■ ポタージュではなくスープが好きだった。

突然ですが料理の話です。

クリームソース、ベシャメルソースとも呼ばれる「ホワイトソース」ですが、これは子どもの頃から僕の大好物の一つでした。

作り方は簡単。ナベを火にかけて、焦がさないようにバターを溶かし、そこに小麦粉を少しずつ加えてよく火を通します。バターと小麦粉は同量くらい。この時決して焦がさないこと。風味が台無しになります。

そして十分に火が通ったところで、牛乳を少しずつ加えて伸ばしていきます。塩胡椒をいれたりして味を調整しつつ、好みのとろみになるまで伸ばせば基本的には出来上がり。牛乳を混ぜる段階で、木ベラではなく泡立て器を使ってしまうのも一つの手です。

美味しく作るコツはダマにならせないことと、火加減を調整すること。コンロのガス調整つまみでやるのが難しい場合は、そのまま鍋ごと持ち上げて火から離して調整するのもありです。コンロの火を見ながら調整している間に焦げたりすることもありますから。また加える牛乳を温めておくのも一つのコツですよね。


そんな風に誰でも簡単に作れるホワイトソースですが、これが実に色々な料理に使えます。少々濃いめに作っておけばグラタン・ドリア・ラザニアなどのソースに使えますし、少しとろみを残すくらいにしておけば、シチューソースに使えます。クリームソーススパゲティにも使えますし、もう少しさらさらに伸ばしてリゾットなんかに使うのもいいんじゃないでしょうか。

ホワイトソースは鶏肉やホウレンソウ、白菜やブロッコリーやキャベツ。鮭やアサリといった魚介類などとの相性が非常にいいソースで、色々な料理に使えます。ほのかなバターの風味が牛乳と結びついて、なめらかで温かく、優しい味が素材を包み込む、そんなソースです。


繰り返しになってしまいますが、僕はこのソースを使った料理が大好きでした。母は料理は上手いは上手いですが「名手」というほどではなく、時々ダマになったホワイトソースが使われることもありましたが、それでもグラタンやドリア、クリームシチューなどの料理が出れば、僕は大喜びしてそれらを平らげたものです。

そんな中でも一番好きだった料理が「コーンスープ」でした。コーンポタージュではなく、コーンスープ。ホワイトソースを作り、牛乳と潰してないコーンの缶詰を開けて、その中のスープごと、少しずつホワイトソースに加えます。

塩胡椒で味を調えて、仕上げにローリエ(乾燥させた月桂樹の葉)を入れて、しばらく煮込めば完成。姉らは嫁に行ってしまいましたが、当時の我が家は5人家族でしたので、両手持ちの中鍋いっぱいにこのスープを作り、食卓に供されたものです。

僕は本当にこのスープが好きで、今思えばなんでそこまで入れあげていたんだろうと思うくらいです。外食に行ったときにコーンスープがあれば、もちろん頼むほどだったのですが、外で飲むコーンスープは、コーンをペースト状にして混ぜた、いわゆるコーンポタージュ。また味が甘すぎるように感じて、いまいち好きになれませんでした。

何分子どもの頃のことですから、家庭で食べた味が好悪の基準になってしまうのは、極めて当たり前ではあるのですが、プロが作ったコーンスープを飲んでガッカリしてしまうくらい、母の作るコーンスープが好きだったんです。


遊び心なのか面倒くさかったのかは定かではなく、そしておそらくは後者だと思うのですが、母はローリエを入れっぱなしにしたままスープ皿に注ぐものですから、盛り切りになった時は、家族の誰かの皿に必ずローリエが侵入しており「葉っぱ入ってるよー」「あら、おめでとう」というやりとりがあったりしたものです。

口に入れる前に気づけばどうということはないのですが、ローリエをうっかり口に入れてしまったときは、若干悲惨なものでした。香りづけの為に使うローリエですが、その葉自体の香りは強烈で、味も苦味のようななんともいえないものでして、それが幸せを噛みしめている最中の口の中いっぱいに突然広がるものですから、もう目を白黒させてしまうような衝撃だったんですよね。あれには本当に困ったもんです。

ですから、そこそこ育って来てからは、コーンスープを食べる前にローリエが自分の皿の中に入っていないか、警戒して探し、あった場合はスープ皿の縁に避けてから、幸せを満喫するようになりました。人間は成長するイキモノですからね(笑)。


盛り切りの場合は一晩でなくなってしまうものですが、少し多めに作ったときは、翌朝の食卓にマグカップに注がれたコーンスープが並びました。ちなみに、作る分量はその時家にあった牛乳の量に因るので、まちまちだったんですよね。

まぁそれはともかく、我が家では日曜の朝食以外は基本的に米食だったのですが、日曜日の朝食はトーストというのが定番でした。ですので、土曜の夜にコーンスープが出ると、日曜の朝はトーストにコーンスープという組み合わせが出来たわけです。

かりかりに焼いたトーストをコーンスープに浸して食べるという朝食は、少年時代の僕にとって休日の幸せを何倍にもしてくれる“口福”でした。さらに、トーストに塗るバターを、熱々のコーンスープに少しだけ浮かべると、白い表面に溶けたバターの黄色が広がり、それを混ぜて飲むコーンスープは、さらなる美味でした。


それほどまでに好きだったコーンスープですから、やはり自分で好きなだけ食べる→自分で作れるようになりたいという発想に結びつくのは意外と早く、小学校中学年になってコンロを自由に使っていいという許可が母から下りた頃に、一番最初に目指した目標地点はホワイトソースを作ることでした。

そんなわけで、ホワイトソースの作り方からはじめて、一連のホワイトソースを使った料理は、未だに僕の得意レパートリーの一つになっています。特にホワイトソースとブルーチーズを使ったクリームソースパスタは、誰に食べさせても結構な評価をもらっています。問題は若干くどい味になることですけども(笑)。


いつの頃からか、我が家の食卓にはコーンスープは上らなくなり、僕も歳を経て若干味覚が変わったのか、以前ほどの情熱をコーンスープに感じることはなくなってしまいました。しかしそれでも、好物の一つであることには変わりはなく、時々無性に食べたくなる一品です。



まぁそんな風に「ホワイトソース大好きー!」とか
やっていたことが、今のクマ化した身体の
一因になっていることは
云うまでもないわけですけどね。

(乳製品+バターにさらに溶かしバターって…)

(C) G-LABO Gengi-DOJO.