■ マルチタスク。

僕は別段せっかちな方ではないと思うのですが、それが可能な場面では一度にいくつかの同時作業をすることで、作業時間を短縮するべきだと思っています。

例えばカップラーメンを作ろうと考える時、ヤカンに水を入れてコンロに火をかけてから、カップラーメンを取り出し、パッケージを開いて、かやくやスープなどを用意し、箸やらなんやらも支度して、お湯が沸くのを待つ。こんな程度の簡単な事ですが、全てを準備してからお湯をコンロにかけて待つよりは、相当に時間の短縮になるはずです。

つまり、仕掛けておけば放っておいても出来上がるモノを先に仕掛けておいて、裏タスクで進めさせておく、というような形でしょうか。効率の良さとか時間の短縮とかの大仰な云い方をするよりも「要領の良さ」を優先したいと、そんな感じなわけです。


これは料理をする時などにも表れるもので、例えば釜揚げうどんを食べたい時には、鍋とやかんに水をはり、両方をコンロに仕掛けてから、うどんの乾麺を準備し、さらに梅干しをペーストにしたり鰹節を用意したり器を用意したりという事をしておいて、麺茹で→茹で上がり→麺のぬめり取り→鍋にやかんからお湯を注いで→茹で済みうどん投入温め→即喰いというような要領の良い工程が出来るわけです。

いや、これじゃ些か簡単過ぎますね(笑)。えーとじゃあこうしましょう。カレーライスを食べるとした場合はこういう工程を辿るわけです。以下ずらっと書きますね。

まず米を研いで炊飯器にかけ、やかんに水を入れてコンロにかけます。同時に鍋に油を敷いて弱火にしかけ、さくさくっと肉・野菜をゴロ切りにします。素材の支度が出来る頃には十分に鍋と油が温まっているわけですから、そのまま中火か強火にして素材をぶっ込んで炒めます。

鍋の中身にカレー粉をまぶし、塩胡椒などで軽く味付けをして、肉に焼き色がつき、野菜にも火がある程度通ったところでやかんで沸かしたお湯を鍋に投入し、コンソメキューブを落としてしばらく煮込みます。その後カレーキューブをぶち込んで味を調え、スパイスなど調味料の工夫を加えて、味見をしながら放置煮込みをしつつ、ご飯が炊けたら出来上がり、とまぁこんな感じなわけです。

ここでの要領のよさは、素材を炒め、煮込む鍋とは別に、お湯を沸かしておく事。炒め終わった段階で水を入れて煮込むよりも、その分カレーキューブをぶち込んでから煮込む時間が増えるわけで、素材も柔らかく味も染みこむわけです。っつーかこんなの工夫でもなんでもないですよね。


いや、無論全ての場合にこれが応用出来るとは限りませんが、ほんの少しのこうした工夫と、コンロの口が2つ以上あるならば、それらを全開にして同時進行で作業を進めるということが時間短縮と「要領の良さ」に繋がるのではないかと僕は考えているのです。

ずっと火の側に尽きっきりでなければいけないというような料理は、家庭で作るお総菜や料理の場合、さほどあるわけではないと思います。また仮にそうであったとしても、他の作業の合間にかき混ぜるだのなんだの程度ならば同時進行で出来ないわけもなく、一つ一つの作業工程を順番にこなしていたのでは時間ばかりかかってしまい、僕などはその間に空腹で倒れてしまう可能性があるので、こうした要領の良さをいつでも念頭に置いていたりするわけです。


ところで。先日、少々根を詰めて仕事をしており、身体は食事と睡眠への欲求サインをバリバリ全開MAXに発信している状態だった時の事です。この食欲・睡眠欲というエマージェンシーサイン2種に加えて、排泄欲求という、人間の三大欲求の内の2つ+抗いがたい人体機構の本能というトリプルアタックを喰らってしまった僕は、ふらふらとしながら仕事部屋を出ました。

以前にも何度か書いた様に、僕の部屋は三階にあり、台所やトイレは2階にあるという構造になっています。したがって僕はフラフラとしながら部屋を出て、フラフラとしながら階段を降り、ひたすらフラフラとしながら全ての目的を果たそうとしました。それもそう、出来るだけ「要領良く」目的を果たそうとしたんです。

一番最初に実行したタスクは、ヤカンに水をいれてコンロにかけることでした。それから食料をもぞもぞとあさり、カップラーメンを発見した僕は梱包を破いて準備をしようとしたのですが、階段を降りる際の上下運動による振動で、膀胱周辺に刺激がいってしまったらしく、さっきまで軽かったはずの尿意が、突如ヴォルテージMAXへと変化してしまいました。ギアでいうなら1速で徐行していたハズが、一気にアクセルを開けて4速に入れてしまったくらいの変化です。

慌てた僕はなかなか破けないフィルム梱包に業を煮やして、箸を取るとえいやとフィルムに刺し、そのままビリッとフィルムを破こうとしたのですが、勢い余ってカップラーメンのカップ容器まで貫通させてしまうという暴挙に出てしまいました。

「うわーやっちまった!」と、ギャラリーもいないのにリアクションをとったところで、尿意は既に臨界点を突破寸前となり、つまり堤防も決壊寸前。ギアでいうなら幻の6速にブッコんでしまい、モハヤボウハツモ止ムナシ状態に。「ああもう!」などと云いながら、僕はトイレに駆け込みました。

そして、チャックを降ろすのももどかしかったので、膝をガクガクさせながら一気にズボンとパンツを膝下まで降ろした逆半ズボンスタイルで、放出すべきものを放出したわけですが、リトルジョーが去った後にMr.ビッグベンが降臨されたようで、僕はそのまま振り返って着座したわけです。


ところが、ビッグ・ザ・ベニー様との格闘が済んだ頃に、今度はキッチンからけたたましいケトルのピーピー音が鳴り響き、お湯が沸いたことを告げます。その音に慌てた僕は、ウォシュレットを強にして大急ぎで洗浄し、大急ぎで始末をして大急ぎでズボンを上げながら立ち上がろうとしたのですが、その瞬間にズボンのボタンがはじけ飛ぶというハプニングが発生してしまいました。

「おいおいおい!」と一人でリアクションをするも、その間にも相変わらずキッチンでやかんはピーピーと鳴り響いています。仕方なくパンツだけをはいてズボンは足首にたまったままという「脱出寸前の間男スタイル」で、流すべきモノを流して、もぞもぞとトイレを出て、もぞもぞとキッチンに向かい、ようやく火を止めることが出来ました。

それから手を洗って、再びカップラーメンの準備を続け、お湯を注いだわけなんですが、この時点ですっかり忘れていたんですよね。先ほど箸でフィルムを破こうとして容器にまで貫通させてしまったことを。


当然の如く容器の底からはお湯が漏れだし、シンクの上にスープがじわーっと広がっていきます。しかしながら僕はそれを見ながらしばらくきょとんとしてしまったんですよ。「え?なんで?」ってな具合です。PCで云えば一時的フリーズです。さっき自分で穴を開けたことをもう全然憶えていないんですよね。「おいおい不良品かよ日●!」とか思ったくらいですから。

それでも数瞬で穴を開けてしまったことを思い出したわけですが、それからの対処が良くなかった。お湯を注いでいたヤカンをとりあえずコンロに戻して、カップラーメンを持ち上げた僕は、とりあえず穴を指で塞ごうとしたんです。さっきまでピーピー云いまくっていた熱湯なのに。

「あっちい!なんだこれ!」と、なんだこれなのはお前だとしか云えないリアクションをしたものの、持ち上げられた容器の底からは、擬音を着けるならば「しーしー」といった具合に細いお湯の糸が出ており、シンクに落ちては飛沫を飛ばします。

すっかりパニックになった僕は、脳内でさまぁ〜ず三村先生に「結局漏らしちゃってるよ!」などとツッコまれつつ、とりあえず深皿を出して容器の下に敷く事に成功して、なんとかパニックはおさまったのですが、キッチンはちょとした惨事になっていました。

シンク周りにはスープが零れ、飛沫が飛び散りまくって湯気をあげており、慌ててやかんを戻した時にお湯が零れ、そこからも湯気が立ち上っています。そしてシンクの上には何故か皿の上に載せられたカップラーメン。そしてそれらを呆然と見回して項垂れる、間男スタイルのクマが一頭(三十歳)。

前言撤回。「ちょっとした惨事」ではなく「わりと大惨事」な感じです。何をどうしたらこんなシュール過ぎる光景が出来上がるのか、理解に苦しみます。いや、全て自分でやったことなんですけれども。


この一件は、云うまでもなく「要領の良さ」を重視するあまり、自分の許容範囲以上の事をやってしまい、また工程の順序を間違えたばかりに起こった悲劇でした。「要領の良さ」は大事ではありますが、読者諸兄諸姉におかれましては、本件をもって、優先順位をしっかりと見定めなくてはいけないという教訓にして欲しいと思います。



教訓:おしっこ最優先。
(これでも三十歳です)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.