じーらぼ!言戯道場 (G-LABO Gengi-DOJO) 管理人:みやもと春九堂(しゅんきゅうどう)


【過去のつぶやき】
 2006年02月の【家元のつぶやき】のバックナンバーです。

 感想など、メール掲示板の方にいただけると、非常に嬉しいです。メールは送信する前に、こちらを御一読下さいませ。
2003年
  06月 07月 08月
09月 10月 11月 12月







2010年
03月 06月 08月


2012年
01月 06月 08月


2014年
02月 08月

2015年
12月


2017年
03月 04月





2006年02月のバックナンバー

ハンバーグ。(2006年02月03日-13:42)
どないせえというのだ。(2006年02月07日-20:42)
秋葉原の惨劇。(2006年02月12日-20:36)
そのうち出てきそうな…。(2006年02月15日-12:46)
ダーツのわかる人しかわからない話です。(2006年02月17日-18:59)
オリジナルダーツバレルへの道 その1(2006年02月23日-14:11)
オリジナルダーツバレルへの道 その2(2006年02月24日-15:53)
オリジナルダーツバレルへの道 その3(2006年02月27日-11:01)
オリジナルダーツバレルへの道 その4(多分最終話)(2006年02月28日-08:21)


ハンバーグ。


子どもの頃からハンバーグが好きだった。

いや、子どもはみんなハンバーグが大好きだろう。よく考えると子どもの苦手なものの代表選手でもあるタマネギが入っているわけで、そう考えると不思議なのだが、それでもハンバーグは日本の子ども達にとっては大好物の筆頭にあがるものだ。

ちなみにアメリカではハンバーグステーキなるものは存在すらあまりしないものらしい。彼らにしてみればハンバーガーのパテだけ食べるというようなものなのだろう。


作り方は簡単。タマネギをおろすかみじん切りにするかして大体丸々一個使う。それをフライパンで炒め塩こしょうで軽く味付け。きつね色になるまで炒めたらボウルに移して粗熱をとる。

挽肉は牛肉と豚肉の合い挽き。もしくは自分であわせてもいいし、どちらか単体でもいい。肉汁が出る配合を考えると豚挽きを少し多めの4:6か3:7っくらいにするといい。これを大体タマネギ一個に対して500g程度かな。まぁ割合は好みなのだけれども、よく混ぜ合わせる。

つなぎには全卵を一個と、極薄切りの食パン一枚分くらいをすりつぶしたパン粉。パン粉の量は、まぁ好みでといったところ。多すぎると味がぼやけてしまうので注意。これもよく混ぜ合わせて粘りがでるまで、よくこねる。塩こしょうで少し味付けをして、ナツメグやらオールスパイスなんかを隠し味で少々。これでタネの完成。


油をしいたフライパンを強火にしてよくよく熱しておいて、形を整えたハンバーグを投入して中火に。この時ハンバーグの上下面の真ん中は少し凹ませておくと焼き上がりが平らになる。縮んでふくらむからね。片面が焼けたらひっくり返して弱火にして蓋をする。肉汁はたっぷり出ているので周りに飛び散りまくらないように、あと蒸し焼きの効果で中までしっかり火を通すための配慮。

焼き上がりは菜箸やくしで焼けた表面をさして、透明な肉汁が出てくればOK。ハンバーグを皿に盛りつけて、今度は手早くソース作りだ。我が家の定番ソースは非常に簡単なモノで、フライパンに残った肉汁と油を使う。油の量が多ければ少しキッチンペーパーに吸わせて、そのまま強火にする。

すぐに汁が沸騰を始めるので、そこにケチャップと中濃ソースを同量程度いれる。隠し味にマスタードを入れてもいい。あとは木べらでひたすら混ぜて一煮立ちさせればOK。肉汁の旨味とスパイスの香りが嬉しいハンバーグソースの出来上がりというわけだ。


これが僕の家に伝わる「おふくろの味」のハンバーグ。いわば宮本家の味でもある。もちろんこれだけじゃなくて、大根おろしにポン酢醤油なんていう和風で食べることもあれば、市販のデミグラスソースでシメジを軽く煮込んでキノコソースにして食べることもある。

でも定番といえばやっぱりこのケチャップ&ソース。だから「ハンバーグ」といえば、僕はあの肉汁の旨味とタマネギの甘みも入った甘酸っぱいソースの匂いを思い出すのだ。


そしてもう一つ。忘れられないハンバーグの味がある。それは何度も名前が出てきているが、池袋北口にあった『Sure』というBARのメニューがそれだ。レストランBARなのでフードも充実している店ではあるのだが、マスターが一人で切り盛りしていることもあって、実質裏メニュー的な存在だった。

だけど何年か前の冬に『Sure』に行ったときのこと、疲れてへとへとでお腹も空いていた僕は、何杯か飲んだ後でマスターに「なにかおなかがふくれるようなものありますか?」と聞き、そこで勧められたのがハンバーグだった。

正直BARとしてのクオリティは存分に認めていたものの、BARでハンバーグだなんて聞いたことがない。インスタントとか出てくるんじゃないだろうなぁと思った僕の前に差し出されたのは、熱々に焼けた鉄板の上に載せられたハンバーグと温野菜。そしてジュウジュウと音を立てて、最高に食欲を刺激する香りを放つ和風のソースだった。

一口食べて僕はすっかりやられてしまった。なんて美味いんだろうと呆然としてしまったくらいだ。たっぷり肉汁の出るハンバーグにぴったりと合うソース。その味は醤油ベースの和風のおろしソースではあったけれど、実に様々な要素が絡み合った複雑な味で、僕は夢中になって食べた。

それを見た仲間達は次々とオーダーをしようとしたが、今日はもう一人分しかないんですよとマスターが苦笑すると皆が一口一口と求めはじめて、僕の皿はあっという間に空になってしまった。

それからというもの僕の周りでは『Sure』のハンバーグはちょっとしたブームになった。マスターが一人で切り盛りしているわけで、料理に入ってしまうとバーテンダーとしての役目が果たせなくなる。それに香りの強いソースだったから、他のお客さんに迷惑になるかもしれない。

そんなことを考えて開店直後に飛び込んで、開口一番でギネスとハンバーグをオーダーしてみたり、終電も無くなって飲み明かし体勢に入り、他にお客さんもいなくなったところで、おそるおそるとオーダーをしてみたりということを繰り返したりしていた。


そんな『Sure』も残念な事に12月末日で閉店となってしまった。赤字がかさんで潰れたとかそういうわけではなく、マスター自身が足かけ15年のバーテンダーとしての人生を卒業するという理由だったから、止めようもなかった。

随分と仲良くしてくれるようになってはいたけれど、閉店するという話になったときに、マスターが自分の家庭の事や仕事の事などを話すのを初めて聞いた僕は、自分の舞台であるBARで私人としての顔を見せたマスターの固い覚悟に何も云えなくなってしまった。

最終日までの何日間は、それこそ『Sure』に通い続けた。飲んでは想い出を語り、飲んではこれからを語り、最終日にはフードは出せないという事だったので、最後にあのハンバーグを食べることも出来た。その時の事だ、僕はおそるおそるマスターにたずねてみた「マスター、このソースの作り方教えてくれませんか?」と。

実はそれまでに何度も色々な素材で試してみたのだが「似た味」にはなっても「同じ味」にはならなかったのだ。素人ながら料理の腕にはそこそこ自信があったし、味をコピーするのは得意なはずだったのだが、このソースは再現出来なかったのだ。

しかし本来なら相手が素人であれ、オリジナルのレシピを教えるなんて事は出来ないだろうし、するべきではない。僕は「味」は「盗む」べきものだと思っているから、こんなことを聞くのは泥棒が正面切って家に入るようなものだ。聞かれた方も教えるわけにはいかないだろうし、かといって相手は客だからと気まずくもなるだろう。

でもこの店はもう無くなってしまう。大好きだったハンバーグが食べられなくなってしまう。だからせめてと思い、思い切って聞いてみることにしたのだ。そんな事情も話すと、マスターは快くレシピを教えてくれた。それは目から鱗の落ちるような配合と工夫で、なるほどそれであの味になるのかと納得した。同時にマスターがどれだけ本気で研究して出してくれていたものなのかも。


最終日。僕らは最後の最後まで店に残り続け、マスターと記念写真をとったり、最後の挨拶をしたりしながら存分に楽しんだ。ある友人はずっと気に入って飲み続けていた酒のボトルを、ある友人はグラスを、ある友人はソムリエエプロンを。それはまるで『Sure』から、形見分けをしてもらっているかのような風景だった。みんなこの場所とマスターが大好きだった。

僕は僕で、最初に出会った目標とすべきダーツプレイヤーであったマスターと最後に勝負をしてもらい、マスターが使っていたオリジナルのバレルをプレゼントしてもらった。そしてもう一つがハンバーグのレシピ。

フードメニューに記載されていた銘は『シュール風ハンバーグ』。今はもうない、僕らの大好きだった場所の名を冠したこのレシピを、僕は一生大事にしていこうと思っている。


[ 2006年02月03日-13:42 ]  



どないせえというのだ。


仕事の取材で何故か秋葉原のメイド喫茶に行くことになりました。思い返せば小学四年生のおりにファミコンソフトの転売という既に何か間違っているところからスタートした秋葉通い生活。

オーディオの修理のために部品街を彷徨いた中学時代。最盛期の高校時代にはPC-9801VMという鈍器のようなPCを数台手持ちで帰った事もありました。大学時代には自作機全盛で秋葉のパーツ相場に誰よりも詳しくなり、値引き交渉の鬼にもなったものです。

そしてそれから数年。秋葉原は、すっかり僕の知らない街になってしまいました。職人の街であったはずの街は、すっかりオタクの街となり、街は萌えに彩られ…全ては過去の景色となってしまったのです。

そしてその象徴であるかのようなメイド喫茶へ、なぜか仕事で行くという不思議な巡り合わせ。これもまた何か大きな運命の流れなのかもしれません。いや、そんな大げさなもんでもないでしょうけど。


問題なのは当日の服装。誌面に写真で登場することになることもあって、編集さんから服装指定が来ました。

「なんかこう、これからパーティーに行くんだー的な格好でお願いします」

どんな格好ですかそれ。しかも規格外である僕の体型には編集部側では衣装を用意できないとのこと。つまり自前で揃えるか手持ちの服から選ばなければならないわけです。えーと、これは仕事という名の何かの罰ゲームでしょうか。


当日の様子はそのうち(多分来月の頭には)雑誌に載ることになると思いますが、どうすればよいのだと本当に途方にくれてまくってしまっています。

パーティーに行く格好ってどんなもんなんでしょうか。スーツでいいんでしょうか。アスコットタイでも巻けばいいんでしょうか。中はドレスシャツがいいんでしょうか。それらのものをまるで持っていない僕はどうすればいいんでしょうか。

そもそもそんな格好でメイド喫茶に行って、僕はどうすればいいんでしょうか。



いやそれ以前にバイク雑誌の企画で
なんでメイド喫茶なんでしょうか。



誰か教えて下さい…。

(特にパーティーに行くような格好ってのを…)



[ 2006年02月07日-20:42 ]  



秋葉原の惨劇。


メイド喫茶を初体験してきました。

というわけで朝6時起きでメイド喫茶なるものに行ってきました。僕にとって「メイド」といえばメイド喫茶などというモノが出来る遙か昔に、主催イベントをお手伝いしてくれたお嬢様方がメイド服を着用してくれていたということもあって、割と身近なもの。そしてその縁でメイド服を着用した女の子というものに見慣れている事もあって「物珍しい」とか、そういうものではなかったんですよね。

しかしながら世は萌え産業絶頂期。メイド喫茶というものも、ある程度以上の地位を確立しており、競争も生まれてきました。そこそこ見栄えのする女の子にメイド服を着せて、適当に「ご主人様ぁー」とか云わせておきゃいいというような店舗は淘汰されているような状態です。

つまり如何にメイドらしいメイドであるかという「メイドクオリティ」が要求されるようになって来ているわけです。つまり人気店であればあるほど、そこに勤務するメイドさん達はいわば「プロのメイド」になっているわけですよ。もちろんここでいう「メイド」は、いわゆるリアルなメイド(家政婦)ではなく、萌え世界に登場するようなメイドです。

喩えるならばそれは某ネズミーリゾートのキャストの様な存在とでもいえばいいでしょうか。ネズミーキャストがお客さんの夢を壊さず、夢を演出し、夢を提供するのと同様に、メイド喫茶のメイドさん達も、ご主人様やお嬢様の夢(妄想)を壊さず、夢(妄想)を演出し、夢(妄想)を提供しなければならないわけですね。

そして、そんなメイドクオリティを高いところに保っているメイド喫茶のメイドといえば、有名店ではほとんどアイドル状態とのこと。さらにアイドルメイドといえばメイドユニットとしてメジャーデビューしちゃっている人達もいるわけですよ。メイド+アイドルで「メイドル」なんていう造語も出来ちゃっているくらいですから、いやもーそりゃーすごいことになっちゃっているわけです。これは「メイド?別段珍しくもないね」なんていう考えは改めなければなければなりません。


そんな風に考えを改めた中、今回僕らが取材に行ったのは、その現役メイドルユニット「完全メイド宣言」の皆さんが勤務…いや、ここでは敢えて「ご奉仕」といいましょうか、えーと、ご、ご、ご奉仕?する?メイド喫茶、「@ほぉ〜むcafe」だったんですよ。いわばメイドル達の本拠地であり総本山。そんなところに取材にいっちゃったわけですよ。実際行ってみての感想ですが、いや考え方改めておいてよかったですよホントに。なかなか大したもんでした。


それにしても、一体なんでメイド喫茶に行くことになったのかは、取材が終わった今でもよくわかっていないのですが(コラ)、まぁとにもかくにも行ってきてしまったわけで、あとは企画自体が諸事情でボツになったりしなければ、詳細記事が来月発売の『ミスターバイク』に掲載される予定です。

しっかし、いやーとにかく本当に大変な取材でした。なにが大変だったかって、主に自分の格好がなんですけどね。もーねー「パーティーに行くぞー的な格好で」とか云われても困っちゃうわけですよ。読者さん達は「春子で!」とかいうし。あのね、ハロウィンでもないのにそんな格好で出歩いたら普通に職務質問→任意同行→ダイナマイト留置のトリプルコンボが発生しちゃいますから。

んで、散々考えた末に選んだのがカジュアル気味なスーツにカジュアルシャツにアスコットスカーフという出で立ち。まぁ普通のスーツよりゃ絵的にマシかなーと思ったんですけど、甘かったですね。本当に甘かった。

なにが甘かったって、世間的には一般人でアスコットスカーフしている人なんて、あんまりいないんですよ。むしろ全然いないと云っても過言ではないくらいです。ぶっちゃけ蝶ネクタイの方がまだいそうな感じですよ。つまり、そんな格好で出歩いたら、それだけで世間様から浮き上がっちゃうわけですよ。

さらに一応撮影前の身だしなみと思い立って床屋に出向き「いつも通りに」とお願いしたら、ものの見事にモヒられるというオプションがついちゃったもんだから、なおさら大変です。浮き上がりステータスにプラス修正がついちゃったわけです。

そもそもが皆さんご存じの通り、僕は「巨」の文字が眩いほどの光を放って自己主張をするほどのデブです。クマです。それだけでも世間様からは浮き上がっているわけです。

つまり総合すると、アスコットスカーフタイを着けた半端なモヒカン頭の巨クマが銀縁のマルメガネをかけて彷徨いている――というわけです。もはや世間様からK点越えで浮き上がって、遙か第七銀河の彼方に到達しちゃってるような風体なわけですよ。

我が事ながら、身支度を終えて鏡に自分を映したときに度肝を抜かれましたね。鏡に映った自分を見て「うん」とか「よし」とか「絶対キレイになってやる」とか云う人はいても、心の底から「うわぁ…」って云う人は中々いないと思いますよ。


しかしながら遙か秋葉原までは距離もありますので、早急に出なければならないわけで、苦肉の策でマフラーを巻いてアスコットスカーフタイを着けた襟元を隠し、厚手のコートを着込んで家を飛び出ちゃったんですけどね。

もうね、バスの中も電車の中も「襟元出てねえだろうな」とか気になっちゃって、気が気じゃないわけですよ。頻繁にマフラーを抑えたりしちゃって「風邪?寒いの?」的な挙動不審行動を繰り返したりして、もう「やだ、なにあのモヒデブ。キモーい」状態ですよ。

なんでたかだかメイド喫茶に取材に行くだけで、こんな辛い思いをしなけりゃならんのだと、原因と理由を模索しつつ過去を振り返ったりしていたんですが、割と全て自業自得なのだということに気づいただけでして、なんというか過去の回想をするはずがうっかり走馬燈見ちゃったような気分にさえなりましたね。


まぁ撮影ではもちろん開き直ってバシャバシャとカメラマンさんに醜態を撮られて来たわけなんですが、問題は店内ではなく秋葉原の路上での撮影でして。

もうね、日曜日なんで歩行者天国ですし、春売りの雑誌ですから撮影のためにはコート着てちゃまずいわけでして、さらに日曜日の秋葉原にスーツの人なんか本当に数えるほどしかいないんです。

つまり歩行者天国のど真ん中で、世間様からK点越えの浮きまくりなアスコットスカーフタイ剥き出しスタイルでバシャバシャと撮影されまくったわけですよ。そりゃあもう注目されまくりですよ。ぶっちゃけ指さされて「あれ何の撮影だろ?」とか云われてましたからねコンチクショウ。いやーもう本当に色々な意味で大変でした。



なんというか愛らしいメイドさん達に
癒されに行くはずだったのに
逆にトラウマ作って帰ってきた感でいっぱいです。

(一応雑誌の発売したら告知します…でも見て欲しいような見て欲しくないような…)



[ 2006年02月12日-20:36 ]  



そのうち出てきそうな…。


メイド喫茶に行った後遺症をまだ引きずっています。

最近はキャバクラにもダーツライブが置いてあるわけで、求人誌関係のお仕事をしていると、いわゆるフロアレディ求人に「ダーツやスポーツ観戦を一緒に楽しんじゃおう♪会話を楽しんだり、映画やスポーツ観戦、ダーツをして盛り上がるお店★接客もカウンター越しだから安心して働けちゃいます★」なんていうのもあったりするわけですよ。

んで、僕の知る限りダーツバーでも女性スタッフさんとか目当てで野郎が通っちゃうようなお店も多いわけで(無論プレイヤーとしての腕もあるわけだが)、実質そういう産業的であるという側面を持った…というかそれを強調しているお店さんもあったりするわけですよ。そりゃあね、可愛い女の子に「ナイストーン!」とかいってもらえりゃ嬉しいですよねぇ。

しかしながらアレですよ。メイド喫茶のゲームってのが、これがテーブルゲームやらカードゲームやら萌えじゃんけんやらの極めてかったるいものばかり。コミュニケーション以前の問題としてなんか面白くないし、区切りも悪いというのが実質なところ。

そこでこんなのどうだって感じで、メイドダーツバーの登場ですよ。むしろメイド喫茶にダーツおくだけでいいくらいの勢い。メイドさんがダーツ構えて投げるわけですよ。


「ご主人様の番ですよぉー」
「ご主人様頑張ってー!」
「ご主人様ナイストンですー!」
「きゃーご主人様ナイスハットですー!」
「ご主人様すごーい!ホワイトホースだなんて、白馬の王子様だー!」



うん、キモイ。よおし、死にたくなってきたぞーっと。ええと、そのですね三十路のデブ、略してミソデブが真剣になってこんな台詞を書いてる現状には目をつぶって下さいね。本人も相当キツいと自覚しながら書いていますので。

えーと気を取り直して続けます。ダーツって割と声かけるのが必須的なスポーツだったりするわけで、コミュニケーションも出来るし、勝っても負けても、さほど1ゲームあたりの拘束も長くはない。加えて思うさまメイドさん達の立ち姿も見ることが出来るわけで、ある意味ありなんじゃあなかろうかと。プレイ代もとれるわけで、そこそこ上がりも出るだろうし。

勝ったらチェキやらプリクラやらを一緒に撮れるとか、そういうオプションがあってもいいんじゃないかと思うわけですよ。またカウントアップでハイスコア突破したら、「ご主人様、おめでとうございまーす!」とメイドさん勢揃いで拍手とか、そういうのもアリでしょう。

萌えに対する情熱は、割とあり得ないことも起こしうるので、もし仮に1000点越えや9ダーツ/パーフェクトゲームなどの難易度で「メイドさんとほっぺちゅーでプリクラ」とかいうようなサービスあったら、ABOYな連中は夢中になって練習すると思うよ。そんなメイドさんサービス目当てで1000点超えプレイヤーも出てくるようになるかもしれません。秋葉系トッププレイヤーの登場ですよ。でも、ほっぺちゅーの時点で営業には別の届け出が必要になりそうですが(笑)。


お店にはバレル持って萌えポーズさせたバストショット写真の下にライブレーティングとCUハイスコア、使用バレル・出勤日(?)なんかを書いたモノを店内に展示しておいて指名制でプレイ出来るようにしたり、勝ったらスタンプとかで何勝かしたら上ランクのメイドさんとプレイできるようにしたりすれば、もっと盛り上がるでしょうし、通いのモチベーションにも繋がるでしょう。

またダーツプレイヤーの間では「対戦お願いします」っていうのが普通ですが、メイド産業というサービス形態のなかで「お願いします」ってのもどうかと思いますので、そこも一工夫。対戦して欲しいメイドさんに両替してもらうと「お待たせいたしましたご主人様ぁー。今日はどんなゲームをなさいますか?」と、あくまでもメイドさんから対戦のきっかけをつくってもらうと、そんなのもアリなんじゃないかと思うわけです。


さらに「はい、ご主人様!最初は私がお相手いたしますね!まだまだ下手なので…ご主人様からアドバイスいただけたら嬉しいです☆」的なメイドさんから始まって、上にはSAフライトメイドがいるわけですよ。月例イベントとかも「○○ちゃんBフライト昇格おめでとうパーティー」とかをやれば増えるわけですしね。

ダーツ界では定番の「負けたらテキーラマッチ」ではなく、「だだ甘紅茶マッチ」にするだとか、「ご主人様ー私が勝ったらご褒美くださいね!」とかそういうのもありなんじゃないかと。いや、それはありなのかな。でもテキーラマッチよりゃよっぽど健全というか、やりやすいしやらせやすいですよね。

そのうち9darts.tvにも「最強メイド決定戦」とかいう動画がアップされたりとかするかもしれません。ギャラリーABOYばっかで、なんかもう声優アイドルのイベントみたいなかけ声がかかっちゃったりするわけですよ。


とまぁこんな感じで色々考えてみたわけですが、まだまだ開拓出来る可能性のあるダーツバーとメイド喫茶というアミューズメント産業。この二つをハイブリッドさせたアミューズメント飲食というのはアリといえばアリなんじゃなかろうかなぁ、なんて考えたというお話でした。



まぁ完成予想図を具体的に想像したら
どう見てもコスプレキャバなわけですが。

(侮れないことにメイド+ダーツはあるんですよね、既に…。まぁまだ専門特化してるとこはないですが)



[ 2006年02月15日-12:46 ]  



ダーツのわかる人しかわからない話です。


最近オリジナルバレルが欲しくて仕方ないんです。デザインでいうと、長め・太めのストレートバレルで後方に細かいリング刻み、チップ側とシャフト側のネジ穴の深さ調整で、やや前重心気味、というのが理想です。

ちなみにこれが実現すると、以前紹介した、僕が尊敬してやまないプレイヤー上総昌記さんがMJトーナメントで使っていたオリジナルモデルになりそうな気がするんですけどね(笑)。でも本当にいまそんなバレルが欲しくて仕方ないんですよねー。ちなみに上総さんバレルは市販はされていないそうです。


まぁ、もう少し細かく考えると、トリニティのSaturn 20g、もしくはトリプルエイトのNINJAの太さと重心バランス・重量とデザインを基調に、長さと後ろ半分の刻みはunicornのcc885:ボブ・アンダーソンモデルを逆付けしたようなイメージといった感じでしょうか。

Saturn 20gはバレル長:43mmのバレル最大径:7.2mmなんですが、長さが短く刻みがちょっと好みじゃない…。ボブ・アンダーソンはバレル長:47.5mmのバレル最大径:6.4mmなので、長さと刻みはいいんですが、重心バランスと太さがちょっと気に入らない…。とまぁそんな感じで悩んでいるのです。


しかしながらたかだかAフライト如きがオリジナルバレルというのもどうかと思いますし、それ以前に作ってもらえる職人さんとかを知らないという致命的なことがあるんですけどね(笑)。

と、そんなとりとめもない事を考えていたら、いるもんですね、ネットの世界はすごいわ本当に。いらっしゃいましたよ、ダーツのバレルを個人で製作されている方が。ありましたよ、その方のブログが(笑)。

というわけで、ご紹介。PUSHBOYさんのブログ『Darts製作請負人の詩 -ダーツ製作の日々- 』です。いやなんというか、すごいですよ。独自の設計理論と製作工程で、非常にユニークかつ「投げてみてえー!」というようなバレルが多数掲載されています。

いつか、僕もPUSHBOYさんにバレルを作っていただけるようなプレイヤーになりたいなーなどと思いつつ、カタログや通販サイトを見ては「これはどうかなー」なんて考えてため息をついています。

うーん…いくらくらいで作ってもらえるのかなぁ…。



まぁ最低限AAフライトにいってから
自作とかは考えた方がいいんじゃねえかと
自覚はしているんですけどね!!

(最近外で投げていないから、腕落ちまくってるしなー…)



[ 2006年02月17日-18:59 ]  



オリジナルダーツバレルへの道 その1


もうほとんど夏休みの工作の気分です。

今思えば、きっかけは昨夏に行われた『MJトーナメント2005』のDVDを観たことでした。ハードダーツの世界では知らない者のいない世界チャンピオンに12回も輝いた男フィル・テイラー。

ハードとは違うソフトダーツでの事とはいえ、ジョン・ロウ、ジョン・パートといった世界のトッププロを下して決勝に進み、そしてフィル・テイラーと素晴らしい試合をした選手がいたんです。

それが上総昌記さんでした。上総さんのスゴイところは、彼は普通のサラリーマンであるということです。無論国内のハードダーツの世界では素晴らしい成績を残しているプレイヤーの一人ではありますが、ショップのスタッフでもなく、どこぞのメーカーの契約選手でもなく、趣味でダーツをやっている人が世界チャンピオンと好試合を演じてみせる。前にも書きましたが、これは僕にとっては本当に凄くカッコイイと思えることだったんです。


そして僕は上総さんに深い憧れを持つようになりました。そして迎えた先月半ばのビッグトーナメント『One』。グランドマスターシングルスとAAAダブルスにエントリーしていた上総さんを会場でお見かけした僕は、「あああああああの、MJトーナメントのDVD何度も何度も観ました!よろしければ握手していただけませんか!?」と、もの凄い緊張しながら上総さんに話しかけ、握手をしていただいたんです。いやーいい人でした。

DVDで散々見尽くした上総さんのフォーム、そして『One』で直に見た上総さんのフォーム。握手してもらったときの手の大きさや指の長さや感触、それら全てを何度も何度も反芻して、その理論とスタイルを客観的に理解しよう努め、そして今も精進しています。

まずは入る入らないは別として、フォームを完全コピー出来る様に何度も何度も練習し、そこから自分のやりやすい様に少しずつ変化を加えていき、自分のどこがよくてどこがダメなのかを調べては研究を進めていきました。


それまで使っていたバレルも一旦全てしまい、クセのないストレートバレルでバレルの力に頼らないストロークが出来る様に練習を重ねました。その結果としてわかってきたことがいくつかあったのですが、その一つに自分の「人差し指と親指で挟む力の」の弱さがあったんです。

掌全体を使った握力は相応にあるのですが、親指の付け根を交通事故と事故で別の時期に骨折した経験のある僕は、どうにもこの挟む力が弱く、カタいペットボトルのキャップなどははずせないこともあるくらいなんですよね。


僕の理想のストロークはテイクバックのトップ(引ききった状態)で手首をしっかり返してダーツが天井方向に上向くところから一気に遠心力と前進ベクトルを与えて射出するというやり方なのですが、このテイクバックのトップが問題でして、人体の構造から肘を曲げながら手首を反らせるというのは、実は非常に無理のある姿勢なんです。

詳細は省きますが簡単にいうと肘の裏の筋肉と前腕は繋がっていて、なおかつ手首の方まで繋がっていると考えて下さい。つまりフルレンジで肘を曲げて手首を反らせると、そこのスジが構造的に完全にピンピンになってしまうんですよね。

なおかつ親指と人差し指の間で挟むという動作は、手首が真っ直ぐか曲げた側の方で強く発揮されるのですが、反面手首を反らせるとそこの挟みが弱くなってしまうんですよね。つまり、肘を曲げると手首が引っ張られて前に曲がりたがるのに、それを無理矢理反り返らせる=人差し指と親指の挟みが弱くなるということなんです。

さらに、そこに加えて僕はそこの筋肉が弱っているので、テイクバックのトップでグリップしたダーツが安定感をなくしてしまうことが、しばしばあるということがわかったんです。


さてはて、これはどうにかしなければならないだろうと、さまざまなバレルを借りたり買ったりして色々試してみていたのですが、まず指が太いのでグリップゾーンが大きいので、長いバレルの方が安定して持てるということが一点、そしてもう一つは太さのあるバレルならば、テイクバックのトップで「挟み」の力が弱くなっても安定感がなくならないということがわかったんです。

さらに追求していくとグリップするところがR(曲線)を持っていると、ただでさえ「挟み」が弱くなったときに、ダーツを左右から支える力が弱まって均等でなくなってしまうのに、前に出しながらインパクトの瞬間に力を伝えようとする間に左右からの圧力に前後の微妙なズレが生じてしまうということもわかったんです。

当然そんなグリップでリリースしてしまえば、ダーツはブレながら飛んでいくか、ひどければ大暴投になってしまいます。となるとグリップ位置はストレートがよく、なおかつ十分な長さをとるためには、全体もストレート構造が望ましいということになるわけなんですよ。


さて、ここからがまた大変でした(笑)。とりあえず長いバレル(全長50.5mm)を使ってみたのですが、ソフトダーツではダーツの重さに重量制限があるので、長くなれば細くなるんですよね。同じ重さ・同じ量の粘土を使って円筒を作った場合、長くすれば細く、短ければ太くなるというのと同じものです。

じゃあ今度は色々な太さを試してみようと思ったのですが、同じ重量で太いストレートバレルとなるとこれがなかなかない。かといって比重の軽い真鍮製のブラスバレルを握ってみると今度は太すぎる。ようやく見つけたのが、TrinityのSaturn20g(直径7.2mm)だったのですが、太さはジャストサイズながら長さが4.3mmと短い…。他にも全長47.5mm 直径6.4mmのunicorn CC885:ボブ・アンダーソン20gなども試してみたのですが、イマイチしっくりこない。

とまぁ、こんな風に散々悩んだ結果「だったら作っちまえばいいじゃん」という非常に短絡的な結論に落ち着いたわけです。しっかし、この安易な考えが、現在の「夏休みの自由研究に軽い気持ちで選んだらすっかりドツボにハマっちゃったよ、うわーん」的な状態に陥る結果になったのですが(笑)。


最初に用意した長いストレートバレル、MEDALISTソフトダーツ全米第2位(1位は副社長の人です(笑))のスコット・バーネット選手モデルは、長さがバッチリで細さの割りには刻みとの相性がよく、現在のメインバレルになっています。そしてそこにTrinity Saturn20gの太さがあればいい。

これまでの研究の結果から非常に単純に考えれば、これがベストチョイスなはずです。CADは使えないのでイラストレーターを使って、早速これを図面モドキに起こしてみることにしました。

まずはバレルをスキャナーに静置して1200dpiで取り込むという超豪快な方法で精密な静止画を撮影。拡大しまくって刻みのピッチなどを確認するところから始めました。そしてそれを元にイラストレーターでカチカチカチカチとやって作ったのがコレです。




ところがこれはもうまるで設計図としてはダメダメでして、このいい加減な図面から数字を叩き出して色々計算してみたのですが、そもそも元の図面がいい加減ですから、どうにもならなくなってしまったわけですよ(笑)。

そこでCADソフトを手に入れて、今度はまず一からCADの使い方を勉強し始めて、必死になってなるべく精細な図面を作れる様に努力し始めたんです。しっかしこれが非常に難解極まりなく、そうかといって友人が「教えようか?」と云ってくれてるのを「教えて君になるのはイヤじゃ!」と拒絶したりしつつ、参考サイトやらなんやらを調べて、血の涙を流しながら、ちまちまと進めること数日。ようやく今度は見られる様な図面が出来上がったんです。


しかし、ここからが本当の地獄のハマリ道でした。今度はエクセルを立ち上げてデザインした設計したバレルの重量を求めてみようと思ったんですが、まず円柱の体積の求め方を忘れている(笑)。さすが文系に進路を取り、バリバリの文系職についてしまっただけのことはあります。算数レベルの事を忘れているんですから。

ちなみにココまで読んで「…なんだっけ?」と思っている方の為に書いておきますと「半径×半径×円周率3.14×高さ」でございます(笑)。意外と覚えていないもんなんですよこれが(笑)。なんやら最近は円周率は「約3」で済ませているそうですが、出来うる限り精密な金属加工をしようとしているのに、そんな事は許されません(笑)。

そんなこんなでようやく出た体積。しかしこの時点で大きな問題が起こったんです。僕の作ろうとしているバレルは全長50.5mmの直径7.2mm、つまり体積は2055.0672立方mmになるんですが、純タングステンの比重19.3g/立方cmで重量を出すと、39662.8gというとんでもない数字が出てきてしまったんです。

「おいおいバレル単体で約40キロって!」と驚いたんですが、さすがにこれは気づきましたね(笑)。比重は1立方cmあたりの重量なので、体積を求めているのが立方mmだから、そのまま体積に比重をかけちゃいけなかったんです。立方ですから3乗倍ですからねー。いやー忘れてるってのはおっかないもんです(笑)。

そういうわけで出した体積を10の3乗倍、つまり1/1000にした結果、出た重量が39.7g。ソフトダーツのレギュレーションはフライト・シャフト・ティップも合わせて20g以内ですから、そこから考えたらとんでもない重さです。約2倍ですから。こんなもん投げたらボードがぶっ壊れて修理代10万コース確定です。


「えーーーーーっと……これは一体…」と、しばし頭を悩ませたのですが、考えてみたら同じ直径サイズのTrinity Saturn20gはネジ穴を前後にほとんど貫通させるような中空洞仕様じゃないかと気づき、今度は慌ててネジ穴の肉抜き重量をとることを考えました。

しかしここでまた困りました。ダーツプレイヤーとしてダーツのネジ穴の規格は「2BA」と呼ばれるものだとは知っているのですが、どこの資料を見てもネジ穴の直径なんかは書いてありません。

そこでまた調べまくった結果、ユニファイ規格の「10-32」と呼ばれるネジサイズだということがわかったんです。しかし今度は名前がわかったものの、実際のサイズがわからない。こうやってどんどん深みにハマっていった結果、ようやくそのサイズがわかりました。

その間に、ネジ穴を開ける道具が「タップ」という名前であったり、ネジ穴の山と山の距離を「ピッチ」と呼んだり、ネジ穴の細いところを「下穴」、太いところを「外径」と呼んだりすることもわかったりして、どんどんムダ気味な知識をつけていきました(笑)。

結果的に「10-32 unf」は外径4.826mm/下穴4.0mm/ピッチ0.793mmということがわかったのですが、図面にその通りにネジの断面図を作ってみたもののこんな複雑な多角立体の体積を求める方法はさすがにわからず、「まぁ均等に順序よく太い細いの繰り返しだろうから平均値を直径にすりゃいいや」と直径4.413mmの円柱として考えることにしたんです。このあたり、さすがに新しい知識を求める限界になりましたね(笑)。

で、早速バレル全体を貫通させればいいんだと計算してみたんですが、貫通させても重量は約24.8g。刻みなどの加工もあるのでもう少し減るかもしれませんが、相変わらず重すぎです。「なにこのデブバレル」とがっくりしたものの、考えてみれば当たり前のことなんですよね。作るのが難しいor実現出来ないからこそ市販製品にないわけですから。


まーそれでも、それならば比重の軽い金属を使えばいいと思い立ち、様々調べてみることにしました。結果出てきたのは銅とタングステンの合金であるところの銅タングステン、同じく銀との合金である銀タングステン。

それぞれ比重が混合具合によって変動するものの13.6〜15.0とあるので、これならどうだと計算式に放り込んでみたのですが、銅タングステンのもっともタングステン比率の低いものならなんとかなるものの、銀タングステンは重量オーバー。

まさかダーツバレルの製作設計でまでダイエットを迫られるとは思いませんでしたが、大体比重14g/立方cmくらいの合金でならば、そこそこの感じでソフトダーツの重量レギュレーション内に収まり、なおかつ僕の希望する重量にあてはまるかなーというところまでは辿り着いたわけです。


しかし、これはまだまだ続くハマり道の中程あたりに過ぎなかったのです…。
(長くなったので続きます)


[ 2006年02月23日-14:11 ]  



オリジナルダーツバレルへの道 その2


―前回までのあらすじ―:第一話はコチラ
「あああああ、握手して下さい!」。全てはそこから始まった。一年前から始めたソフトダーツのハマリ道。その先で出会ったプレイヤー上総昌記さん。DVDを観てフォームを研究し、『One』でフォームを研究し、握手していただいた時の手指の感触からグリップを研究し、そしてひたすら続く鍛錬の日々。Aフライトまでは来たものの、あと一本が二本が足りずに上に上がれない日々。いわばそれは伸び悩みという誰もがぶつかる壁。研究の末に見つけた自分の欠点。それは忌まわしい交通事故の後遺症。ぶっとい指。市販のバレルでは短すぎる、細すぎる。辿り着いた結論、それはオリジナルバレルの製作だった。既存のバレルを研究、形状の確認。見よう見まねで書いた図面。算出された数字。素材選びと比重の計算。そして導き出された結論…「なにこのデブバレル」。このサイズでは高比重タングステン合金では作れない。そもそもタングステンの丸棒など、どこで売っているのかさえ知らない。

この物語は一人のダーツバカが自分の理想のバレルに辿り着くまでを綴った、暴走の記録である。



比重14g/立法程度の金属。これを探すところから材料選びが始まりました。あらゆる検索ワードをグーグル先生に叩き込んではクリックしまくる日々。その過程で得た知識、強度や合金などの仕組み。なるほどダーツがなぜタングステン合金で作られているのかがようやく納得できた頃、一つの結論が出ました。

タングステン高過ぎ。全体的に現在の市場が高騰しているということもあるのでしょうが、そもそも希少金属であるところのタングステンはそうでなくても高いのです。それが故に銅タングステン・銀タングステンなどのタングステン合金も尋常じゃない価格になっていたのです。

なにしろφ10の直径50mmというサイズの銀タングステン・銅タングステンの丸棒材が7000円くらいするというとんでもないことに。他のサイズがいかほどかは明確ではありませんが、ここから削り出したとしたら1本7000円×3本+工賃で、およそ3万円前後になってしまいます。買えるかそんなもん。

ダーツのバレルに使われている金属は大半がニッケルタングステン合金なのですが、銅や銀のタングステン合金でこれなのに、これより安いはずがなかろうという結論に着地したわけです。


それにしてもタングステン合金を使った市販のバレルは、安ければ3000円程度。中には以下のものもあるわけで、なんであんなに安いのか。かなり理解に苦しみながら調査を進めてみたのですが、2ちゃんねるのダーツ板の過去ログに中国の鋼材卸商に見積もりをとったという人の書き込みがありました。

なんでもW90%:Ni7%:Fe3%:8mmDia×L300mm 34本(10Kg) $1,156 運送費別だったとのこと。記号が多くてわからないと思いますので、解説しますと、タングステン90%:ニッケル7%:鉄3%のニッケルタングステン合金製の丸棒材(φ8.0/全長30cm)が34本で1156ドル(約13万5千円)だったというわけです。

まぁなにしろ2ちゃんねるの書き込みなので信憑性の程はわかりませんが、なるほど海外輸入という手があったかと納得してみることにしました(笑)。別に買うわけじゃないですしね(笑)。


で、早速そこから計算してみたんです。中国から10キロのものを送ってもらう際に送料が仮に100ドルかかったとしても、大体34本で15万円。市販バレルは大体5cm未満ですから、1本30cmの丸棒材から最低6本のバレルを作ることが出来ます。

そうなると、34×6本ということになりますから204本。で、ダーツは3本1セットですから68セット出来るわけです。ここではとりあえず加工賃は考えないものとして、15万円÷68セット=2205円って計算になるわけです。

これが、ダーツバレルの中でもっとも多く使われているタングステン80%の合金だともっと安くなると考えられますので、そうすると原価だけで2000円未満ってことも十分に考えられます。さらに一度の輸入量を増やせば原価は下がるわけですから、場合によっては生産原価で1セット1000円なんてことも出来るのかもしれません。

そうなると、ここに量産の加工賃とか人件費とかデザイン工賃だとか中間利益だとかをのっけたりして考えても、なるほど市販されているバレルの価格帯に乗っかってくるなと、納得できる様な気がしないでもありません。


しかしながらあくまでも僕が作るのは個人のレベルですし、量産なんかするあてもありません。中国からの輸入なんてまず不可能。さーてどうすべーかなーと首をひねっていたところ、さらに追い打ちをかける報告がありました。

実はダーツバレルの加工経験がある加工業者さんに、図面モドキを添付して送り、見積もりをお願いしていたのですが、その返答結果が1セット@30000円、2セット@50000円という高額なものだったのです。内訳はそもそもの素材の単価と、加工しにくいタングステン合金を切削するという作業に対する工賃ということでした。

ちなみにこちらではイギリスの職人さんがオリジナルバレルを作ってくれるということなのですが、タングステン90%合金を使って1セット@22000円。それならば、こちらのほうがまだ安いということになるわけです。

さらに見積もりを出してくれた業者さんは、普段は個人は相手にしないとのこと。やはり加工業というのは企業の量産品を作ってナンボですから、個人で3本なんていう割に合わない仕事はしてくれないところが多いんですよね。これもまた障害の一つになったわけです。


さてさて、そんなこんなを考えた結果、材料にタングステン素材を使うのは諦めることにしました。すると、ここまで来て、なんとなく具体的なビジョンが見えてきたんですよね。

・タングステン合金を使ってバレルを作るというのは僕のデザインでは困難。
・タングステン合金の丸棒素材はそもそも個人で入手するのが難しい。
・タングステン合金の切削加工は非常に難しい。加工出来る業者も少ない。

という前提から、まずタングステン合金を使うという発想を消すことにしました。これで随分と幅が拡がります。なぜなら他の金属を素材にするのであれば、切削は比較的容易であり、またタングステンに比べれば非常に安価になるからです。また、実際に作ることになった時の業者さん選びにも幅が出せることになります。

そして上の前提に加えて

・価格を押し下げる。頑張っても20000円以下。
・タングステン以外の素材でなるべく比重が高く、硬度もあって安価なもの。
・個人でも相手にしてくれる加工業者さんを探す。

という事を考えていかなければならないということになったわけです。さぁ大体進むべき方向性が決まってきました。こうなってくると、まずは最初に素材選びをしなければなりません。デザインの最大直径と全長から算出した体積に、次々と比重をかけて重量を出していったのですが、結果的に辿り着いたのは「真鍮」、つまりタングステンの次にメジャーなバレルの素材「ブラス」だったのです。


この頃になるとCADが少しずつ使える様になってきたので、改めて図面を引きはじめました。色々と機能も使える様になってきましたし、なにしろCADは数字が正確です。そこで、改めてモデルにしたいバレルのキザミなどを調べてみようと思ったのですが、その前にバレルの洗浄を行ってみました。

その上でスキャニングしてみたのですが、拡大してみるとなんか前とちょいっと違う様な気がする。スケールを当ててみて測ってみると、どうにも違う。図面に起こしてみると明らかに違うんです。で、それがどんな違いかといいますとですね。


これだけ違ってたんです(笑)。つまり刻みが謎の物体で埋められていたんですよ。まぁその謎の物体の正体は、いわずもがな手垢だったわけですが(笑)。
(長くなったので再度続きます)


[ 2006年02月24日-15:53 ]  



オリジナルダーツバレルへの道 その3


―前回までのあらすじ―:第一話はコチラ第二話はコチラ
「オリジナルのバレルを作ろう」。一年前からハマったダーツの熱が高じた僕は、その一言を胸にハマリ道を歩き始めた。設計、材質選び、比重計算、エトセトラエトセトラ。それら全てが素人の見よう見まね。CADを覚え、文字数計算と金勘定にしか使っていなかった理系頭をフル活用し、円周率・三角関数・体積計算などの記憶も呼び覚ます。しかし肝心である最初のモデルに手垢がついていたため、計算が狂っていたというハプニング。全てをゼロからやりなおし、ようやく完成したデザインと図面。見積もりとの格闘。果たしてオリジナルバレルは完成するのか。

この物語は一人のダーツバカが自分の理想のバレルに辿り着くまでを綴った、暴走の記録である。



タングステンは使えない。僕のオリジナルバレル製作において、この方針は完全に決まりました。そもそもが「入手が難しく、加工が難しく、価格が高い」。そんな三重苦を抱えた素材をわざわざ使う必要はありません。

しかし世間に市販されているダーツバレルの素材は、そのほとんどがタングステン合金製です。何故でしょうか。その理由はいくつかあるのですが、やはり一番はその比重の高さと硬さにあります。純タングステンの比重は19.3。これは金属の中でもかなり高い比重なんです。

同じクラスの比重では金がありますが、高価とはいえども金ほど高くはないタングステンは「小さく・細く」というコンセプトのバレルにはもっとも用いやすいという事が言えるわけですね。また加工しにくいというのは、言い換えれば硬いということでもありますから、「小さく・細く・硬く」という三つの理想を実現することができるわけです。さらにタングステンには変質しにくいという特性もあるわけです。

これは余談ですが、身の回りで重い金属といいますと、釣りなどの錘に使う鉛が連想をされる方も多いと思います。ところが鉛の比重は8.94グラム/立方cmとタングステンの半分以下。大して重くはないのです。まぁタングステンを生活の中で使う事も滅多にないわけですが(笑)。


さて、この「小さく、細く、硬く」というコンセプトですが、これは最近のバレルに求められるデザインコンセプトなんですよね。で、これは一部を除いて僕には不要なモノなんです。太い方がグリップしやすいですし、指が太い分長くないとグリップがしづらくなります。というわけで、僕にとっては「硬い」というコンセプト以外は必要がないのです。

結果として僕の考えるオリジナルバレルのデザインは「太く・長く・硬い」というモノになったわけですが、問題はそれに加えて「ある程度は重い」という条件が加わる事です。何度も書きましたが、ソフトダーツの重量レギュレーションはティップ(ボードにささるところ)、シャフト(羽をつける部分)、フライト(羽)を全て装着した状態で20g以内。

他にもシャフトリングやフライトリング、フライトプロテクターなどのオプションがありますが、いずれにせよ全てを装着して「投げられる状態で20g以内」というのが鉄則になるわけですね。で、大体これらが比較的重いモノを使っても1.5g程度なので、バレルの重量は18.5g程度にしなければならないわけです。


さて、ここで重量の問題にぶつかります。素人の独学ですが、バレルの様な円筒形のモノは丸棒という円柱の素材から切削されて作り出されるモノです。つまりバレルをデザインするときの最大直径と全長に見合った金属丸棒から削り出されるというわけですね。

僕のデザインは最大径直径7.2mmですので、まぁ直径8.0mmの丸棒素材を全長分にカットして使えばいいということになります。前回の刻みに手垢がハマっていて汚くなっていたというハプニングから、デザインを変更したりしたのですが、現在ではこんな感じになっています。


(クリックすると拡大図。素人の見よう見まねですのでお恥ずかしい限りですが…)


さて、それでは早速重量計算してみましょう。まずは丸棒素材ですから円柱の体積を求め、それに比重をかけて重量を算出します。図面の単位はmmなのですが、比重は1立方cmなので、1/10の−3乗=1/1000にしなければいけません。これを忘れると第一回で書いたような1本あたり40キロという地球上の物質ではありえないようなモノが誕生することになってしまいます(笑)。

直径7.2mmですので、半径は3.6mm従って底面積は

3.6×3.6×3.14=40.6944平方mm

ということになります。

これに高さをかければ円柱の高さになりますので

40.6944×51=2075.4144立方mm

が体積になります。まずはこれを立方cmあたりになおさなければいけないので、1000で割ると

2075.4144÷1000=2.0754144立方cm

という形になります。さーここに今度は比重をかければ重量がでてくるわけです。第一話でもやりましたが、純タングステン19.3g/立方cmをかけてみると

2.0754144×19.3=40.05549792g

という高比重なモノになってしまいます(笑)。従ってこれはバツ。冒頭に書いたとおりタングステンは純タンも合金も加工しにくくなおかつ高価であるというところから、使用しないということにしたので、なるべく高比重で、さらに加工しやすく、さりとて硬さはそこそこあり、その上安価であるという素材を探さなくてはいけません。

しかしながら、調べてみてもそんな素材は存在することもなく、そもそも12〜15g/立方cmという比重を持った素材で、そんな安価で加工しやすいというようなモノは存在ないという厳しい現実が目の前に据え置かれただけでした。


前回結果として選んだ素材は、ダーツバレルにタングステンの次に多く使われる素材であるところの「ブラス」。つまり真鍮となったわけです。この真鍮、比重は8.73g/立方cmですので、先ほどの数式にあてはめてみると

2.0754144×8.73=40.05549792g=18.118367712g

という数字が出てきました。市販されているブラスバレルはセットアップ重量16gか18gですので、まぁそんなものかなぁといった数字ではあります。


しかしながら、この重量は元となる丸棒状態での重量。ここにさらにグリップ部分の刻み加工で減る重量や、ネジ穴で減る重量なども考えなければいけません。自分で切削加工を調整できるわけではないので、完成してから「やべー軽すぎた!」というわけにはいかないのです。

もちろん製作過程で誤差は出てくるとしても、図面上で大体の重量を計算しておくことで、そもそものデザインを改めたりすることは可能ですから、これをなんとかしなければいけません。

というわけで、刻みの計算です(笑)。非常に見にくい図面モドキなのでアレですが、キザミの構成は45°/高さ0.5mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台が2セット(前後部分)。

高さ0.2mm/底面直径6.2mmの円柱+50°/高さ0.6mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台+高さ0.5mm/底面直径7.2mmの円柱のセットが17個と、高さ0.2mm/底面直径6.2mmの円柱+50°/高さ0.6mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台のセットが1個という形になっています。

つまり、求めるべき数字としては

(1)45°/高さ0.5mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台
(2)50°/高さ0.6mm/底面直径7.2mm/上面直径6.2mmの円錐台
(3)高さ0.2mm/底面直径6.2mmの円柱
(4)高さ0.5mm/底面直径6.2mmの円柱


の、それぞれの重さを計算して、全体の数量にまとめればいいわけです。


さーややっこしくなってきました。そもそも円錐台の体積なんてものの求め方がわかりません。しかたないので、底面直径の円錐の体積をもとめて、そこから上面直径の円錐の体積を引くという小学生レベルの計算をすることにしました。

んが、ココで問題が発生。円錐の高さがわからないんですよ。いや角度45°の方は二等辺直角三角形ですので、半径と同じになるのはわかってるんでいいんですが、問題は50°の方。下の図でいうXの高さがわからないわけです。



これは困りました。いわゆるアレですな。三角比だとか三角形の定理だとか、サイン・コサイン・タンジェントの世界のモノになるのだと思うのですが、ぶっちゃけまるで覚えていません。伊達に数学五段階評価で2をマークしてないですから


そんなわけで、今度はグーグル先生に三角形の定理だのなんだののキーワードをバシバシと叩き込んで説明を求めて、なんとか数字は出せたのですが、せっかくなので(?)ここで読者の皆様にも算数と数学の中間あたりに位置するこの問題に取り組んでいただきたいと思います(笑)。

なお、挑戦していただく図面は下のモノ。さらに紆余曲折を経て改訂されたバレルになっております。



※単位はmm※
(クリックすると拡大図。素人の見よう見まねですのでお恥ずかしい限りですが…)


この図面のバレルのキザミ加工後の重量を真鍮(比重8.73g/立方cm)で算出してみて下さい。早ければ10分かからないで出来ちゃうと思います。難しいところはこれまで書いてきたのとは違う前方のカット部分とかですかね。でも図面に出ている数字で算出は出来ると思います。

錆び付いた理系脳を呼び覚まして、是非トライしてみてください!回答はコチラからメールにて!
(そして次回へ続く…)


[ 2006年02月27日-11:01 ]  



オリジナルダーツバレルへの道 その4(多分最終話)


―前回までのあらすじ―:第一話はコチラ第二話はコチラ第三話はコチラ
「オリジナルのバレルを作りたい」。無茶な希望を胸にCADを覚え、数学の成績に2をマークした頭をひねってねじってこねくりまわして体積や重量を計算し、町工場に次々と問い合わせを送る日々。目の前に立ちはだかったのは予算という壁と技術に対する己の不理解さと数学能力の低さ。果たして全くの素人がオリジナルバレルを製作することは可能なのだろうか。

この物語は一人のダーツバカが自分の理想のバレルに辿り着くまでを綴った、暴走の記録である。



書くべき情報が足りていませんでした。

うはー問題出しといて問題の方が間違ってるってどうしようもないですな!本当に申し訳ありませんでした!しかしながら、どういうわけか問題をクリアした人多数。ちなみに正解は18.99g(一応小数点第3位以下切り捨て)だったんですけどね。

正解者は、三次元CADで清書して算出した「ぷにぷに」さん、CADで清書して算出した「六甲」さん、「Jimada」さん、「ぽー」さんでした。そうだよね…CAD使わなきゃ算出出来ないよね…情報不足してるもんね…。というわけで、本当に申し訳ありませんでした。うーむ。数学2だった男が余計な事するもんじゃないですな…。そしてぷにぷにさん、仰るとおり僕が書いたのは図面ではなく、あくまでも素人が見様見真似で書いた図面モドキの「絵」です(苦笑)。うむ、職人の世界は厳しいぜ。


というわけで、どんどんと話は進み、タングステンではなくブラス(真鍮)を使ってバレルを作ろうという事になったわけです。初期コンセプトである「前重心で太くて長くて重い」という男らしい実にガマカツチックなデザインをそのまま進めていこうと思ったのですが、またまた問題発生。

確かに削り出しした重量は18.99gと、割と適正範囲なのですが、これにチップとシャフトをつけるためのネジ穴を、ダーツ界でいうところの2BA、業界でいうところのユニファイ規格10−32で空けなければいけません。

これを空けると、その分削れるわけですから軽くなってしまいます。フライトやシャフトのネジの長さは5・6mm程度なのですが、穴を空ける処理をする際はそれよりもう少し深くしなければならないので、大体深さ7mm前後の穴が空くことになります。これを重量換算すると前後で約1.86g程度が少なくなってしまうわけです。

まぁそれでも17.13gですから、ここにフライトやらシャフトやらティップやらをつければおよそ18.63g。半端な数字ではありますが、ソフトダーツの重量レギュレーションは満たしている計算になります。一応形状的にも前重心ですし、重心を計算すると、ちょうどくびれたあたりの所に来るはずです。


ですが、せっかくここまで考えたのですから、なんとかしてセットアップ20gくらいまで持って行ってみたい。そしてそれが可能かどうかを考えてみたい。そんな風に考えた僕は、Pushuboyさんが採用している「バレルに芯材をいれる」という工法を採用することにしました。

読者さんの「白雪さん」や「nemoto」さんからも「外材を加工しやすく軽い形状にして、芯材を比重の高いモノにすれば重量確保は容易」という意見をいただいていましたので、これでやってみようと思い立ったわけです。

しかしながらタングステンは使えないという事を考えて、さまざまアイデアを考えていたところ、白雪さんが「ドリルなどの刃に使われている微粒超硬合金というのは比重が高いし、ドリルの刃として売っているのでさほど高くもない。これを使ってはどうか」とアイデアを出していただいたので、調べてみるとなるほど確かにさほど高くない。

しかしドリルの刃を芯材にそのまま使うとなると、刃の溝分削られているのが全て同じだとは思えないし、加工も大変そう。そこでドリルの刃に使われている材料の丸棒材を探してみることにしました。

結果として最適ではないかと選らんだのは三菱マテリアルのHTi10という合金素材。比重は14.9g/立方cmとなかなかに重く、タングステン合金以外のウエイト素材としてはなかなかに良さそうです。取り扱っている業者さんに問い合わせたところ、φ3.5の長さ330mmで1600円程度。しかも1カット20円で指定サイズに切断して送ってくれるというお話でした。


どうにかこれで芯材は確保しましたので、あとは真鍮の外材を加工してもらえればOKということになります。そこで今度はこれを入れる方法を考えなければいけません。そこで前後のネジ穴は同じ深さにして、前のネジ穴の底面から芯材を入れる穴を空けるという方法で考えを進めてみました。

芯材をはめ込むには、穴を「シマリバメ」と呼ばれるサイズで空けて、外材側を熱して穴を膨張させて芯材をはめ込むという「焼きバメ」という方法がよいのではないかと、白雪さんからアイデアを出して頂きましたが、芯材と外材を別々に用意して自分でそれを合体(?)させるということを考えると「焼きバメ」が僕みたいな素人に出来るかどうかは相当不安です。

それならば「スキマバメ」と呼ばれるサイズで空けて、芯材を接着剤で固定するというような工作的方法がよいのではないかなど、様々考えたりしたわけです。

このような穴の開け方の種類によって差が生じることもあるでしょうが、穴分の重量と穴と同じサイズの芯材の重量を計算した結果、比重差からφ3.5の30mm程度の穴と芯材でセットアップ20gに調整出来ることがわかりました。


さて、この段階まで来たところで、再度図面モドキを引っ張り出して早速真鍮の精密加工をしてもらえるところへ次々と問い合わせをしてみます。頼りはタウンページとグーグル先生。しかしながら、帰ってくる応えの大半は「ウチの設備じゃできない」「個人からの発注は受けていない」という、切ないものばかり。

実に見積もりや製作の可不可を尋ねた業者さんの数は15社。断られた業者さんは12社で、大きく2つわけると、ユニファイ規格10−32というネジ穴のタップが設備としてないので出来ないという業者さんと、個人相手の量産出来ないような小口のモノは受け付けられないという業者さん、といったところでした。

残り3社の内、見積もりを待っているのが2社、そして1社は「1本10000円前後でなら」という、なんとも目ん玉飛び出るストロングスタイルするような見積もりを出してきてくれまして、さすがにこちらからお断りさせていただきました(苦笑)。


といったところで、残り2社の見積もり待ちというのが現在進行形の状況なのですが、正直手詰まりになってしまいました。うーむ、無念。

実は、ここまで四回もかけて、ほぼリアルタイムでオリジナルバレル製作への道を追ってきたのには、そこそこの理由がありました。一つには市販されているバレルに対して疑問があったことです。

流通や中間利益・デザイン料などの事を含めても、市販されているバレルの価格には謎が多いです。タングステン製ならば高ければ2万円代、安ければ3000円程度。ブラス(真鍮)ならば高くても3000円程度、安ければ1000円しません。この振り幅は一体なんなのか、素材を違えることでなにが出てくるのか、そしてそこに使われている素材や技術で、なにがどう変わってその値段になるのか。そんな疑問を解消してみたかったのです。

結果としては素材としての鋼材の仕入れ自体で、そもそもの値段が変わる事、そして小さい金属に精密な加工を施そうとすればするほど時間がかかる上に、タングステンという超硬金属の場合は、さらに時間がかかるということ、それらの条件が折り重なって、価格差が生まれて来るという事がわかりました。まぁ当たり前といえば当たり前ですよね(笑)。

さらにもう一つの理由は、バレルを自作したいと考えた人がいたときに、少しでも役に立つ情報を残したかったということがあります。ダーツが好きでも金属や設計の事などはド素人の僕が、ゼロからはじめてどこまで踏み込めるのかといったところですね。

これは最終的には実際に加工する一歩手前までは辿り着いて手詰まり、という残念な結果になってしまったのですが、可能ならば「一般的に入手出来る素材の種類、単価」「加工はどんなところに頼めばいいのか」「合計して3本1セットあたりいくらくらいで出来るのか」というところまで情報を残したかったのですが、明らかに非現実的なまでの予算オーバーや、出来ないという断りの壁にぶつかってしまっては、これ以上進むことは出来ません。本当に残念です。さすがに旋盤機器を自分で購入して作るわけにもいきませんからねえ(苦笑)。


『Darts製作請負人の詩 -ダーツ製作の日々-』のpushuboyさんからも、実は早い時期から「僕で良ければ作りますよ」とメールをいただいていましたし、僕のダーツ仲間も実際pushuboyさんにバレル製作を依頼しています。しかしながら、まだ僕はpushuboyさんに製作をお願いしていません。

というのも、これまでブログに掲載されているバレルから伺える技術力にしてもノウハウにしても、pushuboyさんにお願いするのが一番の近道だということも勿論わかっているのですが、それでもなお、図面モドキを作ってイメージを伝えて後はpushuboyさんに丸投げというような形でオーダーしたくなかったのです。

一つには商売ではなく趣味でやっておられる方に対してお願いする立場の礼儀として、自分で出来るところまでは、とにかくチャレンジする必要があるだろうという考えからであり、一つには自分自身の好奇心を満たすためでした。


しかし、残念ながら現状では万策尽き果てたような状態です。それでもまだ、2社の見積もりが残っていますし、いくつか問い合わせをしてみようと思う業者さんもありますので、希望は捨てずに、もう少し粘ってみたいと思います。

いやーしかし勉強になりましたよ今回の件は。職人さんも様々で本当に面白いです。mixiの町工場コミュでも凄く親切に応えていただいたりしましたしね。ちなみに問い合わせた中でスマッシュヒットだったのは「個人からの少量発注は受け付けていただけますか?」と電話で問い合わせたところ、作業中でよく聞こえなかったのか、勢いよくぶっきらぼうに「はあ?コジン?ウチはまだ誰も死んでませんから!墓はいりませんよ!(ガチャ)」と返してくれた業者さんですね。



当方、バレルは欲しくても
墓は売っておらんとです。

(「故人」って思ったのかなんなのか。怒るよりも爆笑してしまった(笑))



[ 2006年02月28日-08:21 ]