■ オリジナルダーツバレルへの道 その4(多分最終話)

―前回までのあらすじ―:第一話はコチラ第二話はコチラ第三話はコチラ
「オリジナルのバレルを作りたい」。無茶な希望を胸にCADを覚え、数学の成績に2をマークした頭をひねってねじってこねくりまわして体積や重量を計算し、町工場に次々と問い合わせを送る日々。目の前に立ちはだかったのは予算という壁と技術に対する己の不理解さと数学能力の低さ。果たして全くの素人がオリジナルバレルを製作することは可能なのだろうか。

この物語は一人のダーツバカが自分の理想のバレルに辿り着くまでを綴った、暴走の記録である。



書くべき情報が足りていませんでした。

うはー問題出しといて問題の方が間違ってるってどうしようもないですな!本当に申し訳ありませんでした!しかしながら、どういうわけか問題をクリアした人多数。ちなみに正解は18.99g(一応小数点第3位以下切り捨て)だったんですけどね。

正解者は、三次元CADで清書して算出した「ぷにぷに」さん、CADで清書して算出した「六甲」さん、「Jimada」さん、「ぽー」さんでした。そうだよね…CAD使わなきゃ算出出来ないよね…情報不足してるもんね…。というわけで、本当に申し訳ありませんでした。うーむ。数学2だった男が余計な事するもんじゃないですな…。そしてぷにぷにさん、仰るとおり僕が書いたのは図面ではなく、あくまでも素人が見様見真似で書いた図面モドキの「絵」です(苦笑)。うむ、職人の世界は厳しいぜ。


というわけで、どんどんと話は進み、タングステンではなくブラス(真鍮)を使ってバレルを作ろうという事になったわけです。初期コンセプトである「前重心で太くて長くて重い」という男らしい実にガマカツチックなデザインをそのまま進めていこうと思ったのですが、またまた問題発生。

確かに削り出しした重量は18.99gと、割と適正範囲なのですが、これにチップとシャフトをつけるためのネジ穴を、ダーツ界でいうところの2BA、業界でいうところのユニファイ規格10−32で空けなければいけません。

これを空けると、その分削れるわけですから軽くなってしまいます。フライトやシャフトのネジの長さは5・6mm程度なのですが、穴を空ける処理をする際はそれよりもう少し深くしなければならないので、大体深さ7mm前後の穴が空くことになります。これを重量換算すると前後で約1.86g程度が少なくなってしまうわけです。

まぁそれでも17.13gですから、ここにフライトやらシャフトやらティップやらをつければおよそ18.63g。半端な数字ではありますが、ソフトダーツの重量レギュレーションは満たしている計算になります。一応形状的にも前重心ですし、重心を計算すると、ちょうどくびれたあたりの所に来るはずです。


ですが、せっかくここまで考えたのですから、なんとかしてセットアップ20gくらいまで持って行ってみたい。そしてそれが可能かどうかを考えてみたい。そんな風に考えた僕は、Pushuboyさんが採用している「バレルに芯材をいれる」という工法を採用することにしました。

読者さんの「白雪さん」や「nemoto」さんからも「外材を加工しやすく軽い形状にして、芯材を比重の高いモノにすれば重量確保は容易」という意見をいただいていましたので、これでやってみようと思い立ったわけです。

しかしながらタングステンは使えないという事を考えて、さまざまアイデアを考えていたところ、白雪さんが「ドリルなどの刃に使われている微粒超硬合金というのは比重が高いし、ドリルの刃として売っているのでさほど高くもない。これを使ってはどうか」とアイデアを出していただいたので、調べてみるとなるほど確かにさほど高くない。

しかしドリルの刃を芯材にそのまま使うとなると、刃の溝分削られているのが全て同じだとは思えないし、加工も大変そう。そこでドリルの刃に使われている材料の丸棒材を探してみることにしました。

結果として最適ではないかと選らんだのは三菱マテリアルのHTi10という合金素材。比重は14.9g/立方cmとなかなかに重く、タングステン合金以外のウエイト素材としてはなかなかに良さそうです。取り扱っている業者さんに問い合わせたところ、φ3.5の長さ330mmで1600円程度。しかも1カット20円で指定サイズに切断して送ってくれるというお話でした。


どうにかこれで芯材は確保しましたので、あとは真鍮の外材を加工してもらえればOKということになります。そこで今度はこれを入れる方法を考えなければいけません。そこで前後のネジ穴は同じ深さにして、前のネジ穴の底面から芯材を入れる穴を空けるという方法で考えを進めてみました。

芯材をはめ込むには、穴を「シマリバメ」と呼ばれるサイズで空けて、外材側を熱して穴を膨張させて芯材をはめ込むという「焼きバメ」という方法がよいのではないかと、白雪さんからアイデアを出して頂きましたが、芯材と外材を別々に用意して自分でそれを合体(?)させるということを考えると「焼きバメ」が僕みたいな素人に出来るかどうかは相当不安です。

それならば「スキマバメ」と呼ばれるサイズで空けて、芯材を接着剤で固定するというような工作的方法がよいのではないかなど、様々考えたりしたわけです。

このような穴の開け方の種類によって差が生じることもあるでしょうが、穴分の重量と穴と同じサイズの芯材の重量を計算した結果、比重差からφ3.5の30mm程度の穴と芯材でセットアップ20gに調整出来ることがわかりました。


さて、この段階まで来たところで、再度図面モドキを引っ張り出して早速真鍮の精密加工をしてもらえるところへ次々と問い合わせをしてみます。頼りはタウンページとグーグル先生。しかしながら、帰ってくる応えの大半は「ウチの設備じゃできない」「個人からの発注は受けていない」という、切ないものばかり。

実に見積もりや製作の可不可を尋ねた業者さんの数は15社。断られた業者さんは12社で、大きく2つわけると、ユニファイ規格10−32というネジ穴のタップが設備としてないので出来ないという業者さんと、個人相手の量産出来ないような小口のモノは受け付けられないという業者さん、といったところでした。

残り3社の内、見積もりを待っているのが2社、そして1社は「1本10000円前後でなら」という、なんとも目ん玉飛び出るストロングスタイルするような見積もりを出してきてくれまして、さすがにこちらからお断りさせていただきました(苦笑)。


といったところで、残り2社の見積もり待ちというのが現在進行形の状況なのですが、正直手詰まりになってしまいました。うーむ、無念。

実は、ここまで四回もかけて、ほぼリアルタイムでオリジナルバレル製作への道を追ってきたのには、そこそこの理由がありました。一つには市販されているバレルに対して疑問があったことです。

流通や中間利益・デザイン料などの事を含めても、市販されているバレルの価格には謎が多いです。タングステン製ならば高ければ2万円代、安ければ3000円程度。ブラス(真鍮)ならば高くても3000円程度、安ければ1000円しません。この振り幅は一体なんなのか、素材を違えることでなにが出てくるのか、そしてそこに使われている素材や技術で、なにがどう変わってその値段になるのか。そんな疑問を解消してみたかったのです。

結果としては素材としての鋼材の仕入れ自体で、そもそもの値段が変わる事、そして小さい金属に精密な加工を施そうとすればするほど時間がかかる上に、タングステンという超硬金属の場合は、さらに時間がかかるということ、それらの条件が折り重なって、価格差が生まれて来るという事がわかりました。まぁ当たり前といえば当たり前ですよね(笑)。

さらにもう一つの理由は、バレルを自作したいと考えた人がいたときに、少しでも役に立つ情報を残したかったということがあります。ダーツが好きでも金属や設計の事などはド素人の僕が、ゼロからはじめてどこまで踏み込めるのかといったところですね。

これは最終的には実際に加工する一歩手前までは辿り着いて手詰まり、という残念な結果になってしまったのですが、可能ならば「一般的に入手出来る素材の種類、単価」「加工はどんなところに頼めばいいのか」「合計して3本1セットあたりいくらくらいで出来るのか」というところまで情報を残したかったのですが、明らかに非現実的なまでの予算オーバーや、出来ないという断りの壁にぶつかってしまっては、これ以上進むことは出来ません。本当に残念です。さすがに旋盤機器を自分で購入して作るわけにもいきませんからねえ(苦笑)。


『Darts製作請負人の詩 -ダーツ製作の日々-』のpushuboyさんからも、実は早い時期から「僕で良ければ作りますよ」とメールをいただいていましたし、僕のダーツ仲間も実際pushuboyさんにバレル製作を依頼しています。しかしながら、まだ僕はpushuboyさんに製作をお願いしていません。

というのも、これまでブログに掲載されているバレルから伺える技術力にしてもノウハウにしても、pushuboyさんにお願いするのが一番の近道だということも勿論わかっているのですが、それでもなお、図面モドキを作ってイメージを伝えて後はpushuboyさんに丸投げというような形でオーダーしたくなかったのです。

一つには商売ではなく趣味でやっておられる方に対してお願いする立場の礼儀として、自分で出来るところまでは、とにかくチャレンジする必要があるだろうという考えからであり、一つには自分自身の好奇心を満たすためでした。


しかし、残念ながら現状では万策尽き果てたような状態です。それでもまだ、2社の見積もりが残っていますし、いくつか問い合わせをしてみようと思う業者さんもありますので、希望は捨てずに、もう少し粘ってみたいと思います。

いやーしかし勉強になりましたよ今回の件は。職人さんも様々で本当に面白いです。mixiの町工場コミュでも凄く親切に応えていただいたりしましたしね。ちなみに問い合わせた中でスマッシュヒットだったのは「個人からの少量発注は受け付けていただけますか?」と電話で問い合わせたところ、作業中でよく聞こえなかったのか、勢いよくぶっきらぼうに「はあ?コジン?ウチはまだ誰も死んでませんから!墓はいりませんよ!(ガチャ)」と返してくれた業者さんですね。



当方、バレルは欲しくても
墓は売っておらんとです。

(「故人」って思ったのかなんなのか。怒るよりも爆笑してしまった(笑))

(C) G-LABO Gengi-DOJO.