■ 早朝のビクトリャー(リャー?)

月木は燃えるゴミと生ゴミ。粗大ゴミの回収は要連絡。燃えないゴミは水曜日。

今朝の話です。ちょいとばかり早起きした僕は散歩がてらゴミ出しに出かけました。というのも先日現実逃避を兼ねて部屋を掃除したので、燃えるゴミが大量発生しておりまして、はい。

まぁそれを捨ててしまわないことには「掃除した」というよりは「部屋のゴミを袋に入れた」だけで、部屋が広くなったりとか居住の快適さが増えるとかそういうメリットがゼロですからね。滅多に起きない時間に起きて、いそいそとジャージに着替えて捨てに行ったと、そういうわけです。


さて、ゴミ捨て場までは歩いて五分ほど。そこまでゴミ袋3つをぶら下げて歩いていき、既に堆く積まれたゴミの山に、丁寧に自分のゴミを積み重ねました。すると、通りの向こう側から一匹の雑種犬(だと思う)がトコトコとやってきたんです。

見ればリードを引きずっているので、散歩の途中で飼い主とはぐれたか、はたまた繋がれているところからリードを外してきたかといった感じだと思うのですが、いずれにしても単体の犬というのは、ちょっと色々な問題があります。

当たりをキョロキョロと見回したり犬の来た方向を眺めてみたりとしたのですが、飼い主の姿は見えず、はてどうしたもんか追いかけられたり噛まれたりしたらやだなあ、でもやるならやるかんね、こっちだって覚悟があるんだかんな、などと微妙に注意をしつつ見ていると、犬はトコトコとゴミの山までやって来て、しきりと生ゴミの臭いを嗅いだりしながら辺りを見回したりしはじめました。


そしてひとしきりキョロキョロフンフンとすると、僕の方を向いて突然思い切り威嚇の吠え声を発したんです。「アヴォンッ!ヴォンッ!」ってな感じで。なんつーかVの発音で威嚇ですよ。ロシア系なんでしょうか(なんでロシアだ)

まぁそんなボケはおいといて、どうもこのお犬さまに、僕は「先客」と思われたらしいのです。

「いや、その、そんなに吠えられましても。えーと、ある意味ではそれは正確なのだけれども、僕の方は生ゴミをあさるつもりはなく、捨てに来ただけでして…」と後ずさってみたりしたのですが、怯んだと思ったのか、吠え声はヴォリュームアップするばかりです。

そりゃ確かに近所の衛生事情としては、荒らされたりしちゃあ困るっちゃ困るんですが、別に僕は漁りたいわけじゃないので、やるならどうぞどうぞ!と云いたいところなのですが、残念なことに言葉は通じません。

そんな風に逡巡している間にも向こうはすっかり興奮して「これボクの!これボクの!クマは去れ!山に帰れ!」といった感じで吠えてるわけです。

いわば完全にライバル視されている、否、後ずさったこともあってか「脅しときゃ逃げ帰るだろ」ぐらいに、くみやすしと思われているっぽいのです。


まぁ向こうの望むとおりにそこで引き下がればいいのですが、そんなことでは人里におりてきて長いとはいえクマの名が廃ります。犬如きには負けられません。生ゴミを漁る権利は要らないけれども、負けるわけにはいかないのです。ヒトとして、クマとして!

というわけで、いざとなったらプロレスの神様カール・ゴッチが、ドレッシングルームで鉄人ルー・テーズに延々と解説したという「犬の殺し方(ニーオンザチェスト)でタコにしたんぞコラーと大人気なく覚悟を決めると(本当に大人気ないな)、身体をやや前屈させて、足を肩幅に開き、胸筋と三角筋に一瞬力を入れた後に脱力させ、広背筋を意識して、全身を引き絞って身構えました。

いわゆる中国拳法でいうところの「猫足立ちの構え」です。瞬発的な移動や動作に優れた構えで、動作的には身体を小さく絞るのですが、その実相手には正面から覆いこまれるような圧迫感を与えます。野生の熊の二足立ちの構えもこんな感じです。

さて構えながらも、未だ吠え続ける犬の眼を油断無く凝っと睨め付けます。すると一瞬、犬が吠え止みました。好機!とばかりに、すかさず僕は行動にうつりました。



猫足立ちから身体を瞬間的に広げて身体を大きく見せつつ
「ごあぁーっ!!」と吠えたんです。




犬は、文字通り尻尾まいて退散しました。




勝利です。完全勝利。素晴らしい勝利です。頭の中にはロッキーのエンディング間際の勝利のテーマが鳴り響きます。そのまま両手を上げて「エイジョリゥヲアェァーーンヌ!!」と叫びだしたいくらいの勝利です。動物としての勝利、朝っぱらからの勝利です。アイアムビクトリャー!!



まぁ勝利と引き替えに人間としてのプライドとかが削れたり、立ち去る前の犬の表情が「うわ、こいつバカだ。おかしいんと違うか。ありえん。こわっ、逃げよ」という感じだったような気がしたのは、僕の被害妄想ということで気にしないことにします。



勝利の後はいつも虚しい…。
(…疲れてるのかな…)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.