■ ハッスル!ハッスル!

スリー!ツー!ワン!ハッスルハッスルー!

というわけで、PRIDEという総合格闘技をプロデュースするドリームステージエンターテイメント(DSE)が、その成功の黒字をぶち込みまくって、PRIDEとは逆方向のエンターテイメントをかましている「ハッスル」が、11月3日にビッグイベントを迎えます。

そのタイトルも『ハッスルマニア』。いわずと知れた世界最大規模のプロレス団体WWEのビッグイベント『レッスルマニア』のパクリというかインスパイヤというかオマージュというか、まぁベストマッチな落としどころとしては「パロディ」というヤツですね。

最初の頃こそ、ビル・ゴールドバーグを呼んでみたり、呼んだ挙げ句に持てあましてみたりという迷走状態を続けていたハッスルですが、鬼才・金子ナンペイ氏によるポスターに描かれた映画調の絵から始まった、小川直也の孫悟空スタイル、故・橋本真也のアフロ&ソデにフリンジが付きまくった衣装スタイル、そして高田総統の登場から、物凄い勢いでエンターテイメント化。

今や「プロレスの一線を越えた新しいエンターテイメント」として、すっかり定着しています。どれくらい定着しているかといえば、エロテロリストことインリン・オブ・ジョイトイを「インリン様」としてリングに上げ、スキットもやればM字開脚もやり、なんと試合までしてしまうという暴走っぷり。しかもその支持率が主役たる小川直也よりも高いというくらいです。


「ハッスル」というモノを既存の何かと比べるのは正直難しいといえば難しいです。WWEに代表されるエンターテイメントプロレスと比べるには、プロレスの試合レベル自体があまり高くはない。ストーリーも社会風刺的なモノをメインに据えているWWEのソープドラマに比べると、いささかチープであり、お笑い的要素が強い。

悩んだ挙げ句に行き着いた答えは、これからゴールデンに進出できるかもしれない深夜ワクのバラエティ番組といったところでしょうか。それもここ数年の深夜番組黄金期というわけではなく、まだアングラ臭が漂っていた時期のものです。後期「オールナイトフジ」や「夢で逢えたら」のあたりですね。

また、日曜朝にやっていた特撮コメディモノのノリにも近いモノがあるかと思います。いわゆる東映ファンタジー系というやつですね。「勝手に!カミタマン」とか「バッテンロボ丸」とか。そういうのを幾分大人向けにしつつ、ドリフのライブコントの様なノリで観客も参加するという様な、そんな感じです。


さてさて、そんな「ハッスル」に、現在ちまたで大人気のレイザーラモーンHG住谷氏が参戦するという事は既報の通りなのですが、続く大物芸能人として狂言の和泉元彌氏が参戦することになりました。確かに能・狂言こそが正しい意味での「芸能」ですから、まさに大物芸能人ではありますね。

和泉元彌さんという人は、僕にとっては「ダバダ〜♪なコーヒーのCMに出てた人だ」というくらいの知識しかなかったのですが、なにやら一時期随分とワイドショーなどを賑わせたこともあるような方らしいですね。

僕も高校時代の先輩が書いたテキスト(面白いので必読(笑))で、聞きかじり程度の知識はあるのですが、そんな人がいくらハッスルとはいえどもプロレスのリングで試合をするということに、さすがに驚きました。


ちなみにレイザーラモーンHGに関しては、以前も少し紹介しましたが学生プロレスの猛者であり、しっかりと練習にも取り組んでいるようなので、試合になっても事故的な「大変なこと」になることはなさそうだなという予想が出来ます。

ですから安心して見ていられますし、プロレスラーに憧れ、学プロからお笑いに進み、妙縁奇縁の果てにプロレスのリングに上がることが出来るという、ある程度以上のサクセスを楽しむことも出来るわけです。

またインリン様に関しては、屈強なレスラーがしっかりとガードをしており、相手がダウンしている時などに出てきてはちょっかいを出すという、いわゆるWWEでいうところの女性マネージャー(DIVA)的な動きは、プロレスの長い歴史の中では決して珍しいことではありませんから、これもまた安心して見ることが出来るわけです。


ですが、ここでモトヤちゃん、もとい、和泉元彌氏が問題になるわけですよ。退会処分を喰らったりとかしているとはいえ、仮にも日本の伝統芸能を受け継ぐ人。そんな人が殴る蹴る投げる極めるの技を出来るわけもなく、またそれを受けることも、対戦相手としても、それらを喰らわせることも出来るわけがないわけです。

今回のハッスル出場も決して「プロレス転向」ではなく「ゲスト参戦」であり、あくまでもプロレスラーとしてではなく「狂言師」としての参戦なのですから、実に難しいところです。ぶっちゃけた話「あんた何しに出てくんの?」と思うわけなんですが、まぁ色々あるのでしょう。

しかし元からプロレスファンでもある和泉元彌氏はやる気の様子で、実際記者会見でも「プロレスの歴史は200年、狂言の歴史も600年。室町時代から続くエンターテイメントと、世界中で200年も続いたエンターテイメント。そして平成の新しいエンターテイメントとしてハッスルに興味がある。また飛行機で隣り合った故・橋本真也さんとのご縁もあったので」と、プロレスに対するリスペクトを前面に押し出し、なかなか好感が持てます。

まぁなんですかね。記者からの「技を何か考えていますか?」という質問に「空中元彌チョップ」と応えてみたりと、それはちょっとどうなのよという面もあったりするわけなんですけどね(笑)。空中って、チョップって。どんな技なんだよそれって感じです。


そんなこんなでドタバタしながらも、和泉元彌氏の対戦相手は元新日本プロレス→元WWEのケンゾーこと鈴木健想に決まったりと、得意のドタキャンやダブルブッキングもなく、あとは当日を待つばかりになったわけなのですが、一体どのような試合を見せてくれるのか不安であり楽しみでもあります。

ケンゾーはラグビー出身のパワーファイターですし、身長191cm/体重123キロの大型ヘビー級レスラーです。対する和泉元彌氏は慎重169.7cm/体重63キロ。仮に手加減をしたとしてもタックルの一つもかまされれば木の葉の様にキリモミしながらぶっ飛んでしまいそうです。「空中元彌チョップ」がどんな技なのかはわかりませんが、どちらかというとチョップを喰らって宙を舞うところしか想像出来ません。


そんな和泉元彌氏がどうやって戦うのか。彼の言う「狂言を活かす」とはどういうことなのか。色々考えてみたのですが、そもそも狂言なるものをよく知らないんですよね。知っているものといえば、学生時代に国語の教科書で読んだ「附子(ぶす)」っくらいのものです。

この作品は、確か太郎冠者と次郎冠者が、「これは周りの空気さえも毒になる附子という毒だから、決して開けてはいけないと」言い含められた箱を、主人が留守の間に「あおげあおげ、あおぐぞあおぐぞ」とやって毒気を払って近寄り、箱を開けて中を見ると黒砂糖水飴だったので二人で喰ってしまうという内容だったと思います(上記のリンク先を読んだらほとんどあってた。なかなかの記憶力にびっくり)

僕でさえも知っており、なおかつ国語の教科書にも載る様な話ですから、この辺りから狂言のネタを引っ張ってくるのかも知れません。さらに能や狂言には、割とアクロバティックなシーンもあります。例えば「土蜘蛛」で使う蜘蛛の糸なんかもそうですし、あぐらをかいたままジャンプしたりもします。そういうところを使うのかも知れません。

また能や狂言といえば、黒子という存在も外せません。調べてみたところ、狂言の黒子は「後見」といい「演技を後見し、衣装をなおしたり、小道具を扱ったりする。芝居の黒子とは違い、シテに事故の生じた際には引き継いで演じる。シテが文句を忘れたときにプロンプターとして声を出してやるのも後見の仕事」と、相当重要なポジションであるようです参考資料サイト


これらの情報と、これまでのハッスルの演出などを総合して和泉元彌氏vsケンゾーの試合をシミュレーションしてみると――


入場時、ケンゾーは元WWEっぷりを発揮というか丸パクリして神輿に乗って登場。エキゾチックなテイストの衣装でリング上にその巨躯をアピールして、コーナーに仁王立ちにて和泉元彌を待つ。

しかし、そこに草間GMが登場し和泉元彌氏がダブルブッキングで試合に間に合わず、ドタキャンしそうになっていることを告げる。憮然とするケンゾー。場内ブーイング。しかしそこに中継カメラが繋がって、横浜アリーナ近くのヘリポートからのライブ映像が送られてくる。

着地したヘリから降りてきたのは、黒服グラサンのSPに囲まれた和泉元彌氏。そのまま試合会場に直行すると実況される。映像はここで終わり、スクリーンが消えると場内暗転。鼓の音が響き渡り、地謡の歌声とともに狂言装束に身を包んだ和泉元彌が扇を片手に、スモークの焚かれた入場ランプへと姿を現す。

前後左右には先ほどは黒服SPだった者達が、後見(黒子)として付き従い、背筋をぴしっと伸ばした和泉元彌を囲む。閉じた扇をリングに向ける元彌は後見と共にリングへ向かう。そしてケンゾーと対峙。コールされゴング。


様子を見る様に距離を取りながら近寄るケンゾーに、元彌はしずしずとリング中央へ。ロックアップするかと思いきや、手首を扇で払うだけでケンゾーは一回転。まるで合気道の達人のような体捌きと動きをみせる元彌。伸ばしてきたケンゾーの手首を掴み取って、小手返しなども。

転がされたケンゾーが受け身をとって構え直す、同時に元彌もぴしりと扇を向ける。まるで腰投げ→袈裟固め→ヘッドシザースという一連の全日本プロレス式カウンタームーブが決まったときのように場内拍手。

しかしここで試合は静から動へ。打撃を狙って勢いよく突っ込んでくるケンゾー。一撃目のクローズラインはダッキングしてかわすが、振り返りざまのタックルをもらってしまう。勢いよく転がる元彌。場内はケンゾーにブーイング。しかし追撃のストンピングを狙ったケンゾーを、リング下にいた黒子が飛びかかって止める。

羽交い締めにされたケンゾー。しかし黒子は「見えない存在」なので、ケンゾーもどうしようもない。その間に体勢を立て直した元彌はコーナーに上がり扇を広げる。そして浪々と「あおげあおげ、あおぐぞあおぐぞ」と「附子」を謡う。

その間にさらなる黒子達がリング上に上がる。この黒子達が尋常ではなく強い。明らかに中の人はプロレスラーであり、ケンゾーをリフトアップするわ、投げ飛ばすわ、蹴り飛ばすわ大変なことになる。「あおげあおげ、あおぐぞあおぐぞ」の声にあわせて、コーナーに釘付けにしたケンゾーに連続攻撃なども。


頃合いを見て黒子がグロッギー状態のケンゾーを肩車リフトしてリング中央へ。元彌が「それぇぃっ!」と「附子」でいうところの箱へ飛びかかって開けるくだりに入ると、別の黒子達が元彌をリフトして肩車状態のケンゾーの近くに運び、通り過ぎ様に畳んだ扇を持った右手を逆水平チョップのようにケンゾーの顔面に叩き込む。これが必殺「空中元彌チョップ」だ。

ロードウォリアーズのダブルインパクトを受けた様に、肩車状態から後方に半回転して落下するケンゾー。黒子がそれをひっくり返し、その上に元彌が乗り、大見得を切って3カウント。元彌大勝利。そして試合後は狂言式ハッスルポーズを決めて、自家用ヘリで次の自主公演へ――


とまぁ、長くなりましたが、こんな試合が僕の脳内では出来上がったわけです。しかし自分で云うのもなんですが、なんとなくありそうじゃないですか(笑)?むしろこういうパターンくらいしか和泉元彌氏がリング上で試合をする方法はないと思うんですよ(笑)。

それにWWEでスポーツエンターテイメントのなんたるかを叩き込まれたケンゾーなら、こういう試合での受けも出来ると思うんですよね。むしろケンゾーでなければ出来ないというかなんというか、まぁそんな予想ですね。


まぁ最近上り調子のハッスルですから、僕のこんなちんけな予想など、遙かに斜め上へと超えてくれることを期待するわけですが、これ以上となると、色々な事情からなかなかに難しいのではないかなぁとも思うわけです。

いずれにせよ「ハッスルマニア」開催まで、残り一週間ちょっと。どんなエンターテイメントを見せてくれるか、本当に楽しみです。



くれぐれも事故で大怪我をさせて、元彌ママに
「タクのモトヤちゃんになにするザマス!」と
訴えられたりすることがないように願います。

(まぁそういう展開もありといえばアリ…なのかな…)

続報が出ました。「セッチー鬼瓦軍団」とはまた微妙な名前ですが、狂言の曲目からとったとのこと。しかし鬼瓦といえばビートたけしがかつて「オレたちひょうきん族」で演じていた労務者キャラクター鬼瓦権蔵がいたりするわけで、ひょっとしたらひょっとするのかもしれません。まぁねぇな(笑)。

ちなみに節子ママは「そのためにも、ケガをされては困る。健想選手、もし万一和泉元彌にケガでもさせたらタダでは終わらせない」と発言。なんというかこう既に予想通りの展開になってきていますよ。すげえな(笑)。

またプロレスのトレーニングでは、元彌ちゃんもなかなかの動きを見せたとのこと。僕が書いた程度のカウンタームーブくらいは試合でも披露してくれる可能性が高くなりました。いやーそれにしてもどうなっちゃうんでしょうねぇ。非常に楽しみです。

(C) G-LABO Gengi-DOJO.