暦の上ではとっくの昔に春なわけですが、それでも寒い日は続きます。油断は出来ません。何しろ関東地方の中央にある埼玉県の、さらに南部にある、ここさいたま市でも唐突に四月直前に雪が降ったりすることもあるのです。
インフルエンザが大流行している裏で、どうやら普通の風邪も地味に流行している様子。季節の変わり目は体調を崩しやすいわけですが、今がそのピークといったところなのでしょう。
ちょっとあたたかい陽射しだからといって油断して薄着で出かけると、日暮れ頃にはすっかり冬の寒さになっている、なんてこともあります。まだまだこの時期は冬・初春用の厚手のコートが手放せません。
さて。コートといえば特に女性の皆さんは秋用・秋冬用・冬用・冬初春用・春用なんて使い分けるくらいオシャレチックなアイテムのようです。
一枚のハーフコートを高校卒業時から8年も使い続け、雨の日も風の日もずーっとソレ。しかも寒くなったら中に防寒着を着込む、という微妙に本末転倒なことをしてまで、その一枚にこだわり続けた(?)オシャレには縁遠過ぎる過去のある僕も、さすがにこの歳になってからは、コートを使い分けるようになりました。
んもうバッチリ使い分けてますよー。晴れの日用と雨の日用(防水仕様)のコートを!いやオシャレとか興味ないっつーか、僕ぐらいまで来てしまったデブは所詮なにやったところで変わらないっつーか、着るモノを選べないっつーか無理!もう無理ね!無理なのよ!!「着るモノを選ぶ」んじゃなくて、「着られるモノを買う」んですもの!!
と、まぁそんな感じで軽くキレてみたりしたわけですが、本当にオシャレには縁遠い縁遠い生活をしておりましてですね、僕の着る物は基本的にマンチェスさんとかサカゼンさんというデブ服専門店で購入したモノなんですが、正直、こう、あまりセンスとかそういうものとかは意識した作りになっていなかったりするんです。
デブ服の系統としては2種類ありまして、一つは「威嚇系」、そしてもう一つは「ファンシー系」です。まぁこれはデブの2大キャラクター分類によるものなんでしょうが、ゴツゴツしてデカい柔道型が主に威嚇系愛用し、まるまるして愛嬌のある内山君タイプがファンシー系を着るわけです。
僕の場合はどちらにも転びきっていない中途半端なところにいるのですが、かーいらしーキャラクターのアップリケ(アップリケ?!)とかがつけられていたり、プリントされていたりするシャツやらトレーナーやらは着る気になれませんし、かといって背中に龍!とか虎!とか風神!とか雷神!とかの刺繍を背負っちゃっているのもどうかと思うわけです。
で、結局のところ迷彩柄だとか無地のだとか、そういう無難なところで落ち着くわけなんですが、どういうわけか二年前の秋冬モノは、どこのデブ服屋でも怒濤の勢いで迷彩柄のモノを扱っていまして、当然の如くオーバーサプライになり、その値引きされた安さに引きつけられて、ついつい何種類か買ってしまったんです。そしてその結果、そのシーズンの間、僕は謎の迷彩野郎と化してしまったわけです。
コーディネイトなんて言葉がありますが、僕はそんなものを意識せず、洗濯済みの着られる服の中から適当に引っ張り出して着込んで出かけています。その洗濯と気温気候との組み合わせの都合上、非道い時はバンダナ・シャツ・コートからパンツに至るまで総迷彩という凄まじい組み合わせになってしまうこともあったりしました。

(500万ヒット記念企画「DB」より…死にたい)
そんなシーズンの終わり頃。そう、忘れもしない2年前の今日(確か土曜日)。いつものように迷彩野郎と化していた僕に、遊び仲間が質問をぶつけた時に事件は起こりました――。
「なんでいつも迷彩着てんの?」
「まぁ色々。ファッションじゃないことだけは確か」
「え、そうなの。じゃあ余計になんでだよ?」
「うるせーな。隠れる為に決まってんだろ」
「モスグリーンとカーキですが」
「おうよ、密林迷彩だ」
「ここ都会ですが」
「コンクリートジャングルっていうだろ」
「そんな色ないんですが」
「植え込みとかあるだろうが!このバカチンが!」
「じゃあ隠れる為には、まず植え込みを探す、と」
「おうよ、その瞬間からがサバイバルだぜ」
「あ、あそこに植え込みが!」
「よし隠れてやる!」
「なにから!?なにに探されてるの?!」
「エイドリアーン!(叫びながら植え込みにダッシュ)」
「ロッキーは密林に行ってないよ?!ねえ!?ランボーじゃないの?!ねえ聞こえてる?!」
「どうだー見えなくなってるかー?!」
「いや、丸見え!かなり不自然!」
「アメリカ人ならこれで見えなくなるんだよ!」
「いやアメリカ人関係ないだろ!」
「世知辛ぇ!世知辛ぇよ!」
「いいから植え込みから出てこいよ。もうわかったから!」
「虜囚の辱めはうけん!このまま植え込みに根付いて、木と同化してやる!」
「いやいや、どれだけ気の長い話だよ!」
「いつか大きな木に、大木になってやるんや!大木になって見返してやるんやー!」
「ロマンチックなんだかなんなんだかわかんねーよ!ほら、あれだ!将官としての待遇を保証するから!」
「ほんとか!?」
「ほんとだよ!もういいから!」
「あめちゃんくれる?」
「あげる!あげるから!!」
「じゃあでるー」
――とまぁ、このやりとりは限りなく実話なのですが、事件という程のモノではありません。アルコールが入っていたことは確かですが、ただのバカなやりとりであり行動です。
しかし問題なのは上のやりとりの最中、本当に新宿のとある植え込みの中に飛び込んだバカは、着ていたコートを植え込みの尖った枝かなにかに引っかけて、見事に破損させてしまったことです。
そこまでやっては「ただのバカ」ではなく「底抜けのバカ」です。ですから、このやりとりの後、必死になってその破けたところを隠し通しました。会話の終盤、テンションが微妙に下がっているのは動揺していたからです。
それは購入からおよそ3ヶ月目のこと。まだまだ寒い日が続いていましたし、コートがないとバイク乗りは死ねるので、やむを得ず新しいコートを購入しました。そしてワンシーズンに雨天用ふくめ3着のコートを時期によって変えた(ように見える)僕に、友人達は「家元もようやくオシャレとかに気を遣うようになったか」と感慨深げに云ったものでした。まぁ真相は今日明かした通りなんですけどね!
植え込みにも飛び込みません。
(こうして少しずつ大人になっていくんだね…)



