるようにはしたんですけど、お誘いもあることですし、また行ってもいいなーと思ったりしています。5時間に渡るカットはさすがに疲れましたけれど(笑)。

唐突な思いつきから始まった今回の髪切り物語(?)ですが、久しぶりに再会したヒロ君をはじめ、バーバラさんも、他にも相談に乗ってくれた、おゲイなお知り合いとか。ホントみんな親切で優しくって、非常に好いなーとか思ってしまいました。

やっぱこー苦労しているというか、カミングアウトするのもしかり、自分の中でのゲイフォビアを克服することしかりね。そういう苦労やら壁を乗り越えた人たちは違いますね。お二人には本当に感謝です。

まぁ全体的に面白かったし、新しいヘアスタイルにもなって、貴重な体験をしたなーとも思うわけですが、実は思わぬ弊害がありまして……。ぶっちゃけ、ヒロ君のオネエ言葉とか、バーバラさんのある意味プリティー&エレガントな仕草がすっかりうつってしまいまして……。

そりゃ5時間も挟まれて囲まれていれば無理もない、とも思うのですが、ごくごく自然にそういうのが出てしまう自分がちょっとアレな感じだったりもして……そうすると、バーバラさんの「違うと思うんだけどなぁ……(笑)」というセリフが頭の中によぎったりして……こう……。まぁ、出ないようには気をつけているんですが、友人とかにも「妙に似合う」とか云われたりとか、「実はもう『線』超えてるんじゃないか」とか云われたりとか、他にも、気がついたらケータイの待ち受けにTOKIOの国分太一君の画像を使っていたりとか……。



ええと……。



まぁそのー……。



なんかもう、イイワケとか面倒なんで
このままイっちゃいまーっす★

(どこにだよ……)



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