■ スピードの向こう側。

彼がやってきたのは、いわゆる一つのエコでした。

というわけで、“サーキットのクマ”こと春九堂です。狼でもなければ虎でもありません。いわば早くもなんともなく、どちらかといえばサーカスの曲芸ベアーのような存在。むしろそれそのものといっても過言ではないでしょう。

えーとですね、前にも何度か記事で書いたと思うのですが、「月刊Mr.Bike」という老舗バイク雑誌さんにエッセイを連載させてもらっておりまして、その雑誌の企画で巨漢ライダー読者ばかりを集めた「DB隊」というものがあるんですよ。で、僕は先々月あたりから、DB隊の名誉会長なる役職に就かせて頂いているんです。

まぁ名誉会長とはいえども、さしたる役割があるわけでもなかろうとたかを括っていたのですが、そんな甘い話はなく、就任一発目の仕事として、日曜日に栃木県は茂木にある、世界レベルのレーシングコース「ツインリンクもてぎ」をバイクで走ることになってしまい、いっちょうやらかしてきました。


ツインリンクもてぎのオーバルコース「インターナショナルスピードウェイ」といえば、インディーカーが時速300キロで疾走したりするようなコースです。普通に考えたら一般人は滅多に走ることなんてありません。

ぶっちゃけますが、僕はバイク雑誌に連載をもっていたりするくせに、スピードがキライで、四輪も二輪もレース自体に興味がないという、とんでもないおポンチ野郎なんですよ。そんなヤツがツインリンクもてぎを走ってイイモノなのか。どんな疑問を心に抱きつつのレースデビューだったわけです。


まぁレースといっても10/1−2に開催された「本田宗一郎杯Hondaエコノパワー燃費競技全国大会」で行われた「マスコミ対抗!第5回 30分エコ耐」で走ってきたわけでして、この競技は決して速度を競う様なものではなかったんですけどね。

で、「マスコミ対抗!30分エコ耐」とは、マスコミ各社による50ccのスーパーカブを使ったミニ耐久レースでして、エコランと同じく正確に計測された同一量の燃料で、30分間にコースを何周走れるかを競うものなんですよ。

全開にして走れば距離は伸びずにガソリンだけ消費してしまう。かといってアクセルを開けては閉めて惰性でゆっくり走るというエコラン走行を繰り返していたら、30分という時間内に走れる距離が短くなってしまう。

つまり、速く走るだけではダメで、燃費を考えて、効率よく、なおかつ多く走ったチームが勝つという、なんともテクニカル&タクティカルなレースなんです。


しかしながらエコランの鉄則として、如何にエンジンの負担を減らして効率よく回すか、というものがあるわけです。その為に、各大学高校専門校などのチームはアルミフレームを使い、カーボンや発泡スチロールで車体カバーを作り…と血の滲む様な「軽量化」の努力をするわけです。

エコ耐の場合はスーパーカブ50ccという統一規格で行われるわけですから、軽量化は出来ません。となると、軽量化できる部分はライダーの選定になってくるわけです。小柄で体重の軽いライダーを使えば、それだけエンジンに対する負担が減りますからね。

ところが、我が月刊Mr.Bikeチームが選定したライダーは、デブ巨漢ばっかりを集めたDB隊の2トップ。名誉会長である僕(125kg)と、最重量を誇る横綱さん(150kg)です。勝負する気ないだろMr.Bike。


他チームからは皆、細身小柄なライダーが出場し、またHONDA PRチームからはプロのレーサーが参戦する中、思い切り場違いなクマが2頭。確かにツインリンクもてぎは山の中ですので、クマがいても間違いはないのですが、コースに出ているのは明らかにおかしい。そしてもう一つ明らかに乗車するバイクより重い上にデカイ。

もう明らかに僕らの回りだけが亜空間化しています。しげの秀一「バリバリ伝説」の世界の中に、なぜか「銀牙―流れ星銀」の赤カブト(ヒグマ)が紛れ込んでいるようなものです。


まーそれでも、圧倒的なまでに不利な状況化とはいえ、エキシビジョンマッチのようなもの。完走できりゃ御の字だろうなんて思っていたのですが、かなり甘かったです。

というのも30分ピッタリまでに帰ってこなければ、その時点で失格。ゴールはその30分以内に任意のタイミングでゲートをくぐればいいのですが、30分以内であってもゴールする前に燃料を使い尽くしてしまったら、その時点で失格と、説明を聞けば聞くほど、エキシビジョンどころかガチンコルールであることがわかったんですねー。いや事前に教えてよ(笑)。

そんなこんなで、必死になって作戦を練ったりしてレースに臨んできたわけなんですが――その結果は来月11月4日頃発売の「Mr.Bike」にてということで、全国書店・コンビニエンスストアなどでお買いあげの上、読んでやって下さい(笑)。

一応ネタがホットな内に、許可範囲での画像公開なんかもしたいと思います。ネタバレにならない程度にね。あとは公式サイトの方に結果とかも出るんじゃないでしょうか。

まーそんなこんなで人生初のレース参加でツインリンクもてぎなんて云うインターナショナルコースを走行してきてしまったわけなんですが、場内実況放送で「ゼッケン275、ミスターバイクDB隊最重量ズ頑張ってます!カブがちっちゃく見えるなあー!!」といじられた時に、スタンドから笑い声が聞こえてきたので



個人的には成績以上に大事な
勝利を得た、と思っています。

(エコ関係なしかよ)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.