■ エンターテイメント賛歌!

どうだ!これもプロレスだ!

というわけでして、さる11月3日に横浜アリーナで開催された「ハッスルハウス2005」。ハッスルシリーズの今年一年の集大成である大会だったわけですが、なんといっても話題は芸能人の多数の参戦でした。

狂言の和泉元彌、レイザーラモーンのハードゲイ住谷、そしてこれまでも定期参戦してきたインリン・オブ・ジョイトイ。学生プロレスチャンピオンであったHGや、既にハッスルの風景に馴染んでいたインリン様はともかく、なぜここで、と疑問を感じ、また非常に不安でもあったのが和泉元彌の存在でした。

で、そのあたりのことはこんな記事に書いたりもしたのですが、いやはややられました。想像の斜め上を突き抜けて成層圏を突破し、遙か第七銀河の彼方にまで行ってくれましたよ。主催・演出を行ったDSEも、WWEで鍛え上げられた対戦相手の鈴木健想も、そしてなにより和泉元彌自身が、本当に素晴らしかった。本当に驚きの連続でした。


当日、僕は残念ながら会場にはいけなかったので、PPVでの観戦だったわけですが、某所でリアルタイム実況をしていましたので、その文章をもって、まずは試合リポートをお読み下さい。あわせてスポーツナビフォトギャラリーも見て頂けるとより臨場感があるかもしれません(笑)。



先にケンゾーwithヒロコ入場。青のライトにスモーク。コスチュームは根本的にはWWE時代と変わらない感じ。ポージングするケンゾーの前にゲイシャガールコスチュームのヒロコが出ると、巻物を縦に広げる。そこには墨痕も鮮やかに「小細工はいたしません」の文字が。盛り上がる。ケンゾーの身体はしっかり出来上がっている。

しかし元彌はまだ来ない。入場コールがかかる。「和泉元彌withセッチー鬼瓦軍団の入場です」。そしてかかったのはジュディ・オングの「魅せられて」。セッチーとAKIRAが入場。さらに鬼瓦軍団が紋付き袴で入場。セッチーの右手には長刀が(笑)!!しかも花道ではなく通路から。グレイシートレインならぬ「狂言トレイン」だ(笑)。元彌はいない。

そしてリング上でケンゾーが「和泉元彌どこにいるんだよ!まさかダブルブッキングじゃねーだろうなー!」「ハッスルマニア、この大事な場面で試合時間にいないだなんて、どんな躾をされてきたのだか、親の顔がみたいもんですわ」とセッチーを挑発。ヒロコのマイクすげえ。ほんとすげえ。伊達に元アナウンサーじゃあないといったところ。

セッチーは応えず。ヒロコは「このまま不戦勝ならセッチーに上がってもらうぞ」と挑発。セッチーはヒロコに「白塗り厚化粧で下品」だとやり返す。そして「掛け持ちはあってもダブルブッキングはない」とアピール。

そして「何人でもいいとおっしゃいましたね」と、そこで謎の覆面レスラーミスター鬼瓦とAKIRAが上がる。一応この時点で試合開始ということらしいが、スピアーからのTSUNAMI(アイアンクロー式STO)で速攻KO。ケンゾー強い。

ケンゾーがコスチュームを半脱ぎして尻を出してぺちりぺちりと叩き、まだ出てこない元彌を挑発すると、会場にはヘリの音が!!そして横浜アリーナ天井から和泉元彌が縄ばしごに捕まって下りてくる演出で登場。キャッツアイかルパン三世か!やばい、鳥肌たったくらいかっこいい。かっこよすぎる。BGMは少林サッカーだ!!

「ハッスルファンの方々、狂言和泉流二十世宗家・和泉元彌でござる!遅刻もダブルブッキングもござらぬ。開場前から、ずうっと上でまっていたのじゃあ!健想選手、このバカ息子が討って捨て申す!」と、ヘッドセットマイクで拡声されながらも、大音声の狂言喋りで名乗り口上。

もう失神しそう。かっこよすぎる。会場も大盛上がり。しかもセリフの「間」で、わあーって沸くのがスゴイ。ホンモノのオーラがバリバリにでている。リング上のケンゾーも「ようやく来たか」とニヤリ。いや「やるじゃねえか」と素の部分で笑っているようにも見える。


花道に降り立つと狂言の謡が入り、舞う元彌。かっこいい。ひとつひとつの動きの極め方がかっこいい。そしてリングインすると袖で平手。身長差から視線を合わせようとしないケンゾーに「身どもはここじゃ、いざ合戦のとき!」と名乗りを上げて再度張り。うわーかっこいい。リング上の元彌はケンゾーの突撃をひらりひらりとかわす。あれ、試合してるよ?!

元彌がロープに走ってのエルボー2発。さらに至近距離から連発するも効かない。一気にロープに詰めて、ツバを吐きつけるとケンゾー張り。コーナーに打ち付けて張り、対角線に投げつけてさらに張り。コーナーダウンするも、しかし元彌視線は折れない。苦しそうな表情もいい(笑)。


引っ張りこんでリング中央でネックハンギング。苦しそうだが元彌は「のおおおおお!!」。リリースすると、ダウンした元彌の頭部を掴んで揺さぶる様に何度もリングに打ち付ける。そこにAKIRAとミスター鬼瓦が乱入するも、再度瞬殺される。

ケンゾー、起きあがらせた元彌にシュミット式バックブリーカーから、そのままバックブリーカー・オン・ザ・ニー。耐える元彌に場内はモトヤコール。踏みつけ式のポージングカバーは2で元彌がリリース。会場は「おおおおおー!!」と歓声。なんだこの盛り上がり。

そしてダウンしている元彌に合掌からのロープにとんでのジャンピングニー。これがジャストヒット。死ぬ。明らかに死んだ。引きずり起こそうとするが、さすがに起きあがれない元彌。しかしケンゾーフォールに行かない。起きあがらせてバックドロップに行こうとしたところにAKIRAとミスター鬼瓦が乱入。

AKIRAがケンゾーをカットし、持ち上げられていた元彌はそのままフェイスバスターで切り返す。3対1の連携。鬼瓦・AKIRAと続き、最後は元彌がコーナーからふられたケンゾーに、カウンターのスライディング式低空ドロップキック。起きあがったところに鬼瓦がクローズライン。ケンゾーダウン。

そこに間髪入れずAKIRAがムササビボディプレス。さらに和泉元彌が狂言のジャンピングあぐら式ダブルニードロップフォール。一回くるりとスピンのように舞ってから飛ぶのがオリジナル(笑)。しかしケンゾー2で返す。


ヒロコがリングインし、AKIRAにニンジャパウダー(目潰しの粉)。返す刀でミスター鬼瓦にも行こうとするがマスクマンだから効かないと判断したか、鬼瓦が顔をガードしたからか、切り替えて金的蹴り。このあたりのヒロコの動きはスゴイ。

しかしケンゾーに捉えられた元彌に「いずみもとやあああ!!」と鬼の形相でニンジャパウダーを狙うも、元彌は上手くダッキングでかわし、パウダーはケンゾーに誤爆。

視界を失ったケンゾーとヒロコの間に入った元彌は両袖を広げてブラインドを作りつつ、「まだまだじゃああ!来ぉい!!」ケンゾーを挑発すると、突っ込んできたケンゾーをヒラリとかわす。結果ケンゾーはマッハなクローズラインをヒロコに誤爆。場内大盛上がり。でも、このヒロコの吹っ飛びっぷりとケンゾーの思い切りのよさに拍手が沸いた場面でもあった様に思える。

やってやったぜ!という表情でケンゾーが見下ろすと、そこにはグッタリしたヒロコが。とたんに「うわああああ!!しまったー!!!」とオロカヅラのケンゾー。フラフラと後ずさりしながら振り返るとコーナーの上にはチョップの予備動作を作った元彌が。

間髪いれずコーナーからケンゾーに飛びつく元彌。しっかりと両脚をフックし。ウラカン・ラナに行くのかと思いきや、そこから後頭部・頭頂部にチョップチョップチョップ!!そして大きく振りかぶって見得を切ってから、チョップをもう一閃!これが「空中元彌チョップ」だ!!

すとーん、といった形で崩れ落ちたケンゾー。っつーか和泉元彌の全体重がケンゾーの顔とか首に思い切りかかったような落ち方をしたが、大丈夫だろうか。いくら元彌が軽くても心配になるくらいの見事な倒れっぷりだ。しかし期を逃さず、元彌はそのまま姿勢を崩さずフォールに入り3カウント。

試合結果は元彌大勝利!なんだこれ!!WWEか!!WWEを超えたのか?!そんなこたあどうでもいいや!とにかく元彌がかっこよすぎる!!


息も上がっておらずリング上で会釈し、花道をしずしずと、しかし堂々と去る元彌。場内には和泉元彌からのメッセージが朗読され、スクリーンにも映し出される。

伝統を守り
家を守ること
それが日本人の心。
人に何をされようと
自らを見失うこと無し
己を信じ「生き切る」
それが全てを守ること
五百六十七年の歴史を信じ
生きてゆく
狂言和泉流宗家は
永遠に不滅なり

和泉流二十世宗家
和泉元彌

そして花道奥で正座すると、深々と礼をして去る。最後までかっこいい。会場の見送りの拍手が、明らかに舞台のフィナーレに対しての拍手のように思えるくらい。やっぱプロだわよ。本当にすごかった。ケンゾーは何も云わず退散。セッチー鬼瓦軍団も去る。このあたりも歯切れ良くてよかった。


とまぁ、こんな具合でした。とにかく元彌がすごかったです。予想では前に書いた記事の通り、本人はもっぱらかわす動きに専念して、あとは黒子がやるのだと思っていたのですが、本当にそんなちんけな予想を遙かに超えた姿を見せてくれました。

特筆すべきはやはりケンゾー選手でしょう。新日本・WJ時代はただのしょっぱいだけのパワーファイターだったのですが、WWEでもまれた結果「ホウキとでも試合が出来る」だけの受けの強さ、そして試合を作れる力をつけてきてくれました。ヒロコも本当にすごかった。ケンゾーはいい嫁さんもらいましたね。

独身時代は新日本プロレスの道場にファンの子を連れ込んでそこでチョメチョメしちゃって、それが防犯カメラに映っていたとかなんだとか、そんなとんでもないこともあったわけですが、水に流しましょう。本当にスーパースターでした。

勿論、和泉元彌もすごかった。ワイドショーやらモトヤちゃんネタでは、明らかにダメダメムード漂い過ぎな優男という印象しかなかったのですが、どうしてどうして、やっぱり「その道」で鍛えられた人は、違いますね。素晴らしい「表現者」でした。


ところで、この試合とHGの試合はワイドショーなどでも散々放送され、色々な意味で話題と注目を集める結果となったのですが、プロレスにあまり関心のない皆さんは、映像をみてどう思いましたか?

ショー? お笑い? バラエティ番組? 格闘技? お芝居? 八百長?――どれでもいいです。でも、これら全てが「プロレス」です。バチバチのハードヒッティングな試合もあれば、華麗な空中殺法もあり、コミックショー的な試合もあれば、殺伐とした試合もある。それら全てが「プロレス」。僕はそう考えています。

敗戦後のニッポン。体格で圧倒的に劣る力道山が、鬼の様な外国人レスラーを空手チョップでなぎ倒すのを観て、僕らの祖父さん祖母さんらは力を貰いました。ジャイアント馬場の大きさ、アントニオ猪木の殺気に、僕らの親父さんやおふくろさんは元気を貰いました。タイガーマスクに憧れ、前田日明に共感し、闘魂三銃士にしびれ、四天王に勇気をもらって、僕は育ちました。

そして今、ドラゴンゲートやNOAHの若いイケメンレスラーに女性客は大歓声を送り、DDTでは男色ディーノに襲われて嬉しい悲鳴を上げ、WWEのソープオペラに感心しつつ、空中元彌チョップに笑うしかないくらいの感動を憶える。これがプロレスでなくてなんなんだと思うわけです。


この試合をして「これがプロレスだ!」と豪語する事は出来ません。それは和泉元彌が狂言という分野での第一人者であり、あくまでもゲストであったからです。ですが11月3日の横浜アリーナで起こった全てのことは、入場から退場まで含めて、全てが「プロレス」の中で起きた出来事。これは断言出来ます。

ですからプロレスを知らない、興味がない「世間」に対して、僕は冒頭の言葉を豪語しようと思うのです。楽しくって、バカバカしくて、それでもみんな真剣で。観客の予想を上を行って、楽しませる事を第一に考える。それが素晴らしいエンターテイメントの世界。それがプロレスの世界。「どうだ!これもプロレスだ!!」――と。


おそらく和泉元彌が今後プロレスのリングに上がることはないでしょう。一回限りだと思いますし、もし仮にあったとしても、また1年後とかそんな感じになると思います。

本当に和泉元彌氏からは「見せる/観せる/魅せる」事のプロ魂を感じました。和泉元彌氏が、どれだけ真剣に取り組んだかは、彼のプライベートサイトの日記を読んでいただければ、もう少し伝わるかと思います。



夢舞台

 いや〜。終わっちゃった。
 今、家に帰ってきました。ホッとしています。痛みも、感動も、やったぞ・生きている事の実感です。
 ここ数日、”ふ”と目がさめると、夢心地でした。決して、しあわせだな〜。という感覚ではなく。自分が挑戦しようとしていることが現実ではないような、不思議な感覚。
 怪我の絶対無いように、と言いながら。もしかして・・・。と、あってはならないことを考えては・・・。 一人でいると、得もいえない緊張が・・・。それは、試合自体もそうですが、観客の皆さんの反応など・・・。自分の取り組みが、一回の試合で評価される。常ずねそんな舞台に立ってきたはずなのに・・・。おなかの痛い日々をすごしていました。
 そして今日、試合当日・・・。
 勝った。勝ちました。というか勝たせてもらいました。
 会場に詰め掛けた、15000人のハッスルファンの皆さん有難うございました。みんなの声援に支えられてがんばって、ガンバって、がむしゃらに頑張って勝ち取った勝利です。
 試合内容は、「ハッスルHP」で。
 AKIRA先生やMr.ONIGAWARA。そしてセッチー鬼瓦軍団、観客の皆さん。そして、満場の「元彌コール」。全てが未知の世界での出来事。
 まさに、夢舞台。主催のドリームステージさん。観客のみならず、スタッフみんなが大きな夢を見ているから作れるものなんですね。
 そして、鈴木健想選手!本物のエンターテイメントプロレスを叩き込んでくださって有難うございました。「昨日の敵は、今日の友」。世界のエンターテイナーの胸にがむしゃらに当たってきました。
 こんな温かい、いや、熱い会場の熱気と感動を胸にまだ、あのリングに立っていた自分が信じられずに、日記を書いています。本当にあのリングに立っていたのかな〜。本当に終わっちゃったんだね〜。
 が、明日のワイドショーを見て、全く違う世界が映し出されたら・・・。
 会場にいらした皆さんだけでも、共有したあの時間、あの感動を胸にとどめておいてください。
 また一緒に、いい夢を見れるような取り組みをしていきたいと思います。
 みんな、みんな。本当に、本当に有難うございました。
 ちゃんと大きな財産を持って帰ってくることができました。
 新しい挑戦をするに当たり、支えてくれた家族・スタッフの方々そして、皆さんに大感謝です。この気持ち、言葉で言い尽くすことはできません。
 これからの僕も見守っていて、いや、応援していってください。

和泉元彌氏プライベートサイト:BLUE HEAVEN/「こんにった‥なにあった」11月3日分より)


別のジャンルの人間として、プロレスをリスペクトしてくれている、そういうのがひしひしと伝わる文章です。

試合前は散々バカにしていましたが、本当に感服しました!ありがとう和泉元彌!プロレス万歳!狂言和泉流万歳!ハッスル万歳!!



ちなみに今大会で最もつまんない試合をしたのは
最古参レスラーである長州力でした。消えろ。

(どうせならパートナーに小力を連れてくるくらいやれよな…)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.