■ 地味痛。

地味に痛かった。

さて、ちょっと昔の事ですが掲示板のスレッドを使って、『地味に痛かったこと』を広く募集したことがありました。いわゆるネタ投稿なわけなのですが、面白い作品がいくつも来て、非常に楽しかったです。

その中でも僕的に最も面白かったのは

会社で取引先の電話に応対しているときに、『失礼いたします』と言おうとして『失礼いたす』と言ってしまった。地味に痛かった。

というものだったのですが(うろ覚えでごめんなさい)、先日数年来の友人(♀)から久しぶりに連絡があり、その時に似たようなことがありました。


僕と彼女はしばらく昔話やら近況報告やらに花を咲かせていたのですが、実は僕の方は彼女から久しぶりに電話をかけてきた本題の見当がついていました。

というのも、先日、僕と彼女の共通の友人から、彼女が来月末に結婚するということを聞かされていたんです。で、僕はまだその話を本人から聞いていなかったので、おそらくはその報告だろう、とこういうわけです。

ですが、無駄話と馬鹿話ばかりで、なかなか本題に入りません。「ネタはあがっとんのや!さっさとゲロせえ!」とカツ丼をとったり投げつけたり食べたりしながら問いつめたくなったのですが、まぁそこは一応穏便に「そういや、なんか俺に報告すべき事があるんじゃねーの?」と、少々意地悪っぽくつついてみました。

すると彼女は「いやそのー、なんか恥ずかしくってさあ」と、バツが悪そうにイイワケをしつつも、電話の向こうで少しかしこまるかのようにわざとらしい咳払いなどをしました。

思えば、彼女とは十年には足りないものの、そこそこ長い付き合いで、四つ年下なこともあってか、彼女は僕にとって妹のような娘のような、僕は彼女にとっての兄のような保護者のような、そんなちょっと特殊な関係でした。

ですから、そんな相手からいよいよ大事な話を切り出されるとなると、報告を受ける僕もかしこまらざるを得ません。電話越しにちょっとした緊張が伝わってきて、彼女が咳払いをしてから、数秒にも満たない瞬間で、過去の映像が頭をよぎったり、そのBGMが山口百恵の『秋桜』だったりして、僕も覚悟完了しました。


「ええとね…」
「はいはい」

「今月末にね…」
「はい」


――息を呑む、ほんの少しの空白。それから…


「入籍することになりもうした



いやもう二人して大爆笑ですよ。盛り上がったムードなんか秒殺で消し去られましたね。普段なら「左様でござるか」ぐらいのリアクションはとれるはずなのに、天然の不意打ちですから、それさえも出来ずにただただ大爆笑してしまいました。

皆さんにも是非試して欲しいのですが、緊張して口の中が乾いたり唇が乾いたりして、それを湿らせつつ「ま行」を発音しようとすると、時々唇同士がはりついてしまって「ま」「もあ」という様になってしまうんですよね。

彼女にも同じ事が起こったようでして、タネをあかせば単純にそれだけのことなのですが、腹筋が痙攣して苦しくなるほど笑ってしまいました。

そして笑いながらラーメンズ公演「atom」の父さんとアトムのコントよろしく「なんだよ『もうす』って、江戸か!江戸か!!」と散々ツッコんでいじめて、肝心の「おめでとう」を云ったのは、それからしばらく後になってからでした。

なにはともあれ、そんなめでたい報告だったのですが、色々な意味でメデタク、そして極めて台無しな感じでもありました。

ところで、先日記事に書いた「おなかすいたなぁ…(落涙)」事件は、この出来事の数時間後に起きたものでして。



後輩が嬉し泣きの婚約報告をしてきた後で
「おなかがすいた」と独り言を言いながら
一人涙する自分がいた。地味に痛かった。

(…「地味に」じゃないかも…)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.