■ どうぶつの森日記総集編 −2−

24日目
泣き明かした朝、物音に目が覚めて家を出るとドジョウのような髭を生やした怪しい男がいた。ホンマと名乗るその男は保険屋だという。アンケートをとられ、そのままセールストークへ。たたみ込まれるように勧誘され、結局いわれるがままに傷害保険に入ることになった。

住民に嫌われ、目標を見失った今、保険などかけたところで今後の人生になにがあるというのだろう。どうせならば生命保険にしてくれればよかったのに。海辺で貝殻を拾いながら、この海に飛び込めて全てを終わりに出来たらどんなにいいだろうと考えていたら。また少し涙がこぼれた。


魚釣りをしていると、見たことのない家が建っている事に気がついた。新しい住人だろうかと思い訪ねてみると、屋内には黒い肌に赤い目をした悪魔のような男がいた。驚いて逃げ去ろうとすると呼び止められる。ロデオという名の異国人で、今日引っ越してきたという。外見に似合わず穏和な男だった。

趣味は魚釣りとのことで、後日釣り勝負をしようと約束する。ひょっとしたらこの村で最初の友人になれるかもしれない。引っ越してきたばかりならば、他の住人から僕の風評を吹き込まれたりもしていないだろう。少しだけ光明が見えた気がした。問題は外見がどう見ても悪魔にしか見えないことだが、人を外見で判断してはいけない。釣り竿を磨いて眠ることにする。


25日目
村民達は今日は虫取りに興じているらしい。しかしどうせ僕が虫網をもったら釣り竿なりなんなりに持ち帰るのだろう。どうせ心底嫌われているのだ。今更どうということもない。

ロデオ氏が川釣りをしていたので声をかける。なかなかの釣果のようだ。川釣りでブラックバスとコイを釣り、海釣りではヒラメとタイで勝負をした。この村に来て、初めて心から笑ったような気がする。これからの日々に楽しみが出来た。釣りはあまり得手ではないが、練習でなんとかなるだろう。

そうだ、珍しい魚が釣れたらロデオ氏に進呈しよう。果樹園の収穫が出来たら贈るのもいいかもしれない。果物が好きだと良いのだが。



27日目
ロデオ氏が引っ越した。



29日目
未だショックが抜けない。立て看板だけになってしまったロデオ氏の住居跡地に行くと、一見悪魔にしか見えないながらも愛嬌のある顔で笑ってくれた彼の幻影を見てしまう。

その場にたたずんで呆然としていると、隣家に住むワニ顔の女が話しかけてきた。茶色っぽい家具を集めているから、見つけたら教えてという。初めて村の住人に頼み事をされた。まだ立ち直ってはいないものの、誰でもいいから話し相手が欲しかった僕は、勢い込んで廃棄物や遺失物を見回ったがどこにもない。

そこでタヌ吉のデパートに行ってみると茶色系の家具が何点か置いてあった。しばらく悩んだが、苦肉の策ながらも自腹を切って購入。ワニ顔の女(クロコと名乗った)に届けることにした。

僕が家具を渡すと、クロコは喜び、お礼をしてくれるという。手渡されたのは古ぼけた絨毯だった。正直顔が引きつりそうになったが、表向きは喜んで受け取ることにした。出費は痛かったが、それでも村人と交流出来たことは大きい。どんなに嘆いてもロデオ氏はもういないのだから、少しでも前向きに生きていかなければならないのだ。


30日目
クロコに話しかけると、また茶系の家具を欲しがっている。なんとも貪欲な女だ。しかしこっちもローンに追われる身。収穫も終わり、全ての収入をローンの返済に回してしまった。手元には雀の涙ほどの金しかなく、茶系の家具を買うことは出来ない。

なんでここまでして村民と交流を持たなくてはいけないのだ、農園さえしっかりと運営していればいいじゃないか。いやしかしこのまま独りでは生きていけない…かといって自腹を切ってまでして貢いでやることはないじゃないか…。そんな自問自答を繰り返しながら、ふらふらと役場前を歩いていると、見慣れないテントがあった。

いったい何なのだと訝しがりながら中を覗くと、フードをかぶった怪しげな女が手招きする。聞けば占いをしてくれるという。手元に残っていた金でも事足りるほどの料金だったので、占ってもらうことにした。ここまで不幸のどん底にあって、今更どんな占いの結果が出ようと気にすることもないだろう。

そして案の定よくはない結果が出た。僕は今以上の不幸など考えられない、だからあんたの占いは当たりゃしないよと鼻で笑ってテントを出た。そして数歩歩いた途端、僕は見事なまでに顔面から転倒した。


31日目
どうも昨日はおかしかった。あの占い師に呪いでもかけられたのではないかと思うほどに転びまくったのだ。一体何が起こったのだろう。これ以上の不幸はないと思っていた現状に、まだ底があったとは、ここまでくると自嘲的な笑いさえこみ上げてくる。

家を出ると郵便が届いていた。数日前に加入した傷害保険からの給付金だ。はした金ではあるが、金があるに越したことはないのでありがたく受け取る。タヌ吉の店に出向くと茶系の家具が売っていた。今日のは余り高くない。保険金が入ったこともあってギリギリ買える値段だった。しばらく悩んだが結局購入。

保険金まで使って、別に恋人でもなければ好きでもなんでもない女に貢ぐ。我ながら馬鹿馬鹿しくて乾いた笑いしか出てこない。僕は一体なにをやっているのだろう。クロコを探して家具を渡すと「お礼はこれでいいわね」と家具を購入した金額の半分にも満たない小遣い銭を投げて寄越した。わかっている。所詮こんなものなのだ。


帰りしなカエルのような顔をした村民が話しかけてきた。化石探しが趣味といいながら虫取網を持って村中を彷徨いている、どうしようもないろくでなしだ。クロコとの情けないやりとりを見られたのかと思い警戒していたのだが、カエル野郎はニヤニヤしながら「お前のあだ名を考えてやったぜ。広めてやるから覚悟しておくんだな」などと言い捨てて去っていった。

考えてやったぜと云われたあだ名は、思い出すのも嫌で書くことは出来ない。ただ一つ云えることは、あいつは確実に僕とクロコとのやりとりを見ていたということだ。そうでなければ、こんなあだ名をつけるはずもない。情けなさと悔しさで目の前が真っ暗になった。


32日目
朝から役場に行き、廃品回収ボックスに向かう。遂に僕もゴミあさりをする浮浪者生活が身に付いてしまったのだなと自嘲しながら箱を開けると、昨日クロコに渡した茶系の家具が捨てられていた。

廃品ボックスから、その家具を取り出した僕は既に悲しさもショックも感じていなかった。なんとなくこうなるであろうことはわかっていたのだ。

役場の外に出るとカエル野郎と、その近所に住むネズミ面の男が僕に向かって、あの忌まわしいあだ名で呼びかけてきた。きっとこいつらは全てを見ていやがったんだ。クロコもグルに違いない。ネズミとカエルの、明らかな嘲笑交じりの会話を上の空で聞き流しながら、僕はとある『覚悟』を決めた――。
ここまでくるとネタにしか思えませんが、全て僕の村で起きた実際の出来事を元に、この記事は書かれています。



こんな非道いゲームを子ども達に
やらせていいんですか任天堂さん。

(スローライフって辛いね…)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.