■ 先入観を捨ててみる。

人間は文明社会の中に生まれると、さまざまな知識を詰め込みます。そして初めて見るもの、初めて聞く言葉、初めての臭いや味わいに対して、さまざまな関連づけを行い、その特徴をつぶさに聞かずとも、そのもの自体を蓄えた知識のデータベースから呼び出すことができるわけです。

例えば懐かしの映画「ブッシュマン」。簡単な出だしのあらすじを述べれば「セスナのパイロットがアフリカ上空を飛行中に、窓から飲み干したコーラの瓶を落とした。それを拾った原住民達が、コレは一体なんなのかということを色々試してみたりする」という事になるわけです。

さて、我々の多くは「コーラの瓶」といえば、あのやや青みがかった透明なボトルを思い浮かべることができます。ガラス製で若干重量があり、そのフォルムは様々な検討とデザインを繰り返した末に生まれた、豊満な女性をイメージさせる柔らかな曲線もったものであるということまで、認識できるでしょう。

そしてその用途は容器であり、なおかつ中にコーラという飲料を入れるものであるということまでも知っているわけです。だからこそ、そうした事を知らない「ブッシュマン」に登場する原住民達が、様々な使い方を試すのを見てユニークだと思うわけですね。


ところで、我々も「コーラの瓶」というモノを知らなかったらどうでしょうか。誰かがそれを見て「こういうものだ」という事を伝えて、いくつの外見的特徴を伝えれば、最終的に「コーラの瓶」という像を作る、もしくはそれに近いモノを描けるでしょうか。

先ほど書いた様な外見的特徴というものを「一つ一つ」にわけて提示していけば

・ガラス製である
・ちょっと青みがかっている
・細長い
・底のある筒状
・穴の空いている方が細い
・透き通っている
・白で文字が書かれている
・ちょっと重い
・さわると冷たい
・長さは20cmくらいだ
・直径は8cmくらいだ

とか、まぁこんな感じになるでしょうか。あの独特の曲線のフォルムに関しては、ちょっと説明が難しいというところもあるので省きましたが、大体こんなところが代表的な外見的特徴だと思います。一部触覚情報や重量情報も入っていますけどね。

ですが、これらをもとに像を描き出すとなると、多分円錐柱状の花瓶のような容器ができあがると思います。コーラの瓶とは似て非なるものですね。ですが、実物にかなり近しいところまで持っていくことは可能ではあると思うわけです。


コーラの瓶なんてものを持ち出しましたが、もう少し身近なところではアニメのキャラクターなんかはどうでしょうか。かなり丁寧な絵描き歌もあり世代を問わず愛され続けているキャラクター「ドラえもん」を例に挙げてみましょう。

ドラえもんのプロフィールといえば、誰もが思い浮かべるのは「未来から来たネコ型ロボット」というものではないでしょうか。なにしろ主題歌の歌詞にも入っているくらいの大事なタームですからね。

そして彼は、それに加えて他にも様々な外見的な特徴やプロフィールを持っています。ですがこのドラえもんという愛すべきキャラクターを全く知らない人に、その存在を伝えるというのはなかなかに難しいと思うのです。


そこでとある実験的ゲームをやってみました。ドラえもんの外見的特徴を「一人一回一つずつ」という制限で述べてもらい、それを先入観なしで描いてみようというわけです。先ほどのコーラの瓶の例を、具体的に実際やってみるわけですね。なお、重複した情報は排除していきます。

一応メインの前提として、先ほど挙げた、誰もが思い浮かべる特徴の「ネコ型ロボット」は採用します。ですが「ネコ型ロボット」は既に「ネコ型である」ということと「ロボットである」という二つの情報を含んでいますので、ルールに則って、これを「ネコのようなもの」「ロボットである」という二つに分けることにします。

さて、そのひな形的情報の上に、特徴を募集してみたところ、こんな特徴が寄せられました。

・ひげがあります。
・手が団子
・ちょっと浮いてる。

これらの情報を加えて描き出すと、こんなものが出来上がってきました。







なんぞこれ。


手は三連団子にするつもりがわけのわからないものに。ロボっぽくするためにRCアンテナとネジを配置。ヒゲは既に「ネコのようなものである」という前提の上に重ねられたので、ネコヒゲとは別に立派なあごひげをたくわえさせ、少し浮かせてみました。どうみても謎の生物です。ネジとか動物虐待っぽくあります。ダメだろこれ。


さらに次々と情報は寄せられていきます。

・青い
・しっぽがスイッチ
・腹にポケットあり。
・鈴の付いた赤い首輪。
・耳が無い。
・全体的に丸い
・3頭身
・口が大きい
・目も大きい

先ほどまでの特徴に加え、これらの情報を加えて描き出したのがこちらです。







誰だお前!?


前身を青くして、なるべく3頭身にした上で丸くして、目を大きく、口も大きくし、同時に耳をカットしました。青や赤という色指定が入りましたので、カラーを採用した結果、手である団子は美味しそうなみたらし団子仕様になり、ロボっぽさを強調するために大きな目は松本レーダー風に。そうなると必然口は大きなロボ風四角口になります。さらに尻尾にはボタン式スイッチが、腹部にはポケットが据え付けられました。

明らかに「ドラえもんとは違うなにか」。ですが、どこかしらドラえもんっぽいというか大分実物に近くなったような印象があります。銀河鉄道999やキャプテンハーロックでお馴染みの松本レーダー風にした目やロボ風四角口から藤子先生の別作品「21エモン」に登場した芋掘りロボット・ゴンスケを彷彿とさせる風貌になったのが以外でした。

先入観というか事前に蓄えられた知識を捨てたはずが、やはりどこかでそうした知識を反映させてしまっているのかもしれませんね。


なんか絵心の無さを堂々とひけらかすというヒドイ羞恥プレイではありますが、なかなかに面白いので、またやってみたいと思います。



次はサザエさんか…?
(無闇にハードルをあげて自分の首を絞めてどうする!?)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.