■ オリジナルダーツバレルへの道 その2

―前回までのあらすじ―:第一話はコチラ
「あああああ、握手して下さい!」。全てはそこから始まった。一年前から始めたソフトダーツのハマリ道。その先で出会ったプレイヤー上総昌記さん。DVDを観てフォームを研究し、『One』でフォームを研究し、握手していただいた時の手指の感触からグリップを研究し、そしてひたすら続く鍛錬の日々。Aフライトまでは来たものの、あと一本が二本が足りずに上に上がれない日々。いわばそれは伸び悩みという誰もがぶつかる壁。研究の末に見つけた自分の欠点。それは忌まわしい交通事故の後遺症。ぶっとい指。市販のバレルでは短すぎる、細すぎる。辿り着いた結論、それはオリジナルバレルの製作だった。既存のバレルを研究、形状の確認。見よう見まねで書いた図面。算出された数字。素材選びと比重の計算。そして導き出された結論…「なにこのデブバレル」。このサイズでは高比重タングステン合金では作れない。そもそもタングステンの丸棒など、どこで売っているのかさえ知らない。

この物語は一人のダーツバカが自分の理想のバレルに辿り着くまでを綴った、暴走の記録である。



比重14g/立法程度の金属。これを探すところから材料選びが始まりました。あらゆる検索ワードをグーグル先生に叩き込んではクリックしまくる日々。その過程で得た知識、強度や合金などの仕組み。なるほどダーツがなぜタングステン合金で作られているのかがようやく納得できた頃、一つの結論が出ました。

タングステン高過ぎ。全体的に現在の市場が高騰しているということもあるのでしょうが、そもそも希少金属であるところのタングステンはそうでなくても高いのです。それが故に銅タングステン・銀タングステンなどのタングステン合金も尋常じゃない価格になっていたのです。

なにしろφ10の直径50mmというサイズの銀タングステン・銅タングステンの丸棒材が7000円くらいするというとんでもないことに。他のサイズがいかほどかは明確ではありませんが、ここから削り出したとしたら1本7000円×3本+工賃で、およそ3万円前後になってしまいます。買えるかそんなもん。

ダーツのバレルに使われている金属は大半がニッケルタングステン合金なのですが、銅や銀のタングステン合金でこれなのに、これより安いはずがなかろうという結論に着地したわけです。


それにしてもタングステン合金を使った市販のバレルは、安ければ3000円程度。中には以下のものもあるわけで、なんであんなに安いのか。かなり理解に苦しみながら調査を進めてみたのですが、2ちゃんねるのダーツ板の過去ログに中国の鋼材卸商に見積もりをとったという人の書き込みがありました。

なんでもW90%:Ni7%:Fe3%:8mmDia×L300mm 34本(10Kg) $1,156 運送費別だったとのこと。記号が多くてわからないと思いますので、解説しますと、タングステン90%:ニッケル7%:鉄3%のニッケルタングステン合金製の丸棒材(φ8.0/全長30cm)が34本で1156ドル(約13万5千円)だったというわけです。

まぁなにしろ2ちゃんねるの書き込みなので信憑性の程はわかりませんが、なるほど海外輸入という手があったかと納得してみることにしました(笑)。別に買うわけじゃないですしね(笑)。


で、早速そこから計算してみたんです。中国から10キロのものを送ってもらう際に送料が仮に100ドルかかったとしても、大体34本で15万円。市販バレルは大体5cm未満ですから、1本30cmの丸棒材から最低6本のバレルを作ることが出来ます。

そうなると、34×6本ということになりますから204本。で、ダーツは3本1セットですから68セット出来るわけです。ここではとりあえず加工賃は考えないものとして、15万円÷68セット=2205円って計算になるわけです。

これが、ダーツバレルの中でもっとも多く使われているタングステン80%の合金だともっと安くなると考えられますので、そうすると原価だけで2000円未満ってことも十分に考えられます。さらに一度の輸入量を増やせば原価は下がるわけですから、場合によっては生産原価で1セット1000円なんてことも出来るのかもしれません。

そうなると、ここに量産の加工賃とか人件費とかデザイン工賃だとか中間利益だとかをのっけたりして考えても、なるほど市販されているバレルの価格帯に乗っかってくるなと、納得できる様な気がしないでもありません。


しかしながらあくまでも僕が作るのは個人のレベルですし、量産なんかするあてもありません。中国からの輸入なんてまず不可能。さーてどうすべーかなーと首をひねっていたところ、さらに追い打ちをかける報告がありました。

実はダーツバレルの加工経験がある加工業者さんに、図面モドキを添付して送り、見積もりをお願いしていたのですが、その返答結果が1セット@30000円、2セット@50000円という高額なものだったのです。内訳はそもそもの素材の単価と、加工しにくいタングステン合金を切削するという作業に対する工賃ということでした。

ちなみにこちらではイギリスの職人さんがオリジナルバレルを作ってくれるということなのですが、タングステン90%合金を使って1セット@22000円。それならば、こちらのほうがまだ安いということになるわけです。

さらに見積もりを出してくれた業者さんは、普段は個人は相手にしないとのこと。やはり加工業というのは企業の量産品を作ってナンボですから、個人で3本なんていう割に合わない仕事はしてくれないところが多いんですよね。これもまた障害の一つになったわけです。


さてさて、そんなこんなを考えた結果、材料にタングステン素材を使うのは諦めることにしました。すると、ここまで来て、なんとなく具体的なビジョンが見えてきたんですよね。

・タングステン合金を使ってバレルを作るというのは僕のデザインでは困難。
・タングステン合金の丸棒素材はそもそも個人で入手するのが難しい。
・タングステン合金の切削加工は非常に難しい。加工出来る業者も少ない。

という前提から、まずタングステン合金を使うという発想を消すことにしました。これで随分と幅が拡がります。なぜなら他の金属を素材にするのであれば、切削は比較的容易であり、またタングステンに比べれば非常に安価になるからです。また、実際に作ることになった時の業者さん選びにも幅が出せることになります。

そして上の前提に加えて

・価格を押し下げる。頑張っても20000円以下。
・タングステン以外の素材でなるべく比重が高く、硬度もあって安価なもの。
・個人でも相手にしてくれる加工業者さんを探す。

という事を考えていかなければならないということになったわけです。さぁ大体進むべき方向性が決まってきました。こうなってくると、まずは最初に素材選びをしなければなりません。デザインの最大直径と全長から算出した体積に、次々と比重をかけて重量を出していったのですが、結果的に辿り着いたのは「真鍮」、つまりタングステンの次にメジャーなバレルの素材「ブラス」だったのです。


この頃になるとCADが少しずつ使える様になってきたので、改めて図面を引きはじめました。色々と機能も使える様になってきましたし、なにしろCADは数字が正確です。そこで、改めてモデルにしたいバレルのキザミなどを調べてみようと思ったのですが、その前にバレルの洗浄を行ってみました。

その上でスキャニングしてみたのですが、拡大してみるとなんか前とちょいっと違う様な気がする。スケールを当ててみて測ってみると、どうにも違う。図面に起こしてみると明らかに違うんです。で、それがどんな違いかといいますとですね。


これだけ違ってたんです(笑)。つまり刻みが謎の物体で埋められていたんですよ。まぁその謎の物体の正体は、いわずもがな手垢だったわけですが(笑)。
(長くなったので再度続きます)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.