【 2006年01月18日-14:40 のつぶやき 】
■ くらやみの森 −おいでよ どうぶつの森日記−
34日目
『覚悟』を決めた僕は行動に出る準備に入った。これまで育ててきた花を全て抜き払い、タヌ吉に売りつける。手元には幾ばくかの金が出来た。これまで額に汗して土地を開墾し、始終世話をして来た花。
それだけじゃない。住人に媚びへつらい、自腹を切って増やし育ててきた僕の成果。それはこんな程度の端金にしかならないのか。そう考えると僕は笑っていた。きっと鏡で見ればとてつもなく邪悪な笑みを浮かべた僕を見ることが出来ただろう。それでいいのだ。
手にした金で『行動』に必要な道具を買いそろえる。しかしまだ序章すら始まってはいない。ここからが全ての始まりなのだ。
自宅に戻り、真夜中になると買いそろえた道具――斧やスコップ――が整然と並べられた屋根裏部屋に僕は立った。それらを一つ一つ確認して手にとると、最後に前もって用意しておいた黒いシャツを着込む。黒いシャツ。その胸には血のように赤い文字で二文字、こう記してある。
『天誅』 と。
時刻は夜更けを過ぎた。いつもならあのカエル野郎が自宅近辺を彷徨く時間だ。荷物を全てまとめると、僕は目出し帽を被って家を出ることにした。窓から見える外は雪が降っている。この雪が全てを白くしてくれるように、僕の生活も白紙に戻ればいい。だがそうもいかないのだろう。しかしこれが第一歩になれば…それでいい。失敗は許されない。
36日目
カエル野郎が村から消えた。
いや、これだけで日記を終えるのも面白みにかける。一つめの復讐が成ったのだから、その事を記しておかねばなるまい。二日前の雪の夜。僕は一つの復讐を果たした。対象はあのカエル野郎だ。名前はサム。いや、最早いなくなったヤツに名前など必要もないのだが。
思い返せば、初めて会ったときから馴れ馴れしく、そして図々しく忌々しいヤツだった。化石探しが趣味という穀潰し加減もさることながら、その趣味さえも嘘だったのだろう、スコップを持っているところなど見たことが無く、日がな一日虫取網を振りかざしては遊んでいた。その後近所にネズミのような顔をした男が越して来てからは、その穀潰しぶりにさらに拍車がかかり、虫取網さえ持っているところをみかけなくなった。
話しかけられたと思えば、手紙を届けさせられること数回、荷物を届けさせられること数回。なんとか馴染もうと相づちを打てば、どんな応えを返そうが「お前は俺をわかっていない」と一蹴された。
別にこの程度の事ならばどうということもない。そもそもがこの村で僕は浮いているのだから。決定的だったのは、あのワニ顔の女…クロコとの事があってからだ。
クロコに貢いだ茶系の家具が役場の廃棄物箱に捨てられているのを見つけた日、僕はあのカエル野郎にとんでもないあだ名をつけられた。僕とクロコの事を全て見透かしたかのような酷いあだ名だ。しかし僕とクロコの事をカエル野郎が知っているという確信があったわけではない。ヤツは薄ら笑いを浮かべながら「村中に広げてやるから覚悟しておくんだな」などと云って去っていった。
そしてさらにその後の事だ。件の酷いあだ名でカエル野郎に呼び止められた僕は、ヤツから「お前にプレゼントだ」と、見覚えのある茶色の机を渡された。これもいつだったかクロコに渡したのと同じモノだ。
なぜカエル野郎がこれを持っているのかは瞬時にはわからなかった。そしてなぜこれを僕に渡すのかも。だがカエル野郎の言葉で僕は全てを悟った。「そこいらへんに捨ててあったものだけどいいだろ。モノは大切にしなくちゃな」。そしてヤツは高笑いしながら去っていった。それは僕に『覚悟』をより確実なものにするに十分に足るものだった。
つまりクロコが捨てたものをあいつは拾ったというわけだ。しかもそれを僕に渡した。僕を虚仮にする為に。やはりコイツには全てを知られていたということなのだろう。あいつの脂ぎった笑い声がいつまでも鼓膜に張り付いて離れない。だから僕は『覚悟』を行動に移すことにしたのだ。
あの夜、目出し帽を被って斧やスコップついでに虫取網を持った僕は、カエル野郎の家の側まで出向いた。そして数カ所に穴を掘り、全ての準備を完了させた。カエル野郎はのんきに鼻歌を歌いながらぶらついている。全く平和なものだった。
僕はタイミングを見て茂みから踊り出すと、ヤツに飛びかかった。そして抵抗するヤツを穴を開けたエリアに追い込むと身動きが出来ないように閉じこめた。ヤツは既に僕の正体に気づいたのか、何度もあの忌まわしいあだ名を繰り返しては激高していたようだが、僕は一切意に介さなかった。
それから僕は斧を握りしめると「このどうぶつ!どうぶつ!!」と叫びながら、何度もヤツを殴りつけた。何度も、何度も。その内斧が壊れてしまうと、虫取網を握りしめて、また何度も殴りつけた。何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
幾度ヤツを殴りつけただろうか。僕は息を切らせてヤツを見た。日頃筋肉の話しかしないようなクソ野郎だけあって、よほど頑丈なのか、ヤツはまだ動いていた。だが何度突いてみても反応を示さなくなったので、僕はヤツをそのままにして家に帰った。
そして今朝、ヤツの家の前に行くと家が無くなっていたというわけだ。すっかり更地になったヤツの住居跡に立つと、自然と笑いがこみ上げてきた。だが笑いの波が去った後で僕は自分が驚くほどの涙を流していることに気がついた。
これでいい。これでよかったはずなのに。なぜ自分が泣いているのかわからなかった。だがそれでも涙は止めどなく溢れ続け、僕はそのまま泣き崩れてしまった。
37日目
あんなことがあった後も日常は何でもなく続く。だが住民の態度がどことなく変わったような気がする。気のせいだろうか。「あの事」の目撃者がいるわけでもないだろうが、カエル野郎がいなくなって空気が変わったことに反応しているのかもしれない。まぁ別段いたところで構いはしないのだが。
花を売った金と収穫分を出荷した金があったので、思い切って髪型を変えることにした。ついでに髪も染める。タヌ吉の店に隣接するブティックでサングラスと服を購入し、全てが済んで店を出ると、まるで生まれ変わったような気がした。
これでいい、これでよかったのだ。そぞろ歩きしていると、クロコがジョウロを持って歩いているのが見えた。話しかけてみると必死になって花の交配や世話の話をしだした。茶色の家具の事など、これっぽっちも語りはしない。
なるほどそういうことかと得心した僕は、可笑しくなって笑い出してしまった。実にわかりやすい女だ。そっちがそのつもりならと、僕も何事もなかったかのように振る舞ってやることにした。
全てが変わりはじめたように思える。だがこれで終わりではない。僕の復讐…いや「村の掃除」は、まだ始まったばかりなのだ。村の役に立たない穀潰しどもは全て天誅を下してやる。そしてこの村を花いっぱいの村にするのだ。
まだこの村には駆除しなければならない穀潰しの害虫どもが何人かいる。こいつらをなんとかしなければ、この村に花は咲かないのだ。だが急ぐことはない。ゆっくりゆっくりと時間をかけていけばいいのだ。まずは住人達の中にとけ込む所からはじめよう。それからじわりじわりと侵蝕していけばいい。それが僕のスローライフなのだから。
追記:僕がこの日記を書いている屋根裏部屋には誰も入れないようにしなければいけない。表向きに平静を装う為にも、怨念の発散場所としてこの部屋は残しておかなければならない。そして万が一にもないだろうが、この先村の生活に慣れてしまい、今もなお燃えさかる復讐の念を忘れない為にも。

(C)2005 Nintendo / Nintendo DS 『おいでよ どうぶつの森』
繰り返しますが「どうぶつの森」って
こういうゲームなんでしたっけ?
(絶対違うんだろうなという確信めいたものは僕にも一応…)
『覚悟』を決めた僕は行動に出る準備に入った。これまで育ててきた花を全て抜き払い、タヌ吉に売りつける。手元には幾ばくかの金が出来た。これまで額に汗して土地を開墾し、始終世話をして来た花。
それだけじゃない。住人に媚びへつらい、自腹を切って増やし育ててきた僕の成果。それはこんな程度の端金にしかならないのか。そう考えると僕は笑っていた。きっと鏡で見ればとてつもなく邪悪な笑みを浮かべた僕を見ることが出来ただろう。それでいいのだ。
手にした金で『行動』に必要な道具を買いそろえる。しかしまだ序章すら始まってはいない。ここからが全ての始まりなのだ。
自宅に戻り、真夜中になると買いそろえた道具――斧やスコップ――が整然と並べられた屋根裏部屋に僕は立った。それらを一つ一つ確認して手にとると、最後に前もって用意しておいた黒いシャツを着込む。黒いシャツ。その胸には血のように赤い文字で二文字、こう記してある。
『天誅』 と。
時刻は夜更けを過ぎた。いつもならあのカエル野郎が自宅近辺を彷徨く時間だ。荷物を全てまとめると、僕は目出し帽を被って家を出ることにした。窓から見える外は雪が降っている。この雪が全てを白くしてくれるように、僕の生活も白紙に戻ればいい。だがそうもいかないのだろう。しかしこれが第一歩になれば…それでいい。失敗は許されない。
36日目
カエル野郎が村から消えた。
いや、これだけで日記を終えるのも面白みにかける。一つめの復讐が成ったのだから、その事を記しておかねばなるまい。二日前の雪の夜。僕は一つの復讐を果たした。対象はあのカエル野郎だ。名前はサム。いや、最早いなくなったヤツに名前など必要もないのだが。
思い返せば、初めて会ったときから馴れ馴れしく、そして図々しく忌々しいヤツだった。化石探しが趣味という穀潰し加減もさることながら、その趣味さえも嘘だったのだろう、スコップを持っているところなど見たことが無く、日がな一日虫取網を振りかざしては遊んでいた。その後近所にネズミのような顔をした男が越して来てからは、その穀潰しぶりにさらに拍車がかかり、虫取網さえ持っているところをみかけなくなった。
話しかけられたと思えば、手紙を届けさせられること数回、荷物を届けさせられること数回。なんとか馴染もうと相づちを打てば、どんな応えを返そうが「お前は俺をわかっていない」と一蹴された。
別にこの程度の事ならばどうということもない。そもそもがこの村で僕は浮いているのだから。決定的だったのは、あのワニ顔の女…クロコとの事があってからだ。
クロコに貢いだ茶系の家具が役場の廃棄物箱に捨てられているのを見つけた日、僕はあのカエル野郎にとんでもないあだ名をつけられた。僕とクロコの事を全て見透かしたかのような酷いあだ名だ。しかし僕とクロコの事をカエル野郎が知っているという確信があったわけではない。ヤツは薄ら笑いを浮かべながら「村中に広げてやるから覚悟しておくんだな」などと云って去っていった。
そしてさらにその後の事だ。件の酷いあだ名でカエル野郎に呼び止められた僕は、ヤツから「お前にプレゼントだ」と、見覚えのある茶色の机を渡された。これもいつだったかクロコに渡したのと同じモノだ。
なぜカエル野郎がこれを持っているのかは瞬時にはわからなかった。そしてなぜこれを僕に渡すのかも。だがカエル野郎の言葉で僕は全てを悟った。「そこいらへんに捨ててあったものだけどいいだろ。モノは大切にしなくちゃな」。そしてヤツは高笑いしながら去っていった。それは僕に『覚悟』をより確実なものにするに十分に足るものだった。
つまりクロコが捨てたものをあいつは拾ったというわけだ。しかもそれを僕に渡した。僕を虚仮にする為に。やはりコイツには全てを知られていたということなのだろう。あいつの脂ぎった笑い声がいつまでも鼓膜に張り付いて離れない。だから僕は『覚悟』を行動に移すことにしたのだ。
あの夜、目出し帽を被って斧やスコップついでに虫取網を持った僕は、カエル野郎の家の側まで出向いた。そして数カ所に穴を掘り、全ての準備を完了させた。カエル野郎はのんきに鼻歌を歌いながらぶらついている。全く平和なものだった。
僕はタイミングを見て茂みから踊り出すと、ヤツに飛びかかった。そして抵抗するヤツを穴を開けたエリアに追い込むと身動きが出来ないように閉じこめた。ヤツは既に僕の正体に気づいたのか、何度もあの忌まわしいあだ名を繰り返しては激高していたようだが、僕は一切意に介さなかった。
それから僕は斧を握りしめると「このどうぶつ!どうぶつ!!」と叫びながら、何度もヤツを殴りつけた。何度も、何度も。その内斧が壊れてしまうと、虫取網を握りしめて、また何度も殴りつけた。何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
幾度ヤツを殴りつけただろうか。僕は息を切らせてヤツを見た。日頃筋肉の話しかしないようなクソ野郎だけあって、よほど頑丈なのか、ヤツはまだ動いていた。だが何度突いてみても反応を示さなくなったので、僕はヤツをそのままにして家に帰った。
そして今朝、ヤツの家の前に行くと家が無くなっていたというわけだ。すっかり更地になったヤツの住居跡に立つと、自然と笑いがこみ上げてきた。だが笑いの波が去った後で僕は自分が驚くほどの涙を流していることに気がついた。
これでいい。これでよかったはずなのに。なぜ自分が泣いているのかわからなかった。だがそれでも涙は止めどなく溢れ続け、僕はそのまま泣き崩れてしまった。
37日目
あんなことがあった後も日常は何でもなく続く。だが住民の態度がどことなく変わったような気がする。気のせいだろうか。「あの事」の目撃者がいるわけでもないだろうが、カエル野郎がいなくなって空気が変わったことに反応しているのかもしれない。まぁ別段いたところで構いはしないのだが。
花を売った金と収穫分を出荷した金があったので、思い切って髪型を変えることにした。ついでに髪も染める。タヌ吉の店に隣接するブティックでサングラスと服を購入し、全てが済んで店を出ると、まるで生まれ変わったような気がした。
これでいい、これでよかったのだ。そぞろ歩きしていると、クロコがジョウロを持って歩いているのが見えた。話しかけてみると必死になって花の交配や世話の話をしだした。茶色の家具の事など、これっぽっちも語りはしない。
なるほどそういうことかと得心した僕は、可笑しくなって笑い出してしまった。実にわかりやすい女だ。そっちがそのつもりならと、僕も何事もなかったかのように振る舞ってやることにした。
全てが変わりはじめたように思える。だがこれで終わりではない。僕の復讐…いや「村の掃除」は、まだ始まったばかりなのだ。村の役に立たない穀潰しどもは全て天誅を下してやる。そしてこの村を花いっぱいの村にするのだ。
まだこの村には駆除しなければならない穀潰しの害虫どもが何人かいる。こいつらをなんとかしなければ、この村に花は咲かないのだ。だが急ぐことはない。ゆっくりゆっくりと時間をかけていけばいいのだ。まずは住人達の中にとけ込む所からはじめよう。それからじわりじわりと侵蝕していけばいい。それが僕のスローライフなのだから。
追記:僕がこの日記を書いている屋根裏部屋には誰も入れないようにしなければいけない。表向きに平静を装う為にも、怨念の発散場所としてこの部屋は残しておかなければならない。そして万が一にもないだろうが、この先村の生活に慣れてしまい、今もなお燃えさかる復讐の念を忘れない為にも。

(C)2005 Nintendo / Nintendo DS 『おいでよ どうぶつの森』
<第一部・完>
こういうゲームなんでしたっけ?
(絶対違うんだろうなという確信めいたものは僕にも一応…)