■ シェルダンな森 おいでよ どうぶつの森日記 −2−

第0日目
『王子と乞食』という童話がある。詳しい話は忘れてしまったが、瓜二つの乞食の少年と王子がお互いの立場を入れ替えて、互いの生活を体験するというものだ。私がこれからやろうとしていることは、まさにそれなのかもしれない。

株式投資と果樹園の運営、美術品の収集や他村への輸出入事業で一財を築き上げた私が、これから身分を隠し、全く無名の人間として、いずこかの寒村へと入村しようというのだから。

そこでの生活が刺激あるものになるとは限らない。だがそれはそれで構わないのだ。いずこへかと姿を消してしまった友との再会。彼があの村に戻ってくる可能性は限りなく低いであろう今となっては、新しい舞台を設定する他に術はないのだ。

つまりこれは友との再会の為だけに行われる「遠大な寸劇」に過ぎないのだ。いつあえるかはわからない。だが必ず再会出来るものと私、否、僕は信じているのだ。


入村先が決まった。既に子飼いの人間を使って入村手続きは済んだようだ。私によく似た風貌を持つ人間を送り込んだので、あとは入れ替わればいいだけだ。単純で素朴な村の先住民達はまるで気づかないだろう。


新しい村の名前は『ネオくま村』という。友との再会の舞台としてはお誂え向きではないか。



第1日目
深夜のうちにタクシーでネオくま村を訪れ影武者と入れ替わる。服装はといえばBBと書かれた小汚いTシャツ。念のため眼鏡をかけて、しばらくの間は人相を隠すことにした。ダンボールの上にロウソクが燃える。他に調度といえば古びたラジカセと屋根裏のベッドだけだ。

懐かしい。あの村でも私、否、僕はこんな部屋から全てをスタートさせたのだ。今とは違い、新しい生活への期待と希望に胸をふくらませて。だが今の僕の胸にあるのは、かつての希望や期待とは少々趣を異にしている。その感情をなんと呼ぶべきか、今はまだわからない。

住人達が寝静まっている間を狙って、少しだけ散策してみた。指定通り商店や博物館、役場からはほどよく離れた位置に自宅は建てられている。目立ってはいけない。少しずつ、そう、じわりじわりとこの村を「舞台」にすべく侵食していかなければならないのだ。

先住者達の住居は三軒ほどあるようだ。どんな人間が住んでいるかはわからないが、文字通りの寒村といったところだ。秩序無く伸びた樹を見上げるとリンゴが生っているようだ。これもいずれはどうにかしなければなるまい。



第2日目
朝、周辺を散策していると先住者が話しかけてきた。ゾウの様に大きな女だ、軽々しく私…いや、僕の名を「ちゃん」付けで呼ぶ。影武者は一体どんな応対をしてきたのだ。少々不安になったものの、脳天気な性格らしく何も問題はなかった。

傑作なことに、決して愛らしいとは言い難い外見に似合わず、ファッションに凝っているらしい。隣村で見かけたヒョウ柄のシャツが欲しかったのだが持ち合わせがなく買えなかったと嘆いていた。

「その図体でヒョウ柄を着込もうモノなら伸びてキリン柄にでもなるんじゃないか」という台詞が喉まで出かかったが、かろうじて抑えた。

見かけたら教えて欲しいといいつつも、自分で手に入れるよりプレゼントでもらえたらもっと嬉しいなどと媚びた目配せをしてきた。全く女というやつは、どいつもこいつも度し難いものがある。だがそれもいいだろう。欲しいものは手に入れればいいのだ。そうして少しずつ僕の手中に堕ちていけば、いい。


驚いたことに、この村の商店主もタヌキそっくりの風貌をしている。村の規模なりに小さい商店ではあるが、どうやらチェーン店というよりは一族経営の店舗といったところなのだろう。しかし店主の名も同じというのは疑問だ。役職名のようなものなのだろうか。衣料品店にも出向き、在庫を確認したがヒョウ柄の服は置いていなかった。

やむなくオフィスに連絡を入れ、ヒョウ柄の服を届けるように指示を出した。


他の住人とも少しだけ言葉を交わした。あまり一度に事を進めては目立ってしまう。ここは挨拶程度に済ませるべきだろう。一人の住人は興奮した犬のように息の荒い男で、ジョンと名乗った。化石を掘るのが趣味だという、見るからにがさつそうな男だった。

もう一人は正体不明の顔色の悪い男。クワトロと名乗った。少しだけあのカエルヅラの男を思い出す風貌をしているが、性格は大人しく時折意味不明の言葉を並べる。非常にスローモーなしゃべり方が気になったが、害のない人間のようだ。どんなことを趣味にしているのかはわからなかった。



第3日目
村の測量を始めることにする。少しずつ計画的に樹木を植え替えていくのだ。野生の樹木が生えているところは養分の高い土地なのだろう、そこを中心に計画農園を築く。僕のノウハウがあれば、数ヶ月でこの村は生まれ変わるだろう。

とりあえず斧とスコップを購入し、持参した果樹を野生樹の元に植えた。ついでに役場で最初の家のローンを一度に完済する。受付の女が驚いた顔をしていたが、気にすることもなかろう。

タヌ吉の店に花の苗を購入しにいくと、媚びた笑みを浮かべながら改築を勧められた。実に商売人らしい対応だ。金さえ入れば、その出所など気にしない。新入りの住人が金を持っていることになんの不信感も持たない。だがそれは僕にとっては却って好都合だ。

先住者達に対して「力」をアピールするのに家屋の大きさは、わかりやすいアピールとなる。一度に豪邸にするだけの財力もあるが、目立たぬよう少しだけ広くすることにした。


帰路の途中、ゾウのような巨体を揺すりながら女が近づいてきて声をかけてきた。ゾウ女(オパールという名のようだ、宝石と同じ名前に笑いがこみ上げて仕方がない!)は、未だにヒョウ柄の服を欲しがっているようだ。この村にとっては「大金」が動く改築の話を終えたばかりだったので、僕から金の匂いでも嗅ぎつけたのかと思ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。

この女の物欲は、先住者達の間では既に相手にされていない様子だ。そこで新参者である僕なら組み易しと、しつこく話題に上げては強請るような素振りを見せているのだ。要は誰でもいいのだろう。こういう強欲な人間は御しやすい。あのワニ顔の女がそうであったように。

その場は適当に愛想笑いを浮かべて流したが、オパールの眼は僕が彼女にそれを与えるであろう確信に満ちていた。ならば応えてやろう。堕ちるのはお前だから。


帰宅するとオフィスからヒョウ柄の服が届いていた。これでいいのだ。僕は服の入った包みを抱えると、それまで抑えていた笑いの衝動を解放した。ここから僕の新しい生活が始まるのだ。



【要約】
自分のDSとソフトに新しい村を建ててタヌ吉バイトも終了させた後に引っ越し完了。手荷物に入れてきた果実を植えて栽培開始。環境を「サイコー」にする為に測量を開始。ゾウのオパールから「ヒョウ柄の服」をねだられる。他の住人は犬のジョンと、カエルのクワトロ。ジョンは化石掘りが趣味で、クワトロはこの時点での趣味は不明。第一回の住宅ローンを完済し、ヒョウ柄の服を注文し入手。




最近確信を持ってきたんですが
このゲームはこういう遊び方した方が
多分面白いです(笑)。

(ドラマチックにね、うん)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.