じーらぼ!言戯道場 (G-LABO Gengi-DOJO) 管理人:みやもと春九堂(しゅんきゅうどう)

【 2005年01月18日-20:33 のつぶやき】

納得できない日々。


本日の昼の事だ。

『闇のイージス』と『大使閣下の料理人』の最新巻を購入し、うはうはと食事中の僕。その隣の席に座った中年の男がとにかく酷かった。

店員を呼び、注文を済ませると「悪いけど電話帳持ってきてくれる?」というところから中年男の暴走が始まった。

店員が首を傾げながらNTTの電話帳を持ってくると、携帯電話を取り出して電話をかけ始めたのだ。どうやらかけている先は、近隣のシティホテルとかビジネスホテルらしい。

「すみません、今晩部屋空いていますか?あーそうですか」

を繰り返しながら、何件も何件も電話をかけている。かけるのはかまわないが、もう少し静かな声で喋れと思うのだが、とにかくデカイ声で喋り倒す。お前は口の中に拡声器仕込んでんのかと歯科検診したくなるくらいだ。

どうせ仕込むなら青酸系毒物でも仕込んで速効噛み砕けと内心思いながらも、僕は黙々とマンガを読みながら飯を食いつづけた。そうする間にも、この中年男はデカい声で電話をかけ続けている。

デカイだけならまだしも、微妙に甲高い声なのが気に障る。僕は人様の声質にいちゃもんをつけられるほどの美声の持ち主ではないし、自分の声はキライなのだが、それでもこの中年男よりはマシだと思う。

否、普段なら声質など気にならないのだが、食事と読書のささやかな幸せタイムの邪魔をされていることが声すらも非難の対象に変えさせているというのが正解だ。

とにかく、なんと表現すればいいのか悩むが、この中年男は発狂したみのもんたとか出川哲朗みたいな声をしているのだ。ややモッチャリ系のアルミ缶を叩いたような声だ。ファイナルアンサーエーヘヤナインデスカーヤバイヨヤバイヨタモサーンカンカンカーン(アルミ缶)てな具合なのだ。一刻も早く青酸カリ入りの歯を噛み砕いて欲しい。


僕はといえば、あまりにも癇に障って、既に飯などナニを喰っているのかわからなくなってしまっている。本の内容も頭に入らない。どちらも志半ばにして諦めた僕は、この中年男を観察することにした。

どうやら中年男はまだ部屋が見つからないらしい。ザマミロこのデカ声中年め、読書&食事という僕のささやかな幸せタイムを貴様の出川もんた声で邪魔した天罰だ、野宿して凍死しろなどと心の片隅で考えていたのだが、どうやらどこも満室とかそういうわけではなく、条件に合う部屋がないということらしい。

この中年男、外見は紺のスーツにネクタイという姿から普通のサラリーマン風なので、察するところ出張か何かの最中なのだろう。どんな部屋に泊まろうとしてんだかしらないが、とにかく電話を切って欲しい。もしくは舌を噛み切って欲しいところだ。

と、どうやら男の条件に合う宿が見つかったらしい。

「あーそうですか。ありますか!いやー助かりました。それでおいくらですか?あー…そうですかー…5000円。はーそうですか…4500円になりませんかねえ?いや他のホテルさんどこも空いてませんで…ええ、そのーああ私一人です。もちろん一人ですとも。4800円くらいには?ああーそうですかー5000円。5000円ですかー」

日本のビジネスホテル値切る人をはじめて見た。心底驚いた瞬間だった。基本的にビジネスホテルというところはサービスなどを極限まで削って、価格を抑えているところが大半だ。それゆえ普通のホテル以外にも出張などでも使えるように、後はシャワー浴びて寝るだけというシステムのみの部屋を安価で提供できる。それがビジネスホテルだ。

しかし、現実に僕の隣の席ではいい年した中年のおっさんが出川哲朗+みのもんたの声で、タカイヨタカイヨムリデスヨタモサーンワカレチャニナサイオジョウチャーンカンカンカーン(アルミ缶)と、値切り交渉をしているわけである。それも500円とか200円を値切ろうとしている。しかも全く相手にされてない様子で。

一瞬ここはバックパッカー達の集うアジアの片隅かと思うほどのショックだった。もしもし、おっさんここは日本国埼玉県さいたま市ですよ?と声をかけたくなるのを、ぐっとこらえて僕は食事を口に運んだ。運び続けた。そうしないと出てしまいそうだったからだ。


ひたすら食べることに集中していると、ようやく中年男の声が止んだ。どうやら部屋が決まったらしい。ついでに僕の食事も終わった。気分も悪いしショッキング過ぎたので、一刻も早く店を出ようと思い席を立った。

すると、ちょうど店員が中年男のもとに注文品が届いたので、500円200円を値切るおっさんが、どんなモン喰ってんのかと思い通りすがりに眺めると、カキフライセットにモツ煮込みと豆富サラダつけてやがった。

これは総額
1504円(税込)の豪華メニューだ。一方の僕がレジで精算した金額は262円(たぬきうどん)。


埼玉県が全国に誇る格安チェーン「山田うどん」の一角で、世の不条理を叫びたくなった僕だったが、それでも黙ってバイクにまたがると水平線を目指してスロットルを開いた。

最初の信号待ちで、グラブの背で目元をぬぐったのは悔しさからじゃない。冬の寒さが目にしみそんなモン喰ってて値切ってんなよ!!おっさん!!!
(我慢の限界)



その他の記事
ミクシィーユー。<後編>
この記事の直前の記事です。
../2005/200501170645.html
Oh! mammy!
この記事の直後の記事です。
../2005/200501211055.html