■ オリジナルダーツバレルへの道 その3

―前回までのあらすじ―:第一話はコチラ第二話はコチラ
「オリジナルのバレルを作ろう」。一年前からハマったダーツの熱が高じた僕は、その一言を胸にハマリ道を歩き始めた。設計、材質選び、比重計算、エトセトラエトセトラ。それら全てが素人の見よう見まね。CADを覚え、文字数計算と金勘定にしか使っていなかった理系頭をフル活用し、円周率・三角関数・体積計算などの記憶も呼び覚ます。しかし肝心である最初のモデルに手垢がついていたため、計算が狂っていたというハプニング。全てをゼロからやりなおし、ようやく完成したデザインと図面。見積もりとの格闘。果たしてオリジナルバレルは完成するのか。

この物語は一人のダーツバカが自分の理想のバレルに辿り着くまでを綴った、暴走の記録である。



タングステンは使えない。僕のオリジナルバレル製作において、この方針は完全に決まりました。そもそもが「入手が難しく、加工が難しく、価格が高い」。そんな三重苦を抱えた素材をわざわざ使う必要はありません。

しかし世間に市販されているダーツバレルの素材は、そのほとんどがタングステン合金製です。何故でしょうか。その理由はいくつかあるのですが、やはり一番はその比重の高さと硬さにあります。純タングステンの比重は19.3。これは金属の中でもかなり高い比重なんです。

同じクラスの比重では金がありますが、高価とはいえども金ほど高くはないタングステンは「小さく・細く」というコンセプトのバレルにはもっとも用いやすいという事が言えるわけですね。また加工しにくいというのは、言い換えれば硬いということでもありますから、「小さく・細く・硬く」という三つの理想を実現することができるわけです。さらにタングステンには変質しにくいという特性もあるわけです。

これは余談ですが、身の回りで重い金属といいますと、釣りなどの錘に使う鉛が連想をされる方も多いと思います。ところが鉛の比重は8.94グラム/立方cmとタングステンの半分以下。大して重くはないのです。まぁタングステンを生活の中で使う事も滅多にないわけですが(笑)。


さて、この「小さく、細く、硬く」というコンセプトですが、これは最近のバレルに求められるデザインコンセプトなんですよね。で、これは一部を除いて僕には不要なモノなんです。太い方がグリップしやすいですし、指が太い分長くないとグリップがしづらくなります。というわけで、僕にとっては「硬い」というコンセプト以外は必要がないのです。

結果として僕の考えるオリジナルバレルのデザインは「太く・長く・硬い」というモノになったわけですが、問題はそれに加えて「ある程度は重い」という条件が加わる事です。何度も書きましたが、ソフトダーツの重量レギュレーションはティップ(ボードにささるところ)、シャフト(羽をつける部分)、フライト(羽)を全て装着した状態で20g以内。

他にもシャフトリングやフライトリング、フライトプロテクターなどのオプションがありますが、いずれにせよ全てを装着して「投げられる状態で20g以内」というのが鉄則になるわけですね。で、大体これらが比較的重いモノを使っても1.5g程度なので、バレルの重量は18.5g程度にしなければならないわけです。


さて、ここで重量の問題にぶつかります。素人の独学ですが、バレルの様な円筒形のモノは丸棒という円柱の素材から切削されて作り出されるモノです。つまりバレルをデザインするときの最大直径と全長に見合った金属丸棒から削り出されるというわけですね。

僕のデザインは最大径直径7.2mmですので、まぁ直径8.0mmの丸棒素材を全長分にカットして使えばいいということになります。前回の刻みに手垢がハマっていて汚くなっていたというハプニングから、デザインを変更したりしたのですが、現在ではこんな感じになっています。


(クリックすると拡大図。素人の見よう見まねですのでお恥ずかしい限りですが…)


さて、それでは早速重量計算してみましょう。まずは丸棒素材ですから円柱の体積を求め、それに比重をかけて重量を算出します。図面の単位はmmなのですが、比重は1立方cmなので、1/10の−3乗=1/1000にしなければいけません。これを忘れると第一回で書いたような1本あたり40キロという地球上の物質ではありえないようなモノが誕生することになってしまいます(笑)。

直径7.2mmですので、半径は3.6mm従って底面積は

3.6×3.6×3.14=40.6944平方mm

ということになります。

これに高さをかければ円柱の高さになりますので

40.6944×51=2075.4144立方mm

が体積になります。まずはこれを立方cmあたりになおさなければいけないので、1000で割ると

2075.4144÷1000=2.0754144立方cm

という形になります。さーここに今度は比重をかければ重量がでてくるわけです。第一話でもやりましたが、純タングステン19.3g/立方cmをかけてみると

2.0754144×19.3=40.05549792g

という高比重なモノになってしまいます(笑)。従ってこれはバツ。冒頭に書いたとおりタングステンは純タンも合金も加工しにくくなおかつ高価であるというところから、使用しないということにしたので、なるべく高比重で、さらに加工しやすく、さりとて硬さはそこそこあり、その上安価であるという素材を探さなくてはいけません。

しかしながら、調べてみてもそんな素材は存在することもなく、そもそも12〜15g/立方cmという比重を持った素材で、そんな安価で加工しやすいというようなモノは存在ないという厳しい現実が目の前に据え置かれただけでした。


前回結果として選んだ素材は、ダーツバレルにタングステンの次に多く使われる素材であるところの「ブラス」。つまり真鍮となったわけです。この真鍮、比重は8.73g/立方cmですので、先ほどの数式にあてはめてみると

2.0754144×8.73=40.05549792g=18.118367712g

という数字が出てきました。市販されているブラスバレルはセットアップ重量16gか18gですので、まぁそんなものかなぁといった数字ではあります。


しかしながら、この重量は元となる丸棒状態での重量。ここにさらにグリップ部分の刻み加工で減る重量や、ネジ穴で減る重量なども考えなければいけません。自分で切削加工を調整できるわけではないので、完成してから「やべー軽すぎた!」というわけにはいかないのです。

もちろん製作過程で誤差は出てくるとしても、図面上で大体の重量を計算しておくことで、そもそものデザインを改めたりすることは可能ですから、これをなんとかしなければいけません。

というわけで、刻みの計算です(笑)。非常に見にくい図面モドキなのでアレですが、キザミの構成は45°/高さ0.5mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台が2セット(前後部分)。

高さ0.2mm/底面直径6.2mmの円柱+50°/高さ0.6mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台+高さ0.5mm/底面直径7.2mmの円柱のセットが17個と、高さ0.2mm/底面直径6.2mmの円柱+50°/高さ0.6mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台のセットが1個という形になっています。

つまり、求めるべき数字としては

(1)45°/高さ0.5mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台
(2)50°/高さ0.6mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台
(3)高さ0.2mm/底面直径6.2mmの円柱
(4)高さ0.5mm/底面直径6.2mmの円柱


の、それぞれの重さを計算して、全体の数量にまとめればいいわけです。


さーややっこしくなってきました。そもそも円錐台の体積なんてものの求め方がわかりません。しかたないので、底面直径の円錐の体積をもとめて、そこから上面直径の円錐の体積を引くという小学生レベルの計算をすることにしました。

んが、ココで問題が発生。円錐の高さがわからないんですよ。いや角度45°の方は二等辺直角三角形ですので、半径と同じになるのはわかってるんでいいんですが、問題は50°の方。下の図でいうXの高さがわからないわけです。



これは困りました。いわゆるアレですな。三角比だとか三角形の定理だとか、サイン・コサイン・タンジェントの世界のモノになるのだと思うのですが、ぶっちゃけまるで覚えていません。伊達に数学五段階評価で2をマークしてないですから


そんなわけで、今度はグーグル先生に三角形の定理だのなんだののキーワードをバシバシと叩き込んで説明を求めて、なんとか数字は出せたのですが、せっかくなので(?)ここで読者の皆様にも算数と数学の中間あたりに位置するこの問題に取り組んでいただきたいと思います(笑)。

なお、挑戦していただく図面は下のモノ。さらに紆余曲折を経て改訂されたバレルになっております。



※単位はmm※
(クリックすると拡大図。素人の見よう見まねですのでお恥ずかしい限りですが…)


この図面のバレルのキザミ加工後の重量を真鍮(比重8.73g/立方cm)で算出してみて下さい。早ければ10分かからないで出来ちゃうと思います。難しいところはこれまで書いてきたのとは違う前方のカット部分とかですかね。でも図面に出ている数字で算出は出来ると思います。

錆び付いた理系脳を呼び覚まして、是非トライしてみてください!回答はコチラからメールにて!
(そして次回へ続く…)

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