■ とある結婚式の話 -2-

というわけで二次会の開始と相成ったわけですが、まずは軽い前説と、入場時のパフォーマンス指導がありました。

これはもう兄貴が「どうしても」とリクエストしていたもので、前々の打ち合わせから出ていたモノなのですが、僕らが長年応援しているプロレス団体DDTの社長兼エースレスラーであるところの高木三四郎選手のテーマ曲で入場したい、というのが彼の希望でした。

Scooterの『FIRE!』という曲のリミックスエディションなのですが、この曲のサビ部分であり、何回か曲中に繰り返される「1・2・3、ファイアー!!」というシャウトのタイミングで、腕を軽く上げて両拳を突き上げるというパフォーマンスがあるので、まずはそれを軽く説明。

加えて、手拍子と「ヘイ!ヘイ!ヘイヘイヘイ!」という声だし、そしてテープ投げと最後の「ファイアー!」に合わせてクラッカーを鳴らしてもらうなど、様々な仕込み説明をしたわけです。


余談ですが、入場曲に同DDTの異色レスラー、男色ディーノ選手のテーマ曲であるところの布袋寅泰さんの「スリル」で入場し、入場途中で男性客を押し倒したりするというアイデアもあったのですが、さすがにアレがナニ過ぎるので却下されたことはいうまでもありません。

そんなわけで「俺の曲をかけろ!ミュージック・スタート!!」のシャウトとともに曲がヒットし、新郎新婦入場。僕の方はタイミングを見計らって、リクエストされていた新郎新婦のコールを、敬愛してやまない古田信幸リングアナ風の絶叫系で送ります(そしてこの瞬間に喉がイカれました)

飛び交うテープにクラッカーの中、参列してくれた友人・同僚達の中を煽りながら入ってくる兄貴と新婦。いやー満面の笑みです。披露宴での胃痛MAXヅラと、見送りでの号泣などまるでなかったかのような、人生最良の瞬間。


んが。彼が心底幸せそうだったのは、この瞬間まででした。


高砂に着いた新郎新婦が、最後の「1・2・3、ファイアー!!」でシメて曲を落とすと、早速新郎新婦の紹介VTRです。スライドに合わせて原稿を読みながら、適当に新郎新婦にチャチャをいれつつ、なにしろ二次会ですので、なるべくライトなノリに持って行きます。

そして樽割りを終えて、乾杯の御発声をいただくことになったわけですが、その人選が既にアウトでした。事前に依頼しておいた、その人物は僕も兄貴も結構古い付き合いになる、ネットで知り合った友人。共にダーツに興じ、キャンプに行き、酒を飲み、プロレス観戦をし、そして…新宿2丁目の飲み屋によく一緒に行く人物です(残念ながら(?)、もちろんノンケです)

僕の方は事前に彼から話を聞いていたのでアレでしたが、「乾杯の前に、少しご挨拶を」と語り始めた彼の目は、もはやイタズラっ子のそれのように。もしくは獲物を目の前にして、あとはトドメを刺すだけ状態になった肉食獣のそれのように光っていました。

うろ覚えなのですが、彼の挨拶を文字興しすると、こんな感じです。

「本日は、新郎の会社の同僚の方々も多くいらっしゃっているとのことですが、新郎はプライベートでも非常に友人達から慕われておりまして、本日は同僚の皆様にも、そして新婦御友人の皆様にも、新郎がどれほど慕われているかを、知っていただきたいと思っております。そこで、今ここにおられる方で、新郎がプライベートでどのように呼ばれているかを、ご存知の方は私の『せーの』の後に、一斉にその名を呼んで下さい。はい、『せーの』!」




「「「「「あぁーーーーーにきぃーーーーーッッ!!」」」」」





終ぅーーーーー了ぉーーーーー。






二次会開始からおよそ10分前後で、会場は「新郎=兄貴」という認識がなされるに至りました。新郎同僚4割、新婦友人・同僚2割、新郎新婦ネット関係の割合4割という、条件的にはネットサイドにアウェイ感が漂う中で、こういう結果を生み出したのは、最早新郎がこれまで積み重ねてきた、様々な意味での「徳」としか言い様がないでしょう。


というわけで、ここから先は兄貴解禁です。談笑中にも各テーブルで「兄貴」という呼び名が当たり前のように出始め、僕も各テーブルを回っていたのですが、兄貴の同僚の皆さんのところにいったときに「兄貴ってどういう意味なんですか?」と問われました(笑)。

もちろん十年来の友人として、そして総合司会として、同僚さんの疑問を解きつつ、新郎たる兄貴をフォローしてあげなければいけません。ですから「ああ、彼は遊び仲間の中で一番年上だったんですよ。面倒見もよかったんで、それで『兄貴』って呼ばれるようになった…わけではないんです。きっと皆さんが期待していらっしゃる通りの意味での『兄貴』だと思いますよ」と、にこやかに応えておきました。いやあ、友情って大事ですよね。


さて、宴もたけなわ。新郎新婦友人からの余興も終わり、二次会にはつきもののビンゴ大会となりました。ここで盛り上げるのは総合司会の役目です。

すっかり「兄貴」も定着してきた中、お約束の「残り一個でビンゴになるところまできたら、大きな声で『リーチ!』、全部揃ったら、もっと大きな声で『ビンゴ!!』と云って下さいねー」という説明の最中のこと。

僕の「いいですかー!シートの列がタテヨコナナメ、残り一個になったらなんていうのー?!」というフリに、侍魂の健ちゃんが「ここぞ!」とばかりに目を、いや顔中をキラキラさせながら「兄貴ーッ!!!!!」と叫んだものだから大変です。

さすがのナイスアドリブな拾いっぷりに、僕も「OK!じゃあそれでいきましょう!!」と云ってしまったものですから、もう手に負えません。その後のビンゴ大会では、リーチになる度に会場の様々なところから「兄貴ー!!」というコールが上がり続け、その度に新郎はのけぞったりつっぷしたりしておりました。いやあ、本当に「徳」のなせる業ですよねえ。


そして事態はそれだけに留まらず、当選した人に一言ずつお祝いを云ってもらったのですが、その度に「兄貴」コールが続発。気がつけば、新郎も既に腹をくくったのか、披露宴の緊張が解けた後で若干飲み過ぎたのか「もうどうでもいーやー」状態の表情で笑っています。新郎の大好きなエロゲーでいえば、人格崩壊系のバッドエンドってやつでしょうか。

まぁその横では、全てを理解している心の広く極めて漢(をとこ)らしい新婦が、けたけたと声をあげて笑っていたわけですけどね(笑)。新婦とは、結婚前より何度も僕も一緒に遊んだりしていたのですが、なるほど兄貴を選んだだけあって、実にキモのすわった女性です(笑)。


ビンゴ大会も終わり、一通り兄貴への陵辱祝福も済んだところで、お開きとなるわけですが、流れ的には最後に新郎新婦からの挨拶があります。ですが、ここで新郎への最後のサプライズを用意しておいたんです。

二次会の始まる直前の出来事、新郎と最後の打ち合わせをしている最中に「で、ここで新婦、新郎の順で挨拶して終わりにするから」という確認のところで、新郎には「まぁ、ここで何か起こるかもしれんけど、空気読むようにね」とだけ告げ、今度は着付けをしている新婦の控え室に向かって説明をしました。

新婦が挨拶をした後、新郎が挨拶をしてしまったら、そのまま客出しの曲がかかってお開きになってしまいます。そこで

1.新婦が挨拶を終えた後、僕が軽くMCをいれる。
2.お約束の新郎新婦のキスを煽る。
3.どうせ兄貴は照れてまごつくだろうから新婦からガーっと、兄貴を押し倒してもらう。
4.さらに、そのまま押さえ込み。キスしっぱなしでOK。
5.そこに友人が飛び込んできて、押し倒した状態でフォール。3カウントを入れる。
6.僕が「*時*分 *時*分!唇固めで新婦**の勝ちでございます!!」とコール。

という流れで行こうと提案したわけです。新婦はもちろん快諾。「ちゃんと倒せる?」と聞くと「ウチでいつもやってるから大丈夫!」無闇に心強い返答。いやはや、やっぱりキモのすわった女性です(笑)。


さて、問題は兄貴が空気を読んで押し倒されてくれるか、ここで無駄にレスラー魂を発揮して2.9くらいでフォールを返さずに、ちゃんとフォール負けてくれるかという事でした。

若干緊張しながら、新郎新婦からの挨拶があることをアナウンスし、新婦からの挨拶を受けた後、新郎がマイクを持つ前に、軽くMCを入れながら「なにか忘れてるんじゃないかなー」と煽ると、皆さん非常に協力的に「キース!」コール、ついで「どこにするのー」と煽ると、見事に「くっちーびる!」コール。完全に会場の空気は出来上がっています。

そして新郎と新婦が、満場のコールの中向き直ると、新婦が突然新郎に襲いかかりました。小外掛けのように足を払う新婦。なされるがままに力なく崩れ落ちる新郎。そして馬乗り状態で、かなり強引なキスをする新婦。手だけでジタバタと力なく抵抗するパニック気味の新郎。

そして乾杯の音頭をとってくれた友人が颯爽と駆け寄って跪くと、マットならぬ絨毯を掌で叩きます。そして空気を読んだ会場からは、彼の掌が床を叩く度に「ワン!」「ツー!!」「スリー!!!」の大合唱。

立ち上がってガッツポーズを取る新婦。その新婦の手をあげて「*時*分 *時*分!唇固めで新婦**の勝ちでございます!!」とリングアナ風にアナウンスする僕。大盛り上がりの会場。未だ立ち上がれず「汚された…」といった風情でスンスン泣いている新郎。

いやー本当に積み重ねた「徳」というのは、こういうところで発揮されるなぁと思った瞬間でした(笑)。それにしても新婦の漢(をとこ)度は素晴らしすぎるというかなんというか。明らかに漢度K点越え。漢(をとこ)というよりは、もはや武士(もののふ)といった風情でした。


その後、立ち上がれない新郎に、会場から何度目かもうわからない「兄貴」コール。若干項垂れながらも、ようやく立ち上がった新郎の挨拶をもって、披露宴二次会はめでたくお開きとなりましたが、その後日談は新郎本人がサイトで書いている通り。結婚披露宴という人生最大の晴れの日に、見事なまでに会社バレをするという、素晴らしい芸を披露してくれました(笑)。

それもこれも、全ては彼の積み重ねてきた「縁」と「徳」の成せる業。実に明るく楽しく激しく、そしてめでたい一日でした。


さて、長々書いてきましたが、これで兄貴披露宴のインサイドレポート(?)も終わりです。ネットを介して出逢った新郎新婦、そしてネットを介して知り合った友人達。「きっかけがネット」なんていうと、未だとやかく云われがちではありますが、手前味噌ながらも、こんな素晴らしい形に着地点を結ぶこともあるのだということを知っていただければ幸いです。

ただし、当日行われた若干の暴走も、全ては新郎新婦の許容と了解のもとに行われたものであったということだけは、誤解のないよう理解していただければ幸いです。


どうにも長くなりました。ここまで読んでいただいた方には、内輪のネタに長々お付き合いいただき御礼申し上げます。



最後に、兄貴。
本当におめでとう。
末永くお幸せに。

(まぁ会社でもうまくやりたまえ(笑))

(C) G-LABO Gengi-DOJO.