■ ミクシィーユー。<中編>

というわけで、前編で書いたエアロビクスの番組を唐突に見てしまって驚いたというだけのmixiのメモ書き日記から、『家元のつぶやき』の記事に発展すると、どうなるかという事を実際にやってみようということで書いてみたのですが、必要以上に長くなったので、<つづく>になってしまいました(笑)。まぁ御笑覧くださいまし。
エアロビクス。

有酸素運動という言葉に縁遠いデブの僕には全くと言っていいほど無関係なこの言葉、この種目だが、実は大学時代のある時に、強制的にエアロビクスをやらされたことがある。

というのも、僕は交通事故に遭遇してしまい体育実技なる必修科目(こんなのが必修って!)の単位を取得しておらず、卒業年度にそんな科目を履修するハメになってしまっていたのだ。

通常ならば体育実技はその半期にやるスポーツの種目を選ぶことが出来る。サッカーであったりゴルフであったりバレーであったりテニスであったりバスケであったりと、まぁ正直「たま」といえば己の両足の間にあるミートボールくらいしか縁がない僕にしてみれば、どれも遠慮したい種目なのだが、それでも選ぶことが出来るのだ。

しかしながら卒業年度の僕には選択の余地などなかった。なぜなら既に他の科目で、時間割がギッチリ埋まってしまっていたからだ。

必然空いている時間割の種目の中から体育実技を選ばなくてはならなくなったのだが、その中に実技実習だかなんだかというモノがあった。科目概要を調べてみると、なにやらニュースポーツだの屋内競技だのを色々やるらしい。

他に空いている時間帯のものもなかったので、まぁ仕方あるまいと、その科目のマークシートを塗りつぶし、学生課に提出した。


そして第一回目の講義。体育館に集められ科目の説明を受ける。妙にハイテンションな中年女性の講師がホワイトボードに書き出した「今期のスケジュール」を見て、僕は愕然とした。


 1.ガイダンス
 2.体力測定
 3.ストレッチの基礎
 4.ストレッチの実技と研究
 5.リズム体操
 6.エアロビクス1
 7.エアロビクス2
 8.エアロビクス3
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エアロビクス。

なぜに体育実技実習でエアロビクスなのだ。説明を聞くとどうやらこの中年の女性講師は現在他大学でリズム体操によるなんちゃらかんちゃらというものを研究しており、それが教育上なんちゃらかんちゃらだと説明している。つまりあんたがやりたいからってことだな、このパンタロン。

理解はしたが納得は出来なかった。だが今更スケジュール的にも学則的にも履修変更などできるわけもなく、僕は不承不承エアロビクスという、別に知らないままでいい未知の領域に足を踏み入れることになったのである。


ナニをエアロビ如きで怖じ気づくかとお思いの方もいらっしゃるだろう。しかし考えてもみて欲しい。当時から100キロ超だった僕である。そんなのがTシャツとジャージで「レッツレッグサイッ!オッケー!ァイェア!ッホーウ!」とか言いながら踊り狂うわけである。しかも酸素を消費しながら。

想像しただけで周辺の気温は上昇し、酸素が薄くなる。その凄まじさは高木ブー先生が出演した体脂肪燃焼補助飲料の「バーム」のCMどころの騒ぎではない。いや比べることすら失礼だ。

そもそも「ダンス」だとか「踊る」だとかそういう言葉など、僕の辞書にはない。あるとすれば、その項目には筆頭に「無理なこと」と記載され、次いで「出来ません」と書かれ、「イヤだ!イヤなんだ!」と続けられ、そこから先にようやく「盆踊り」とか「ワイクー…ムエタイの試合の前に選手が神に祈りを捧げる儀式的な踊り」とか、「舞々(チョムチョム)→あしたのジョーを参照」とか書かれている――そんな程度のものだ。

愕然として、それから呆然として、それから全てをあきらめた僕は、せめてもの「よかった探し」をしてみた。しかし結果は単位は何とかなるかもしれないなということと、レオタード着用とか空恐ろしいことを言われなかったことくらいだった。


そして数回の講義を経た当日。リズム体操なる講義の時に、僕のトラウマ第一弾がはじまった。やる気満々の講師が持ってきたCDは想像していたよりもテンポの遅いもので、まずはそのリズムにあわせて身体を動かすというところから始まった。

「はい、その場行進、テンポよくー、腕の振りを大きく、左右に振って、大きく足を上げて、そこでステップ、ハイ今度はボックス!


ボックス?!

見れば周囲の学生達はいわゆるスクエアのボックスステップを軽々と踏んでいる。なんだ、ボックスステップはいつの時代から国民的運動に採用されたのだ、それともラジオ体操の内容が変わったのか。そんな話は聞いていないぞ!

と、既に軽いパニック状態に陥りながらも僕も見よう見まねでボックスを踏む。この時点で僕の羞恥心メーターは既にイエローゾーンに入っていた。

「最初から飛ばし過ぎだろこのパンタロン!」と心の中で抗議するも、曲は止まらず指示も止まらない。腕を振ったり手を叩かされたり、挙げ句ターンさせられたりと、僕は踏み台昇降運動のリズムのような4拍子の曲にあわせて、糸の切れた操り人形のような動きをしていた。

ようやく苦痛の1時間半が終わり、文字通り憔悴しきった僕。鏡の向こうにはおそらく白髪化した自分の姿が映っているだろうと思いながらシャワールームに入ったが、実際は息を荒げて汗をダラダラながしたデブが世にも情けない表情を浮かべているだけだった。


<つづく>

(C) G-LABO Gengi-DOJO.